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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第6章 古代魔道具 と 代替品開発

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第101話 完成まで、あと一つがどうしても足りない

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その後も、試行錯誤は続いた。


変換機構へ伝える力の大きさを変える。


振動の周期を変える。


複数の振動を重ねる順番を入れ替え、回転軸の速さと蓄積機構が力を放出する間隔を調整する。


変換機構に使う金属も、王国で手に入るものは一通り試された。


一度の試験が終わるたびに装置を止め、全ての部品を確認する。


計測結果を見直し、問題が見つかれば設計図へ新たな線を引く。


修正した部品を作り、試作機へ組み込み、再び動かす。


失敗。


見直し。


再設計。


そして、再試験。


その繰り返しだった。


最初は計測器にも表れなかった魔力反応が、少しずつ明確になっていく。


振動を重ねる周期を変えた試験では、変換機構の表面に淡い光が灯った。


別の金属を組み合わせた試験では、発生した魔力が出力回路の直前まで流れた。


さらに、蓄積機構から放出する力を細かく分けたことで、魔力反応が数秒間だけ持続するようになった。


確実に、完成へ近づいている。


だが、あと少しのところで反応は途切れた。


生み出された魔力は、出力回路へ届く直前で散ってしまう。


無理に流れを維持しようとすれば、変換機構へ熱が蓄積し、内部の金属板が変形する。


逆に安全性を優先して入力を弱めれば、魔力へ変わるために必要な反応そのものが起こらない。


「変換は始まっていますわ」


アリスは、試験記録に並んだ数値を見つめていた。


「物理的な力が魔力へ変わっていることは、もう間違いありません。ですが、変換された魔力を取り出す前に、流れが崩れてしまいます」


「発生した魔力の量が足りないのでしょうか」


セドリックが尋ねる。


「瞬間的な出力量だけなら、必要な値へ達していますわ」


アリスは、魔力反応が最も強く表れた箇所を指さした。


「ですが、魔石として定着させるためには、その状態を一定時間維持しなければなりません。今の変換機構では、必要な値へ達した直後に反応が打ち消されています」


「では、反応が消える前に取り出せばよいのではないか?」


カイルが言った。


「それも試しましたわ」


アリスは、机の端に置かれた黒く変色した部品へ目を向けた。


「出力のタイミングを早めたところ、変換される前の振動と熱まで出力側へ伝わり、魔力を留める回路が焼き切れました」


「遅ければ魔力が消え、早ければ出力側が壊れるということか」


「はい。その間に、魔力だけを安定して取り出せる瞬間があるはずなのですが……」


その瞬間を見つけるため、さらに細かな調整が行われた。


放出周期を僅かに早める。


振動の重なりを一つ減らす。


回転軸の速度を抑える。


変換機構と出力回路の間に、魔力を一時的に留める回路を追加する。


試験を重ねるたびに、成功へ近づいていることだけは分かった。


魔力反応の持続時間は伸びている。


出力回路へ届く量も増えている。


一度だけ、変換された魔力が火属性へ導かれたこともあった。


しかし、魔石として定着させるには出力も持続時間も足りず、反応はすぐに消えてしまった。


「あと少しですわ」


アリスは何度もそう言った。


あと一つ、何かが足りない。


変換機構の形なのか。


振動の周期なのか。


使われている素材なのか。


それとも、まだ気づいていない別の機構が必要なのか。


答えが分からないまま、大規模な改修が行われるたびに、試作機の番号だけが増えていった。


第六試作機。


第七試作機。


第八試作機。


そして、第九試作機。


第九試作機では、魔力反応が十二秒間持続した。


これまでで最も長い記録だった。


最初は弱かった反応が、時間とともに少しずつ強くなっていく。


研究員たちは、期待を込めて計測器を見守った。


そして十二秒目。


瞬間的な出力量が、火の魔石を作るために必要な値へ達した。


だが、その状態を維持するよりも先に、変換機構から光が消えた。


静かになった装置の前で、誰もすぐには口を開かなかった。


「……また、同じところです」


セドリックが計測器から目を離した。


「必要な出力へ達した直後に、反応が崩れています」


アリスは設計図へ視線を落とした。


すでに余白は、修正の線と数値で埋め尽くされている。


「何かを見落としていますわ」


「これだけ見直しても、まだですか?」


マクシミリアンが、机に積まれた失敗記録を見ながら尋ねた。


「ええ。ベレニケ領の古代魔道具は、同じ変換を長い年月繰り返しています。できない仕組みではありませんもの」


「古代文明にしか作れない部品が使われている可能性は?」


「その可能性も残っていますわ」


アリスは、これまでに試した素材の一覧へ目を向けた。


「ですが、素材を変えても、反応はよく似た崩れ方をしています。一方で、機構の形や周期を変えれば、反応が途切れる時間も変わっています。特殊な素材だけが原因というより、まだ再現できていない仕組みがあると考える方が自然です」


「つまり、構造そのものに見落としがあると?」


「はい」


アリスは、反応が途切れた瞬間の記録へ指を置いた。


「完成まで、あと一つですわ」


その一つが分からない。


出口は見えているのに、最後の扉だけが開かない。


開発班は再び試作機を分解し、変換機構の見直しを始めた。


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