第21話 絶望を打ち払う光
彼は縋るような思いで、今起きた凶行――王太子が毒に倒れ、カイルがその犯人に仕立て上げられて連行されたこと――を手短に説明した。
「……カイル殿下の部屋から毒の瓶が物証として見つかった。これでは、殿下の無実を証明するのは難しい……!」
悔しそうに拳を握りしめるセドリック。
だが、その話を聞きながらアリスの瞳は、セドリックの手に強く握りしめられている「魔力残滓のレポート」に向けられていた。
アリスは白衣の裾を翻し、セドリックの手にあるレポートを指差した。
「セドリック様は先ほど、私の理論を理解し、魔力残滓を『視認』できたとおっしゃいましたね?」
「あ、ああ。確かに……世界が違って見えた。あらゆる者のマナの波長が……」
「ならば、私たちがその瓶を直接『観測』し、そこに付着している魔力残滓(波長)を特定してしまえば、犯人を見つけることができますわ」
セドリックの瞳に、絶望を打ち払う強い光が宿った。
そうだ。既存の魔法体系を凌駕するこの「魔法」ならば……。完璧に仕組まれた物証を覆し、犯人を暴き出し、主君を救い出すことができる!
「……さて、方針が決まったのなら急ぎましょうか」
(王宮の証拠保管室で……ノイズの少ない密室環境で実地の観測データが取れるなんて、滅多にない機会ですわ!)
無実の証明や国家の危機など微塵も気にしていない、純度百パーセントの研究者としての笑みを浮かべるアリス。
完璧な側近は、そんなアリスの胸中を知る事なく、その背中に、かつてないほどの深い安堵を覚えながら、共に王宮へと向けて駆け出した。
* * *
王宮の廊下は、これまでにない物々しい空気に包まれていた。
カイル殿下の無実を証明すべく、証拠保管室へと急行した私たちだったが、その入り口には厳重な結界が張られ、近衛騎士たちが分厚い壁となって立ち塞がっていた。
「セドリック殿、通すわけにはいかん。カイル殿下の側近である貴殿は、現在、重要参考人の関係者として王宮内の自由行動を制限されている」
「証拠品の隠滅や偽装など、疑われる行動は一切しない! 私はただ、あの毒瓶を離れた場所から『観測』したいだけだ!」
「却下だ。第一、その令嬢はなんだ。部外者を立ち入らせるなど言語道断!」
騎士の隊長は冷酷に言い放ち、取り付く島もない。
セドリック様はギリッと奥歯を噛み締めた。その時、廊下の奥から足早に歩いてきた文官が、隊長に耳打ちをした。
「……何? 王太子殿下の意識が戻られたと…」
隊長の声に、セドリックの顔が弾かれたように上がった。




