14 密会
ギルバートは、静かな客間で一人、窓の外をぼんやりと眺めていた。
女王の急死に伴い、モンテルノ公爵家の次男である彼は王宮を去り、帝都の一等地にある別邸へと居を移していた。
本邸ほどの広さこそないものの、絹張りの壁紙、金細工の燭台、年代物の調度品が並ぶ室内には、名門公爵家の底知れない財力を感じさせる。
大きな窓の向こうには、暗闇の中に帝都の街並みが広がっていた。
ギルバートは、肘掛け椅子に深く身を預けながら、手にした紅茶の液面をぼんやりと眺めていた。
その横顔は、どこまでも穏やかだった。
しばらくして、足音もなくソフィが部屋へ入ってきた。
「ギルバート。アルドが帝国に捕まったわ」
ソフィの声には焦りが滲んでいた。
「あの居住区の件、本格的に帝国の調査が入るみたい」
ギルバートはゆっくりと振り返った。
その顔には、役人の前で見せた時と変わらない、冷静な笑みが張り付いている。
「ああ。知っているよ」
彼は静かに言った。
「だが、あれはあくまでアルド氏が単独で暴走したことだ。私たちはむしろ巻き込まれた被害者なのだから、何の問題もないさ」
「本当に、大丈夫なの?」
「ああ。問題ない」
ギルバートは窓の外へ視線を戻した。
「しばらくは表立った動きを控え、身を引こう。あの居住区を手に入れる方法など、いくらでもある」
「……そうね」
ソフィは短く相槌を打った。
それでも、胸の奥に渦巻く不安は消えなかった。
そんな彼女とは対照的に、ギルバートはどこまでも落ち着いていた。
ギルバートはそんな彼女を見ず、ただ穏やかに続けた。
「焦る必要はない。時間はいくらでもある」
ソフィは、彼の引き締まった背中をじっと見つめていた。




