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森の現状を教えてもらおう

 ガイアスに「立ち話もなんだ、入ってあれから森がどう変わったか話でもするか」と家に上がらせてもらうことになった。


 以前は半地下で土壁に囲まれていた家だったのだが、中はすっかり木造建築になっている。玄関には段差があり、外履きと上履きに履き替えるようにして、床が汚れにくくしているようだ。


「ソラは履き替えられないだろうからそのまま上がってくれ。ただし、玄関で少しは埃を落としてくれよ。掃除するのが面倒だからな」


 俺は家に上がる前に足をあげて手で汚れを払ってから家に上がらせてもらう。今気づいたけど、ガイアスの身なりが整って綺麗になっている。髪と髭は綺麗に短く整えられ、手も汚れておらず、清潔感がある。上は白いのポロシャツを着ており、下は黒い長いズボンを履いていて、とても鍛冶をしているようには見えない。


 一階はキッチンとリビングのようだ。キッチンはシンクからコンロまで金属製で出来ていた。シンクの脇には水を貯めるタンクが置いてあり、水を入れると蛇口から水が出る仕組みのようだ。排水は地下に排水管が通っており、シャワー室を作った時の排水溝まで繋がって川に流しているんだそうだ。


 コンロの下に何やら魔石のような石が埋め込まれており、その隣には回すことが出来そうなつまみがあった。もしかしてIHコンロのようなものだろうか?二十年も経っていればそのくらいの装置が出来てもおかしくない…のか…?俺が気にしていると、ガイアスが使い道を教えてくれた。


「これか?これは魔導コンロと言って魔石に魔力を込めると、上にある鉄板を温めることが出来る優れものだ。このつまみを回すことで温度の調節が出来る。ソラが保護を求めた人間達との交流で出来たものだ。人間達の知識の探求には恐れ入った。ソラが色々と発明出来るわけだ」


 リビングには大きなテーブルと沢山の椅子が置いてあった。そのうちの一つに席を勧められ、椅子に座ると対面にガイアスが座り、俺が異精霊化してから順を追ってこの森で何が起こったのか教えてくれた。


「まずはどこから話そうか。ソラと別れてから話をしていくか」


 俺と別れた後、人間達を連れて森に向かうことになったが、幼い子供達がいるため、森に戻るのに時間がかかるとみたガイアスは、他のドワーフ達から食料を分けてもらい、森に先行して帰ってもらうことにしたんだそうだ。ついでに森には人間が寝泊りする場所がないので、簡易的な家を何軒か建てるよう頼んだらしい。


 道中、馬や牛を見かける度に、人間達をまとめている女性の侍女が時折口笛を鳴らすと、人に飼われていた馬や牛が寄ってきたため、子供達を背に乗せられるようになり、少しは歩くスピードが上がったようだ。


 しかし、それでも何日も森に辿り着かなかったため、行く先々に点在してあった村を利用して、寝泊りをしていたらしい。人のいなくなった村の畑は動物に荒らされ、食料となるものは取れず、ガイアスが持っていた食料を分け与えていたようだ。水は井戸水から確保していたらしい。


 村で使えそうな道具を回収しながら、荷車を馬と牛に引かせることによって、移動速度が上がり、三日かけて森に帰ると、焼き払われた付近に人間の住む簡易的な家が三軒建っており、外には石造りで作った竈を用意し、井戸も掘り、数週間分の食料を与えてあげたんだそうだ。


 ガイアス達ドワーフは過去に人間の奴隷にされていたため、多少の英語が話せたようで「ここが人間達の住む場所でここから先の森には入らないように」と忠告して、後は自分達で如何にかするだろうと放置プレイを決め込んだようだ。


 だけど、そんな人間達をほっとかないやつがいたらしい。リンだ。好奇心旺盛なリンは人間達に興味を示し、言葉が通じないにも関わらず、人間達相手に将棋やオセロを教えては対戦をして遊んでいたらしい。遊んでいる最中に人間から英語を学び、数週間で日常会話が出来る程になったんだそうだ。


