表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/28

第7話 花火大会へ

 俺達は、事前に養父から教えられた穴場スポットへ移動する。

 花火が良く見え、音が響く良い場所だ。


「ここら辺のはずだけど……」


「うわぁ、花火が見えるよ!」


 木々が生い茂っている場所ではあるが、中心には全く木が無く、花火が見られるようになっていた。

 公園のようなベンチもあり、休憩するのもちょうど良い場所だった。


「花火、綺麗だな……。

 青とか、赤、黄色とかが花みたいに見えるよ。

 偶に、形の変なのもあるけど……」


「気に入ったか?

 お前が喜んでくれたら、叔父さんと叔母さんも喜びと思うけど。

 それに、俺も嬉しいよ……」


「ありがとう。

 私、宋史君に会って幸せだよ!

 実は、今までの笑顔は、訓練した笑顔だったんだ」


「知ってる」


「あはは、バレてたか。

 でも、宋史君に会ってから、徐々に本当に笑えるようになってるんだ!

 今は、本当に全力で笑ってるよ!」


「うん、とても可愛いよ!

 ずっと、そうしていろよ」


「宋史君は、逆に笑わないね。

 まあ、男の子だから仕方ないけど……」


「ふう、小説で面白いアイデアが浮かんだ時は笑うんだけどな。

 それ以外は、大して詰まらないし、愛想笑いも苦痛になってくるね。


 たぶん、鬱病に近い症状だからだと思う。

 何で笑うのかもわからないし、下手に笑うなと注意されるんだ。

 だから、大して笑わない」


「そっか、笑っても良いと思うけどね……。

 笑いは、筋肉を動かす事だし、感情面でも豊かにできる。

 下手に空気を読んで笑うのを堪えると、逆にストレスになってしまうんだ。


 犯罪者とかは、自分を装うのが上手いからね、犯罪を犯す時に笑う人は多いけど、日常で笑う人は少ないはずだよ。

 みんなは、誤解しているけど……」


「そうか。

 まあ、笑顔の練習でもしてみようかな?

 笑えば、人生豊かになるのは知っているからね」


「うん、笑っている顔が好きだよ。

 あ、私なんかに惚れられても困るか……」


「恋も、隠してたら後悔するんじゃないのか?」


 俺は、彼女を引き寄せてキスをした。

 まあ、唇は嫌がっているようだったから、頬っぺたにだが……。

 チュッと、軽い音がした。

 彼女は、頬っぺたを押さえて言う。


「頬っぺた、当たった」


「唇の方が良かったか?

 一応、お前の気持ちを配慮したんだけど……」


「私もお返ししたい!」


「唇でも良いよ!」


 俺は、自分の口を押さえて笑った。

 それを見た彼女は興奮する。


「ああ、宋史君が笑ってる!

 イタズラっぽい笑顔だけど……」


「どうする、本当の口付け、しちゃうか?」


「うー、気持ちの整理ができていないので、頬っぺたでお願いします!」


 俺は、彼女を見つめて衝動に駆られ始めていた。


(無理矢理口付けしたいと思っちゃうけど……。

 さすがに、それはダメか……。

 こいつから来てくれるのを待つしかないな……)


 俺はそう考えて、彼女からしてくるのを待つしかない。

 彼女には、俺の考えがバレていた。


「私の事を配慮してくださり、ありがとうございます。

 なるべく早めに口付けできるように頑張ります」


 彼女はそう言って、俺の頬っぺたに自分の口を当てた。

 勢いが強く、気持ちの良い感触はしない。

 彼女の必死な気持ちは伝わって来た。


 俺には、ビンタに近い衝撃を受け、ちょっとイタズラしてみたくなった。

 彼女の鼻を軽く舌で舐める。

 顔が近付いてきた瞬間に、彼女はビクっと体を揺らしていた。


(こいつの反応を見るだけでも面白いな……)


 俺は、彼女が慣れるまで数回続けて見た。

 最後には、彼女が涙目になっていた。

 彼女の息がかかり、良い匂いがする。


「意地悪しないでよ……」


 彼女は、涙目になり、髪を整えながらそう言った。

 今の言葉だと、どうにでも捉えられる。


(口付けしろって事なのか?

 それとも、止めろって事なのか?)


「もちろん後者です!」


 彼女がハッキリとそう言ったので、とりあえず接触は控えるようにした。


(まあ、まだまだチャンスはある。

 今日は、手を繋ぐくらいで良いか)


 俺はそう思い、手を握る。

 2人で花火を見ながら、手を繋いでいた。

 彼女も手を離そうとはしないが、こう言う。


「あの、私が宋史君の事を好きだって、いつ決まったの?

 普通に、友達として好きなだけなんだけど……」


 まあ、恋愛プラグはいくつも立ったが、恋人同士ではないらしい。

 俺は、手を引っ込めそうになった。

 彼女が俺の手を握り、離そうとしない。


「嘘だよ、いろいろしてくれてありがとう♡」


 相手が好きになったら突き放し、相手が離れようとしたらくっ付いて来る、女性特有の小悪魔度を彼女も持っていた。

 心の声も聞けるし、彼女が本気になったらヤバイだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