第33話 幸せを嚙みしめるマクシミリアン
【お知らせ】
これまでROM専で登録したユーザー名を使用していましたが、この度ペンネームを設けることにしました。名前は「深谷 汎」です。引き続きよろしくお願いいたします!
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その頃、マクシミリアンは、学園の中庭でリリィと優雅なティータイムを過ごしていた。
アリスとの婚約を解消し、愛らしく常識的なリリィという婚約者を手に入れた彼の心は、かつてないほどの平穏と幸せに包まれていた。 目の前で可憐に微笑むリリィを見つめながら、マクシミリアンは温かい紅茶を一口飲み、しみじみと思う。
(……普通の婚約者は、あのような『お手伝い』をねだるものではないのだな)
思い返せば、元婚約者アリス・ベレニケとの日々は、常に過酷だった。
***
まだ幼かった頃の、定期的な交流会。
あの日のマクシミリアンもまた、直前に付き合わされた『お手伝い(という名の爆発を伴う実験)』のせいで、髪の毛の先をわずかに焦がし、顔を引きつらせながら彼女の部屋を訪れていた。
室内では、アリスが机に向かい、羊皮紙に何やら不気味な図形や数式を書きなぐっていた。 それを見た瞬間、マクシミリアンの背筋にゾクッと悪寒が走る。また、何か手伝いを要求されるのではないか。
彼は恐怖で震えそうになる足を踏ん張り、必死に声を絞り出した。
「アリス、君はまた、魔法を『数値化』するなどという無意味なことをしているのか」
(心の声:お願いだから! そんな得体の知れない研究をするのはやめてくれ!!)
しかし、アリスはペンを止めることなく、淡々と、恐ろしいほどの無表情でこう返してきたのだ。
『マクシミリアン様、事象には必ず理由があります。魔法もまた、この世界の物理法則の一部なのです』
(物理法則……それが何かは知らんが、 君のその『法則』のせいで、さっき俺は(爆風で)空を飛びかけたんだぞ!!)
これ以上、彼女の研究を進ませてはならない。新しい研究が完成すれば、真っ先にその『協力者』の的にされるのは自分なのだ。 マクシミリアンは身の危険を感じ、彼女の思考を止めるために精一杯の強い言葉(威圧)を放った。
「……やめろ。そんな意味不明な言葉。何を言っているのか理解できんし、興味もない」
(心の声:だから俺で実験するな! お前が何を言っているか分からないから余計に怖いんだ!)
そして彼は、彼女を少しでも危険な実験から遠ざけようと、もっともらしい口実を口にした。
「君は黙って、公爵夫人に相応しいマナーだけを磨いていればいいんだ」
(心の声:お願いだから、お茶会などの安全な室内で、大人しく座っていてくれ……!!)
――彼なりの、必死な抵抗だった。 しかし、彼の悲痛な願いはアリスに微塵も届かず、彼女は全く研究をやめる素振りを見せなかったのだ。
そんな、過去に思いを馳せながら…
再び紅茶を口に運び、安堵の吐息を漏らしたその時……
生け垣の向こう側から、令嬢たちのヒソヒソ話が耳に飛び込んできた。
「ねえ、内密の話だけど…… 王太子殿下とカイル殿下が、あのアリス・ベレニケ伯爵令嬢から直々に『特別講義』を受けていらっしゃるんですって。セドリック様や側近たちも一緒らしいわよ」
「ええっ? 殿下たちが、あのベレニケ伯爵令嬢から?」
ガシャンッ!!
マクシミリアンの手から、ティーカップが滑り落ち、粉々に砕け散った……




