第117話 石柱を再び動かすには
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領主館へ戻った一行は、すぐにランバート子爵へ調査結果を報告した。
会議室の大きな机には、神殿跡地、地底湖、森の奥で発見した湖の位置を書き込んだ地図が広げられている。
ランバート子爵は、地図に新たに描き加えられた湖を、信じられない様子で見つめていた。
「これほど大きな水源が、領内に存在していたのですか……」
「はい。二つの山に挟まれた窪地にあり、周囲を深い森に囲まれています」
カイルが答える。
「神殿跡地の草原からは山の陰に隠れ、見ることができません」
「私も、あの一帯に湖があるとは聞いたことがありません」
ランバート子爵は眉を寄せた。
「旧神殿の周辺は、代々立ち入りを禁じてきました。領民には、神殿跡地へ近づくなという言い伝えだけが残っています。領主家でも危険な場所として扱い、詳しい調査は行ってきませんでした」
地図に描かれた湖へ視線を落としたランバート子爵に、エレノアが答えた。
「村が水に沈んだという記録がありました。湖の正確な場所も、村が沈んだ原因も残されていませんでした。村が消えたという事実から、呪わるから近づくなと言い伝えられ、いつしか立ち入り禁止とだけ伝承されたのでしょう」
「呪いではありませんでしたわ」
アリスが、古代魔道具の図面を机へ置いた。
「地底湖に設置されていた装置が停止し、水圧のかかる方向が変わった。その結果、地下水が岩壁を抜け、村のあった窪地へ流れ込んだと考えられます。ただし、地下水脈と地質については、さらに詳しい調査が必要です。村が沈んだ経緯を完全に証明するには、地底湖と地上の湖をつなぐ水路を確認しなければなりません」
続いて、石柱から水が出た実験について説明する。
水の魔石をはめ込み、柱を回転させる。
それだけで水を得ることができた。
ランバート領に点在している石柱も、同じ装置である可能性が高い。
「では、水の魔石さえ用意できれば……」
ランバート子爵が顔を上げた。
「領内の石柱を、再び使えるのですか?」
「石柱の内部が壊れていなければ、使えると思います」
水属性の研究員が答える。
「ただし、現在流通している水の魔石を領内全域へ配るとなると、相当な費用が必要です」
現在では、水の魔石を作ることはできる。
しかし、水属性の魔法使いが多量の魔力を注がなければならず、一つを作るだけでも時間がかかる。
農地で毎日大量の水を使えば、魔石は短期間で力を失う。
数本の石柱を動かすことはできても、領内の水不足を継続的に解決する方法としては、費用が大きすぎた。
「古代魔道具が動けば、水圧の力から魔石を作ることができますわ。ですが、残念ながら故障しているようで、再起動することはできません」
アリスは言った。
「では、せっかく石柱の使い方が分かっても、今すぐ利用するのは難しいのですね」
リリィが残念そうに呟く。
石柱の正体は分かった。
しかし、それだけでは、ランバート領の水不足を救うことはできなかった。




