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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第7章 ランバート領 と 新たな謎

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第115話 水圧の向かう先

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

神殿跡地へ戻った一行は、地下で記録した方角を地上の地図へ重ねた。


水が向かっていたのは、草原とは異なる方向だった。


神殿跡地の西側。


山脈から張り出した二つの山の間に、深い森が広がっている。


その奥には、別の岩壁があるはずだった。


「草原からでは、山の斜面に隠れて見えませんね」


レオナルドが周囲の地形を確認する。


「森の中へ入れば、かなり奥まで進むことになるのではありませんか?」


「地底湖からの距離を考えれば、それほど遠くはありませんわ」


アリスは記録した方角を指した。


「水圧によって新しい水路ができたのであれば、この延長上に水が出た場所があるはずです」


日が沈むまでには、まだ時間がある。


カイルは地底湖へ持ち込んだ装備の一部を地上の調査員へ預け、必要な者だけで森へ向かうことを決めた。


一行は神殿跡地の脇を抜け、二つの山に挟まれた森へ入った。


草原側の森よりも木々が密集し、人が通った跡はほとんどない。


案内役の猟師でさえ、この区域へ入った経験はなかった。


「幼い頃から、神殿跡地へは近づかないように言われていました。ですから、神殿跡地の西側にも、当然近づくことはありませんでした」


森の中を進むにつれ、地面の傾斜が変わり始めた。


初めは平坦だった地面が、奥へ向かって緩やかに低くなっている。


大きな窪地へ下っているような地形だった。


さらに進むと、木々の隙間から光が差し込んできた。


「森が途切れています」


先頭の騎士が枝をかき分ける。


その先へ出た者たちは、一斉に足を止めた。


森の奥に、湖が広がっていた。


地底湖ほど大きくはない。


それでも、対岸まで相当な距離がある。


湖の向こう側には、山脈の岩壁がそびえていた。


岩壁の下部には黒く濡れた場所があり、そこから絶えず水が流れ出している。


「こんな場所に、湖が……」


リリィが呟いた。


ランバート領の地図に、この湖は記されていない。


領民の間でも、水源があるという話は聞いたことがなかった。


「地底湖で確認した方向と一致しています」


調査員が方位と距離を記録する。


「岩壁の向こう側に、先ほどの地底湖があると考えられます」


アリスは湖へ近づき、水の流れを確認した。


岩壁から流れ出した水は、窪地へ溜まり続けている。


しかし、湖の水位が急激に上昇している様子はない。


窪地へ溜まった水は湖になり、また別の岩壁の隙間に流れ込んでいるようだった。


「地底湖の水圧が岩壁の亀裂を広げ、こちら側へ抜けたのでしょう」


「それで、この窪地へ水が溜まったのですか?」


リリィが湖面を見つめる。


「おそらくは」


湖岸の周辺には、大きな木が幾つも育っている。


この湖が最近できたものではないことは明らかだった。


調査員たちは湖岸を歩き、周囲に人工物が残っていないか調べ始めた。


やがて、湖より少し高い場所で、規則的に並ぶ石が見つかった。


建物の土台と思われる石。


途中で途切れた道。


湖の中へ向かって続いている低い石壁。


「ここに、何か建っていたようです」


エレノアが地面へ残された石を確認する。


「しかも一軒ではありません。複数の建物が並んでいました」


近くには、数本の果樹も残っていた。


長い年月の間に枝は大きく広がっているが、木々は不自然なほど等間隔で並んでいる。


かつて人の手で植えられた果樹園の一部だと考えられた。


「湖に沈んだ村……」


リリィが、湖へ沈んでいく石壁を見つめた。


記録に残されていた村は、この場所にあったのかもしれない。


果樹の近くには、一本の石柱が立っていた。


人の背丈ほどの高さがあり、中央部分に円形の窪みがある。


表面は苔と土に覆われているが、ランバート領内の集落や田畑で見かける古い石柱と同じ形だった。


「石のお守りと一緒です」


リリィが言った。


石柱の周囲には、灰色の石が幾つも転がっていた。


地底湖で採取した魔石と、大きさも形もよく似ている。


しかし、どの石からも魔力は感じられなかった。


石柱の窪みにも、一つの石がはめ込まれている。


アリスが取り外して調べたが、完全に魔力を失っていた。


「同じ石ですわ」


「では、この柱も地底湖の古代魔道具と関係があるのですか?」


リリィが尋ねる。


「その可能性は高いと思います」


しかし、石柱が何をするためのものなのかは分からない。


古代文字も残されておらず、動かせる部分も見当たらなかった。


少なくとも、魔力を失った石のままでは、その正体を確かめることはできなかった。


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