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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第7章 ランバート領 と 新たな謎

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第105話 理由を失った立入禁止地

※毎日 朝5時に予約投稿で更新中

ランバート領に残された神殿跡地を調べるため、正式な調査チームが組まれた。


同行するのは、アリス、セドリック、カイル、レオナルド、マクシミリアンを中心とする開発班のメンバー。


さらに、現地を案内するリリィと、神殿跡地に関する文献の発見に携わった文献調査チームの文官、一行を警護する騎士たちも加わることになった。


出発の日。


王立研究所の前には、調査道具を積むための馬車が並んでいた。


古代文字や紋を記録するための紙と筆。


魔力の反応を調べる計測器。


地形や遺構の位置、高低差を測るための測量器具。


それらが、次々と馬車へ積み込まれていく。


全ての荷物を積み終えた頃、一人の女性がやってきた。


年齢は、アリスより二歳年上。


落ち着いた栗色の髪を後ろでまとめ、王宮文官の制服を隙なく着こなしている。


彼女は一行の前まで来ると、丁寧に一礼した。


「文献調査チーム所属の王宮文官、エレノアと申します。このたび、ランバート領の調査へ同行するよう命じられました」


その顔を見たカイルが、僅かに首を傾げた。


どこかで見覚えがある。


しばらく記憶をたどった後、カイルは「ああ」と声を上げた。


「思い出した。君は、私たちが学園へ入学した年に最終学年だったね」


エレノアが顔を上げる。


「はい。カイル殿下たちとは、一年間だけ在学期間が重なっております」


「試験のたびに、成績表の一番上に名前が載っていた。教師たちが何度も君を見習えと言っていたから、よく覚えているよ」


「そのようなお言葉を頂くほどではございません」


エレノアは恐縮したように頭を下げた。


だが、その声にも表情にも、ほとんど乱れはない。


「そうか。卒業後は王宮の文官になっていたんだね」


カイルは納得したように頷いた。


「今回の調査、よろしく頼むよ。文献の知識が必要になる場面も多いだろうからね」


「承知いたしました。今回発見された文献の内容だけでなく、古い記録に使われている文字や表現についても、可能な限り協力できればと思います」


アリスも、エレノアへ頭を下げた。


「よろしくお願いしますわ。私たち、文献の解釈については専門ではありませんもの」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。この調査への同行を、とても楽しみにしておりました」


「楽しみ?」


マクシミリアンが聞き返した。


「はい。文献を読むだけでは、遺跡の規模や現在の状態までは分かりませんから」


淡々とした返事だったが、その瞳には強い好奇心が浮かんでいた。


◇ ◇ ◇


調査チームは予定どおり王都を出発し、ランバート領へ向かった。


ランバート領に到着すると、一行は領主館へ迎え入れられた。


まず行われたのは、神殿跡地と、その周辺に残る言い伝えについての聞き取り調査だった。


リリィの父であるランバート子爵をはじめ、領地の記録を管理する文官、古くから仕える使用人、近隣の村の代表者が順番に呼ばれた。


しかし、得られた答えは、どれも似たようなものだった。


「神殿跡地へ近づいてはならないと、昔から言い伝えられている」


「今では崩れた石壁や柱が残っており、危険だからだろう」


それ以上の事情を知る者はいなかった。


なぜ、最初に神殿跡地へ近づくことが禁じられたのか。


いつ頃から、その決まりが伝えられるようになったのか。


その問いに答えられる者は、一人もいなかった。


湖の底へ沈んだ村について知る者もいない。


神殿跡地が呪われているという話も、現在の領民には伝わっていなかった。


「私も父から、近づいてはいけないと言われただけです」


年老いた村人が、申し訳なさそうに答えた。


「その父も、祖父から同じことを言われたそうで。なぜ昔から禁じられているのかと尋ねても、そう決まっているとしか……」


エレノアは、その言葉を一つずつ記録していった。


「禁止だけが残り、その始まりとなった理由が失われているのですね」


聞き取りが終わると、領主館に保存されていた記録も調べられた。


土地の所有を記した台帳。


村ごとの収穫量をまとめた報告書。


水不足や洪水が起きた年の記録。


古い道や建物の位置を描いた地図。


神殿跡地について記されたものもあったが、いずれも『崩れた旧神殿』や『立入禁止地』と記されているだけだった。


そこにも、立入禁止となった本来の理由を示す記述は残されていなかった。


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