第25話 特定の波長が導く先
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真犯人の波長を完全に記憶した私たちは、すぐさま保管室を後にし、次なる現場――
毒の瓶が隠されていたという、カイル殿下の私室へと向かった。
部屋の入り口に立つと、中は凄まじい状態だった。近衛兵たちが家捜しをした影響で、部屋中が彼らの魔力残滓で溢れかえっている。だが、波長観測をマスターした私たちには、まったく関係のないことだった。
「セドリック様。先ほど記憶した真犯人の波長『だけ』を透過するように、視界のフィルターを調整してください」
「……指定した周波数のみを抽出するのだな。分かった」
セドリック様が瞬きを一つした直後、彼の息を呑む音が聞こえた。
ノイズだらけだった視界から、近衛兵やカイル殿下の波長がスッと消え去り――代わりに、ベッドの裏側(瓶が隠されていた場所)から入り口に向かって、点々と続く『一つの足跡(波長)』だけが、暗闇に浮かび上がるように鮮明に発光し始めたのだ。
「……信じられない。何十という足跡の中から、真犯人の痕跡だけが、まるで光る絵の具をこぼしたように浮かび上がって見える……!」
「特定波長のみの可視化。科学捜査の基本ですわ。さあ、エントロピーが増大して痕跡が拡散してしまう前に、その波長の『発生源』を辿りましょう」
私たちは、床に残されたその淀んだ波長を追って、王宮の廊下を歩き始めた。 右へ、左へ。時には人目を避けるように階段の裏を通り、王宮の奥深くへと痕跡は続いている。
(ふふっ、まるで不可視の放射性同位体を追跡しているみたいで、実地調査としては最高にドキドキしますわ!)
私が純粋なフィールドワークを楽しんでいる横で、セドリック様の横顔は、一歩進むごとに氷のように冷たく、そして鋭い怒りに満ちていった。 無理もない。この痕跡の先にいるのは、主君であるカイル殿下を陥れ、王太子殿下を暗殺しようとした大罪人なのだ。
やがて、その発光する痕跡は、王宮の西塔にあるひとつの扉の前でピタリと止まり、その隙間へと吸い込まれていた。 扉の隙間からは、私たちが追跡してきたものと全く同じ、濃厚な真犯人の波長が漏れ出している。
「……着きましたね」
私がフラットな声で告げると、セドリック様は剣の柄に手をかけ、地を這うような低い声で応えた。
「ああ。この部屋の中にいる者が……カイル殿下を陥れた、真犯人だ」




