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最下層民エルフィと女王の記憶  作者: 風谷 華


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11/15

11絶交

アルドが連行され、野次馬たちのざわめきが少しずつ遠ざかっていく。

その中で、魂が抜けたように立ち尽くしていたマーガレットが、ふらりと歩き出そうとした。


「――マーガ」

エルフィは静かにその名を呼んだ。


マーガレットの肩がびくりと震える。

ゆっくり振り返ったその顔は、先ほどまでの勝ち誇った笑みが嘘のように消え失せていた。

白い小花柄のワンピースも、今はどこか色褪せて見える。


エルフィは少し首を傾げた。

「あのさ、アルドが……もしこれから商会も地位も全部失ってしまったとしても、あなたは隣で支えてあげるんだよね?」


マーガレットが息を呑む。


エルフィは悪意なく続けた。

「だって、アルドのことが大好きなんでしょう?」

エルフィは、ほんの少しだけ微笑んだ。

「愛って、すごいね」


その瞬間、沈黙が落ちた。

マーガレットはじっとエルフィを見つめていた。


やがて――。


「……ふふっ」

乾いた笑い声が漏れた。

「そんなわけないでしょ」

その声は、驚くほど冷たかった。


エルフィが目を見開く。


マーガレットは自嘲するように笑った。


「私がアルド自身を好きだったとでも思ってたの?」

その瞳に、もう可愛らしい親友の面影はなかった。

「好きだったのは、ヴァルト商会の跡取りだったからよ」


エルフィは言葉を失った。


「商会を継ぐ予定で、お金も地位もあって、将来も安泰」

マーガレットは肩をすくめた。

「でも全部失うなら話は別」

マーガレットは役人たちに連行されていった方向へ視線を向けた。

「そんな男に付き合うほど、私はお人好しじゃないわ」


「マーガ……?」


「それに」

マーガレットの目が細くなる。

「私、あんたのことずっと嫌いだったわ」


エルフィの呼吸が止まった。


「私がどれだけ頑張っても手に入らないものを、あんたは当たり前みたいに持ってたから」

マーガレットは、悔しそうに唇を噛む。

「みんな、あんたのことばかり見てた」

その言葉には、積み重なった嫉妬が滲んでいた。

「だから嫌いだった」


そして最後に、吐き捨てるようにマーガレットは言った。

「もう二度と会いたくない!」

それだけ言うと、マーガレットは踵を返した。

強い足取りのまま、夕暮れの街へ消えていった。



一人残されたエルフィは、その背中が見えなくなるまで見つめていた。

胸の奥が痛かった。


アルドとの婚約が終わったことは嬉しい。


けれど――。


マーガレットを、本当に友達だと思っていた。


(私は……マーガのこと、好きだったよ)


エルフィは、心の中でそっと呟いた。



厨房から出てきたベルタは何も言わなかった。

ただ黙ってエルフィの隣に立ち、その肩をぽんと叩いた。

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