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【完結】無自覚転生令嬢の物理魔法  作者: 深谷 汎
第6章 古代魔道具 と 代替品開発

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第99話 今回は安全だったが、用途は分からなかった

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◇ ◇ ◇


その後も、宝物庫に保管されていた古代魔道具の解析は続けられた。


二つ目の古代魔道具は、壁や床の傾きを測るための装置だった。


内部に吊り下げられた重りが常に一定の方向を示し、その傾きによって、建物や地面の僅かな変化を調べる仕組みである。


「洞窟内の床や壁の変化を継続して調べるのに使えそうですわ」


アリスの提案により、その装置についても再現が検討されることになった。


ベレニケ領の古代魔道具へ直接触れなくても、周囲の岩盤がどのように変化しているのかを測定できる。


火山活動を監視するうえで役立つ可能性があった。


三つ目は、容器の内部を一定の温度に保つための装置。


四つ目は、決められた時間ごとに音を鳴らす装置。


五つ目は、一定量の液体を繰り返し送り出す装置だった。


どれも用途を突き止めれば、現代の暮らしや産業に応用できるものだった。


そのたびにアリスが新たな利用方法を思いつき、セドリックが実現に必要な条件を計算し、カイルとレオナルドが王国での利用価値を検討する。


そしてマクシミリアンは、作動させる前に可動部や排出口を確認し、安全に使用できる構造かどうかを調べた。


一度目の事故で定められた安全規則は、今度こそ守られている。


そのため、二つ目以降の古代魔道具では、誰かが温風や水を浴びるような事故は起こらなかった。


「最初から、こうしていればよかったのではありませんか?」


マクシミリアンが、カイルへ問いかける。


「お前が温風を浴びたことで、全員の安全意識が高まった」


「私の犠牲を教育へ利用しないでいただけますか、殿下」


用途の判明した古代魔道具は、どれも古代文明の技術力を示すものだった。


しかし、地下のエネルギーを魔力へ変える仕組みに直接つながるものは、まだ見つからなかった。


そして、六つ目。


調査室の中央には、両腕で抱えられるほどの金属製の円筒が置かれていた。


外側には複数の溝が刻まれ、片方の端から太い回転軸が突き出している。


反対側には、別の装置へ接続するためと思われる窪みが設けられていた。


内部を覗くと、大小の歯車と、強く巻かれた金属板が幾重にも重なっている。


だが、これまでの古代魔道具とは異なり、表面にも内部にも魔力回路が見当たらなかった。


「本当に魔道具なのでしょうか」


セドリックが尋ねる。


「宝物庫の記録には、古代魔道具として保管されたと書かれている」


カイルが、添えられていた記録を確認する。


「ただし、発見された場所も、使用方法も不明だ。古代文明の遺跡から持ち帰られたということしか分かっていない」


アリスは、円筒から突き出した回転軸へ目を向けた。


「魔力回路がないのであれば、魔力を入れても動きませんわね」


その言葉を聞いたマクシミリアンは、心から安堵した。


「今回は安全そうだな」


「ですが、この軸を回せば動くかもしれませんわ」


安堵は、一瞬で消えた。


「待て」


「まだ回していませんわ」


「回そうとしているだろう!」


「構造を確認するには、少し動かしてみる必要があります」


「内部には、力を蓄えるためのばねのようなものが入っている。何が起きるか分からないうちは、動かすべきではない」


マクシミリアンが指摘すると、アリスは円筒の内部をもう一度覗き込んだ。


「確かに、回転軸から伝わった力を、内部へ蓄える構造にも見えますわね」


「蓄えた力が、どこから放出されるのかも分かりません」


セドリックも慎重に円筒を調べる。


「接続先と思われる窪みがあります。この円筒だけで使用する道具ではなく、何か大きな装置の一部だった可能性がありますね」


「それならば、接続されていた本体がなければ、用途を確定することは難しいかもしれませんわ」


外側から寸法を測り、回転軸や歯車の配置を記録しても、円筒が何のために作られたものなのかは分からなかった。


魔力を流して調べることもできない。


不用意に軸を回せば、内部へ蓄えられた力が一気に解放される危険もある。


結局、その日の解析では、用途不明という結論しか出せなかった。


「次の古代魔道具を調べましょう」


アリスは残念そうに言い、円筒の図面へ印を付けた。


――用途不明。


――魔力回路なし。


――単独で使用する装置ではなく、何らかの機構の一部である可能性あり。


その円筒が、代替魔道具を完成させるために欠かせない部品であることを、この時の彼らはまだ誰も知らなかった。

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