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最下層民エルフィと女王の記憶  作者: 風谷 華


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14/15

14 密会

ギルバートは、静かな客間で一人、窓の外をぼんやりと眺めていた。


女王の急死に伴い、モンテルノ公爵家の次男である彼は王宮を去り、帝都の一等地にある別邸へと居を移していた。

本邸ほどの広さこそないものの、絹張りの壁紙、金細工の燭台、年代物の調度品が並ぶ室内には、名門公爵家の底知れない財力を感じさせる。


大きな窓の向こうには、暗闇の中に帝都の街並みが広がっていた。

ギルバートは、肘掛け椅子に深く身を預けながら、手にした紅茶の液面をぼんやりと眺めていた。


その横顔は、どこまでも穏やかだった。




しばらくして、足音もなくソフィが部屋へ入ってきた。


「ギルバート。アルドが帝国に捕まったわ」

ソフィの声には焦りが滲んでいた。

「あの居住区の件、本格的に帝国の調査が入るみたい」


ギルバートはゆっくりと振り返った。

その顔には、役人の前で見せた時と変わらない、冷静な笑みが張り付いている。


「ああ。知っているよ」

彼は静かに言った。

「だが、あれはあくまでアルド氏が単独で暴走したことだ。私たちはむしろ巻き込まれた被害者なのだから、何の問題もないさ」


「本当に、大丈夫なの?」


「ああ。問題ない」

ギルバートは窓の外へ視線を戻した。


「しばらくは表立った動きを控え、身を引こう。あの居住区を手に入れる方法など、いくらでもある」


「……そうね」

ソフィは短く相槌を打った。


それでも、胸の奥に渦巻く不安は消えなかった。


そんな彼女とは対照的に、ギルバートはどこまでも落ち着いていた。

ギルバートはそんな彼女を見ず、ただ穏やかに続けた。

「焦る必要はない。時間はいくらでもある」



ソフィは、彼の引き締まった背中をじっと見つめていた。



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