 そして、その頃には人間達の食料が尽きかける問題が発生した。森に来て早々、畑を耕してもすぐには野菜が取れず、森の奥には入るなと言われたため、森の中にある食べ物を探すことも出来なかったようだ。


 その話を聞いたリンは、何か珍しいものでもくれれば、物々交換で食料を用意してあげると提案したところ、牛の乳から取れた牛乳とヨーグルトを分けてもらったらしい。マシロに調理をしてもらったリンは美味しさに感激し、森から果物や茸を取って来ては人間達に与えていたようだ。


 牛乳とヨーグルトに感動したリンは他にも何かないか尋ねたところ、まだ発酵が進んでいないチーズや調味料にしようとしていた果実酢とお酒の話を聞くと、どこから入手してきたのかピナ菌という粉末状のものを持ってきて、数日でチーズや果実酢、お酒が出来てしまい、人間達を驚かせたんだそうだ。


 そして木材を欲した人間達は乳製品とお酒を交換条件にして、ドワーフ達から木材を調達したらしい。だが、ここでドワーフ達が短時間でこんな美味い酒が出来るわけがないと、人間達に問い詰めたところ、リンがピナ菌というものを持ってきたことを話したらしい。


 それを聞いたドワーフ達はリンを問い詰めるが、ピナ菌の出処を「森で見つけた茸から取ったのよ。凄いでしょ!」とリンが誤魔化していることを見透かすと、今度はエンデを問い詰めたらしい。そうしてエンデの地下に茸の妖精のピナコが住んでいることが発覚し、森の住人はピナコの存在で真っ二つに意見が分かれてしまったんだそうだ。


「ソラはピナコのことを知っていたな?あの子の存在はワシらには魅力的過ぎた。人間とドワーフ、リンやマシロは庇護を求めたが、エルフや妖精、精霊達と揉めることになったのだ」


 エルフ達はリンとマシロが森の危機に何もしなかったくせにと威圧することで黙らせたらしい。問題は妖精と精霊達だ。上位の存在である彼らと敵対することは避けたい。そんな中、マシロが妖精や精霊達にエンデの外には出さないので見逃してほしいと提案することで黙認されたようだ。


 ただし、「エンデの外で見つけた場合は容赦しない」と言われたらしいが、匿われてからエンデの外に出たことがないので現状維持となり、森に平穏が訪れたらしい。


 この件以降、人間とドワーフは交流が深まったんだそうだ。人間の技術を取り入れたドワーフは色々な道具を魔改造していたんだそうだ。魔導コンロもその一つらしい。


 食文化に関してはマシロとミカによって魔改造され、今まで以上に美味しい料理が沢山誕生したんだそうだ。


 こうして、森に住む人間とドワーフの間で産業革命が起こり、今に至っているようだ。


「そういえば、エンデは今人間達の住む村に移動しておる。まさか、土魔法でエンデごとリンとマシロが移り住むことにするとは思わなかったな」


 人間達のいる村へ毎日のように行き来するリンは移動するのが煩わしくなり、エンデごと移動することをマシロに提案したところ、渋々、マシロとノアが土魔法でエンデ周辺を徐々に移動させることで、人間達の村まで移動させたらしい。


「そうそう、この森と人間達の村はお主に感謝を込めて、ソラ大森林とソラ村と呼ぶようにした。お主とはもう会えないと思っていたから名前だけは残そうと思ったのだ。ガッハッハッハッ!」


 ガイアスが盛大に笑うが、俺の許可もなく俺の名前の付いた森と村が出来ていた。嬉しいけど恥ずかしい。後で名称変えれないかな?


「まあ、ざっくり話すとこんなところか…。数年前にフェリーゼがやってきて、ソラが異精霊から順調に治っていると教えられ、帰りを信じて待っていたリンは飛び上がるほど喜んでいた。ソラ村はここから南西のところにある。リンとマシロのところへ戻るといい。首を長くして待っておるはずだからな」


 ガイアスは話し終わると、俺を玄関まで見送ってくれた。俺はガイアスに「ありがとう」と礼を述べた後、ソラ村のある方角へ飛び立った。

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