第8話 ダリアの友人達
俺達は花火大会が終わり、家に帰る。
さすがのダリアも疲れたのか、真剣に帰り道を歩いているが、眠たそうだ。
本来の可愛い顔が半目になり、ゾンビのように歩いていた。
「もうちょっとで家だから頑張れよ……」
「ふわあ、ごめんなさい……」
彼女を支えながら歩いていると、クラスの女子達と遭遇する。
俺と彼女が一緒である事を見られていた。
「あれ、ダリアじゃない?
クラスの男子は、アイツに惚れてたみたいだけど、あの事件で一転したようだね。
今は、私がクラスで一番人気なんだよ!」
「それ、あんたが勝手に言ってる事やから……。
クラスで一番可愛いのは、性格も含めて私ですよ!」
クラスで良く分からないが、それなりに可愛い女子2人組が現れた。
性格はともかく、見た目だけは可愛い。
1人は、メイド服の格好をしており、もう1人は、清楚系の美女だった。
(コイツらは、コスプレイヤー真美と清楚系委員長だ。
ダリアのハーフ系美女と合わせた3人美少女トリオだったはず……。
今は、コイツらが人気を独占しているのか?)
俺は、眠りこけているダリアを連れて、帰宅を急ぐ。
俺は、疲れている彼女を見せて、会釈をする。
彼女達の前を通り過ぎると、彼女達が警告をして来た。
「ふう、大変な事になりましたな。
ダリア、このまま学校に居れんかも知れへんで!
まあ、覚悟しときや!」
清楚系委員長がそう警告する。
アイテムのメガネがキラリと光り、闇夜に照らし出されていた。
京都弁の姉御肌だが、面倒見は良いらしい。
その彼女の言葉に、俺はかなり気になっていた。
「どういう事ですか?
彼女は、完全に被害者ですよ!」
「そうかも知れへんね。
でも、世間は甘くない。
ダリアの事をイヤらしい淫乱娘と見る奴らがおる。
あんたらが注意してないと、女に飢えた男子とか、モテない女子とかに因縁付けられるかもね。
そうなったら、セクハラやレイプなんて当たり前かもよ。
妊娠しても、親父さんのせいだろうとかいう評価だし、相手が分からない状況に追い込まれたら、訴えるのも困難だ。
普段、ダリアの事を気に入らない奴は、結構いるからね。
これを機に、一気に精神崩壊させて、学校退学とかもあり得るかもね……。
レイプされて、その画像をネットに載せれば、とりあえず学校にはいられない。
教師陣がやんわりと退学させて来るだろう」
「そんな……」
メイド服を着た妹風の女も語る。
一応、同級生だが、なんか幼く見える。
ツインテールと茶髪がそうさせているらしい。
「いやあ、私達もダリアの友達として助けてあげたいけど、すでに何人かが連絡を取り合って、団結し始めちゃってるからね。
赤信号、みんなで渡れば怖くないの精神が蔓延して、モテない男達が彼女をレイプしようと待ち構えているよ。
私達と一緒にいるうちは良いけど、離れたら何をされるか分からんぜよ!
私も、メイド服がバレて、キスとか強請られたし……。
レイプされたなんて知ったら、バカな男共の格好の的ですな」
「超怖いんですけど……」
「まあ、イジメとレイプは集団犯罪だからね。
誰か1人が止めれば収まる可能性はあるけど、誰も止めなければ、行くとこまで行っちゃうのが集団犯罪だからね。
それに、止められるのはリーダー格の数人だけ……。
集まった人間が欲望に忠実になちゃえば、リーダーが命令しても止まらないよ。
集団犯罪は、罪の意識が分散されて、更に酷い結果になる事もあるし……」
(くっ、こいつらの言っている事はもっともだった。
集団犯罪ほど恐ろしい物はない。
犯人が大勢いるから、犯人の特定は難しいという安心感がある。
これによって、かなり酷い事でも行える精神状態になってしまうのだ。
更に、集団に馴染まなければいけないという事で、個人ではできない酷い事柄も、周りに合わせてやろうとする圧力がかかる。
最初は、酷い言葉や嫌がらせみたいな事が、徐々にエスカレートして、明らかな暴力や犯罪に発展して行く。
特に、性的な暴行や、普段の妬みなどは、欲望から一気に発展するだろう。
教師達も当てにならない可能性もある。
教師が止めに入らないのも、自分がしているわけじゃないからという謎の安心感がある為だ。
自分がイジメをするタイプの教師なら、見て見ぬ振りなど当たり前だ。
自分がしているわけじゃない上に、見ていないと言えば逃れられる状況が、彼らを冷酷にしているのだ。
ここでハッキリ宣告しておこう。
イジメは、集団暴行行為であり、自殺させた場合は殺人に当たるのだ。
確かに、法律では裁かれないかもしれないが、いずれは自身に返って来るのだ。
良い事をすれば、いずれは自分の所に帰ってくるように、悪い事をした場合には、悪い結果も経験しなければならない。
だから、みんな、困っている子には優しく接してあげよう!)
