第120話 古代魔道具の分解方針
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王都へ帰還してから数日後。
王立研究所の専用区画に、代替魔道具の開発に関わる者たちが集められた。
部屋の中央に置かれているのは、ランバート領の地底湖から持ち帰った古代魔道具である。
魔力を遮断する布に覆われ、その周囲には、異常が起きた際に魔力を封じるための魔道具が複数設置されていた。
集まっているのは、解析班と代替魔道具開発班の研究員たち。
アリスとセドリック。
カイル、レオナルド、マクシミリアンも、その中に加わっている。
全員が揃ったことを確認すると、王太子は机の上に広げられた二つの図面へ目を向けた。
一つは、ベレニケ領で今も動き続けている古代魔道具。
もう一つは、ランバート領から持ち帰った古代魔道具である。
「陛下より、古代魔道具の分解調査については既に許可が下りている」
王太子の言葉に、研究員たちの表情が引き締まる。
「今日集まってもらったのは、改めて開発の進め方を共有するためだ」
王太子は、ランバート領の古代魔道具を指し示した。
「これより、解析班はこの装置を外側から順番に分解する。部品を一つ取り外すたびに、その位置、向き、形状、材質、残留する魔力を全て記録せよ」
続いて、代替魔道具の試作機へ視線を移す。
「開発班は、分解によって判明した構造を、これまでに製作した試作機と比較する。ただし、いきなり火山抑制装置へ組み込むのではない。まずは、この古代魔道具がどのように力を集め、変換し、魔石へ伝えていたのかを明らかにする」
王太子は、古代魔道具へ視線を戻した。
「そして、可能であれば、この装置を動く状態へ復元する。実物を起動できれば、部品単位の推測ではなく、全体が連動した時の働きを確認できるからだ」
研究員たちが、真剣な表情で頷く。
「復元に成功した後、その仕組みを代替魔道具へ取り入れる。まずはランバート領の装置と同じ水式の試作機を完成させ、その後に火山の熱、圧力、振動へ対応できる構造へ改良する。古代魔道具の仕組みを理解せず、最初から火山用へ置き換えることはしない」
解析班が古代魔道具の構造を明らかにし、開発班がその機能を再現する。
二つの班は別々に動くのではない。
一つの部品が取り外されるたびに情報を共有し、その役割を確かめながら、分解と復元、そして試作を同時に進めることになっていた。
「不明な反応が一つでも確認された場合は、直ちに作業を中断する。古代魔道具を調べるために、研究所を吹き飛ばすようなことがあってはならない」
「承知いたしました」
研究員たちが一斉に答えた。
王太子は頷いた後、マクシミリアンへ顔を向ける。
「それから、マクシミリアン」
「はい」
「学園から、最後の試験結果が届いた。特別講義、提出課題、試験の全てを修了し、卒業に必要な単位を取得したことが確認された」
その言葉を聞いた瞬間、マクシミリアンの肩から僅かに力が抜けた。
「やっと終わった……」
開発班の仕事と並行しながら、隙間なく組まれた特別日程をこなしてきたのである。
ランバート領へ出発する直前まで課題を提出し、帰還後には残されていた試験を受けていた。
不満を口にすることはあっても、講義を欠席せず、課題の期限も守り続けた結果だった。
「おめでとうございます、マクシミリアン様」
アリスが笑顔で祝福する。
「これで、心置きなく開発へ専念できますわね!」
「なぜだろうな。お前にそう言われると、労われている気がまったくしない」
「ですが、単位と開発を並行する必要はなくなったのですわ」
「それはそうだが、もう少し休ませようとは思わないのか?」
「古代魔道具が、目の前で分解されようとしていますのよ?」
アリスは、信じられないものを見るような目でマクシミリアンを見た。
「そのような状況で休めるはずがありませんわ!」
「やはり、聞いた相手が悪かった」
マクシミリアンが深く息を吐く。
その隣で、セドリックが僅かに笑みを浮かべていた。




