第40話 存在する防御方法(カウンター)
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「どうして皆様、そんなに絶望しておられるのですか?」
私が小首を傾げて尋ねると、カイル殿下が血走った目で睨みつけてきた。
「当たり前だろ! こんなものが他国に渡って実用化でもされてみろ、我が国は防ぐ手立てもなく一方的に蹂躙されるんだぞ!?」
「えっ? 防ぐ手立てなら、ちゃんとありますよ?」
「……は?」
「作用があれば、必ず反作用があります。私が考えた理論には、すべて物理学的な『防御方法』が存在しますわ」
私が微笑むと、王族のお二人と側近たちはピタリと動きを止めた。
「ぼ、防御方法があるのか……?」
王太子殿下が、一筋の希望を見出したように縋るような声を出す。
「もちろんですわ。順番にご説明しますね。まず、一つ目の『空間跳躍(転移)』の対策ですが」
私は指を一本立て、講義の時のようにスラスラと解説を始めた。
「あれはマナの波形と空間の位相を同調させているだけですから、防衛ラインの周辺に微弱な『不規則な位相の魔力波』を常時展開しておけばいいんです。同調が乱れると空間の折りたたみは維持できず、術は発動前に強制的に霧散されます。強固な防御結界を張るよりも、ずっと省エネで実用的ですわ」
「……なるほど。力技で空間を固定するのではなく、相手の波長にノイズを混ぜて術式そのものを不発に終わらせるのか」
王太子殿下は顎に手を当て、真剣な表情で頷いた。
「その通りです! そして二つ目の『質量の広域展開(隕石落とし)』ですが」
私は指を二本立てて、さらに解説を続けた。
「あれは落下の運動ベクトルに対して、大気中のマナを高密度に圧縮して『極端な空気抵抗』を発生させればいいんです。そうすれば、地表に届く前に運動エネルギーを完全にゼロにできます。衝撃波も相殺されるので被害は一切出ませんわ」
「……なるほど。質量そのものを破壊するのではなく、速度を殺すのか」
「はい。次に『遠隔音声波形観測器(究極の盗聴器)』ですが、これも簡単です。王宮の周囲に、極めて微弱なホワイトノイズの膜を張る魔力干渉機を設置しておけばいいんです。音は完全にノイズに埋もれますが、微弱なので中にいる人間には何も聞こえず、誰にも迷惑はかかりません」
「……」
「そして『永久凍土の生成(氷河期)』ですが、大気中から熱エネルギーを効率よく回収する『ヒートポンプ』の要領で、奪われた熱を即座に補填すればいいだけです。周囲の環境を壊すことなく、安全に熱収支のバランスを保てますわ!」
「…………」
私の解説を聞き終えた王太子とカイル殿下は、顔を見合わせた。 私の地獄の「物理学特別講義」で基礎を嫌というほど叩き込まれていた彼らは、その安全かつ確実なアプローチが理にかなっていることを、即座に理解したのだ。
「なるほど……それならば、被害を出さずに確実に対処できるな」
王太子殿下が、ようやく安堵の息を吐き出した。
すると、横で聞いていたセドリック様が一歩前に出た。
「では、本当にそれが機能するか検証してみましょう。カイル殿下、私に向かって……その分厚い辞典が上から落ちてくるように投げてみてください」