彼女達も祭りの帰りなのか、家に帰ろうとしていた。
本当は、彼女を誘うつもりだったようだが、俺に遠慮していたようだ。
「まあ、言いたい事は言えた。
では、また明日な!」
「学校は真面目に参加してね!
じゃないと、助けたくても助けれない状況になっちゃうから……」
彼女達は、カッコ良く去って行った。
1人は、姉御と呼びたくなるくらいの凛々しさを示した挨拶、もう1人は、子供のような無邪気な笑顔を振りまいていた。
「ああ、お休み。
また学校でな!」
俺は、ダリアが1人でないことに安堵しつつも、彼女を守ってあげようと決意していた。
彼女達の警告を聞き、それなりの対策を立てる。
肝心のダリアは、すでに爆睡モードに陥っていた。
俺が彼女をおんぶして、家に帰る事にする。
安心し切った吐息を吐きながら、俺の背中で眠っていた。
オッパイがかなりある事もハッキリとわかる。
これ以上、コイツを誰かに汚させてはいけないと感じていた。
俺とダリアが登校すると、すでに嫌がらせの準備が整っていた。
彼女のロッカーに、『肉便器』という貼り紙がしてあった。
どうやらクラスの女子の仕業らしい。
犯人が分からないからといって、ここまで生々しい貼り紙をしなくても良いと感じる。
本人のダリアには、かなりのダメージを負わせたようだった。
「気にするな。
今日一日の辛抱だ!」
「うん……」
俺が彼女を励ましていると、昨日の友人も登校してきた。
ロッカーの貼り紙を見て、舌打ちをする。
清楚系の委員長らしいが、友人がバカにさせるとヤンキー化していた。
「こういうのは、最初が肝心だ。
周りに、あんたを笑い者にしている陰険な女子共がいる。
まずは、コイツらをビビらせておいた方が良いね」
彼女はそう言って、ロッカーを蹴り倒した。
校舎が崩れるかと思うような音が響き、数人の生徒の笑いが止まった。
幸い、怪我人が出なかったが、先生や生徒達が集まって来た。
「はいはい、ごめんなさいね。
ほら、宋史君、とりあえずロッカーを戻して!」
昨日のメイドさんも、今日は制服を着て登校していた。
委員長が倒したロッカーを直すように、俺を呼ぶ。
委員長は、キレた振りをしていたが、キレ者だった。
「まあ、奴らがビビるくらい驚かせば、一応の抑止にはなる。
しばらくは平和だよ!」
彼女は、男気溢れる様でそう言うが、肝心のダリアがビビって失神していた。
さすがに、ここまでキレた振りは初めてだったらしい。
俺は、倒れたダリアを抱えて、保健室に向かう。
「ちゃんと、ダリアが起きるまで見てやってくれ。
保険医だろうが、彼女の事情を知っている奴は、危険かもしれない。
なるべく1人にするんじゃないぞ!」
「2人きりもヤバくないか?
私が付いていくよ!」
俺とダリア、コスプレガールと一緒に、保健室へ向かう。
途中で、男子の怪しい視線を感じるが、気にしないようにした。
結構良い体してるぜとか、可愛いじゃんとか言う言葉を耳にする。
「狙われているのは本当のようだな。
高校生くらいなら、学力によって反応が違うが、中学生では学力別していないから、ヤバイ奴らにも目を付けられるぜ……」
俺とコスプレガールは、ダリアを連れて保健室に行き、鍵を閉めた。
男子に押入られたら、勝てる自信はない。
しかし、失神した美少女に、もう1人の美少女、俺というヤバイ状況である。
誤解されたら、俺も危険な状況に陥っていた。
「うお、この状況はヤバイんじゃないのか?」
「失神した女の子に、コスプレ好きの女の子と、男子の君が1人。
確かに、ヤバイ状況ですね。
白衣がありました。
着て良いですか?」
「なぜ、更にヤバイ状況に……。
もう着ているし……」
コスプレガールは、制服を脱いで、下着に白衣というヤバイ状況を作り出していた。
どうやら彼女は、気に入った服を発見すると着てしまうらしい。
俺が気付いた時には、すでに看護師になっていた。
「どうですか?
ある意味、頼りになると思いますけど……」
「確かに、なんか出来そうな雰囲気だけど……」
「看護師の羽田美香です。
まずは、ダリアちゃんの看病をいたします!」
羽田さんは、なぜか顔を赤くしていた。
舌舐めずりをして、ダリアの服を脱がせようとする。
とりあえず彼女を下着だけにしていた。
「なぜ脱がす。
羽田さんは、彼女をいったいどうする気だ?」
「私は、君の前では正直でいようと思う。
実は、私はダリアを愛していた。
彼女を抱きたいと思った時もある。
もちろん、彼女自身にはバレていないとは思うが……。
それ以上に、彼女が幸福になる事を望んでいた。
まさか、父親に抱かれているとは思わなかったが……。
彼女が不幸にあっているのに、力になれない自分を責めていた。
宋史アキラ、私は君を誇りに思う。
人には言い辛い事を、彼女に対して言い、世間が彼女の境遇を知った。
結果は、彼女に対して思わしくないものだったかもしれないが、いずれは知られてしまう事実だった。
彼女自身が語った以上、覚悟もできているだろう。
私は、君と彼女の関係を守りたい。
その為にも、まずは確認が必要だと思っていたんだ。
妊娠しているかどうかを確認する。
遅かれ早かれ、確認する事実なのだ。
実の父親の子を身籠るのは苦痛だろうが、殺すわけにもいかない。
妊娠の有無を確認して、然るべき処置を取らなければ!」
「そうか、妊娠している可能性もゼロじゃないんだな。
その可能性には、気が付かなかった」
「どんな結果になったとしても、彼女を嫌いにならないで欲しい。
私も、2人の関係を支持したいと思う!」
「お前、かなり良い奴だな!」
「それは、委員長も同じだ。
仮に、妊娠していたとしても、彼女が学校に通えるように努力しているはずだ。
まあ、一番良いのは、何事もなかった事なんだが……」
羽田は、ダリアをカーテンで覆い、妊娠検査薬を使う。
どんな結果になっても、彼女を守らないといけないと感じていた。
ここで突き放せば、彼女の人生は滅茶苦茶になってしまうだろう。
しばらくすると、羽田がカーテンを開けて出てきた。
その顔に、笑顔の表情はない。
「どうだった?」
「ダメだな……。
やはり、子供がいる可能性があるようだ……。
絶対とは言い切れないが、可能性は高いだろう」
「そうか……。
近くの産婦人科に行かなければいけないな……」
「私も付いて行って確認する。
男子では行き辛い所だろう。
3人で行こう……」
彼女は、苦虫を潰したような険しい顔をしていた。
俺は、こうなる可能性も考慮していた。
育児施設には知り合いもいるし、俺も育てようという気になっている。
「そんな悲しい顔をしないでくれ!
子供の誕生は、どんな時にも喜ばしいものだ。
俺が、彼女の子供として精一杯育児するよ。
まあ、多少は他人の力を借りるかもしれないけど……」
「育児とは、それほど簡単な物じゃない。
軽く考えない方が良いぞ……」
「そうだな。
でも、俺も捨て子だった。
彼女も、彼女の子供も見捨てる事はできないさ!」
「そうか、なら、少しは納得できる。
まだ生まれると決まったわけじゃない。
年齢が年齢だし、子供が成長するのは難しいかもしれない。
最悪、流産の可能性も……」
「無事に生まれる事を期待するさ!
お前も手伝ってくれよ!
子供というのは、多くの人に支えられて大きくなるんだ。
お前も、その1人になって欲しい」
「ああ、できる限りの協力はしよう。
まずは、病院に行って確認する。
今日の夕方に、彼女と一緒に行こう!」
「分かった!」
俺と羽田は、ダリアを連れて病院へ行く事にした。
しばらくすると、彼女が目を覚まして、授業を受けられる状態になった。
しかし、更なる問題へと発展して行った。




