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やっと森に帰れる?

 グレアのベッドを作った後、ドラン達は急いでエレナ用のベッドを作成し、足りなくなりそうだった毛は、櫛を渡された俺がホワイトウルフとホワイトライガー、アイスジャイアントの子供達の毛繕いをして、ごっそりと回収することで補った。


 申し訳ないが、グランとリオンの分は後日になった。


「レディーファーストだから我慢してね」と言ったら、返す言葉が見つからないようで「分かりました」と二つ返事で了承してもらった。他の種族の分は時間を見てドラン達ホワイトウッホ族が順次入れ替えるらしい。


 そうこうしているうちに昼食が終わると、食堂では俺が作った将棋とオセロに長蛇の列が出来ていた。やはりここでも人気になったか…。娯楽が少ないこの世界ではボードゲームが強いようだ。トランプと麻雀が使えたらもっと良かったんだけど、魔力感知で絵柄がもろバレなのでこの世界では意味がなかった。残念である。


「き~、ソラにまた負けた~~~!もう一回よ、もう一回!」


 エレナは将棋とオセロにドハマりしたようだ。もう何回も再戦を挑んでくるので、ドラン達が大急ぎで将棋とオセロも量産している。ウッホ族…仕事増やしちゃってごめんよ。心の中で謝っておく。


「もう連続して何回もやっているだろ。順番に相手してあげるから列に並べよ。後ろを見てみろ」


 エレナが振り返ると、やりたそうな表情をした人達が長蛇の列を作っていた。エレナの後ろにはミレスがいる。流石のエレナもミレスのうるうるとした上目遣いに勝てなかったようで、ガックシと肩を落としながら列の最後尾へと移動してくれた。


「ソラさん、宜しくお願いします~」


 エレナは猪突猛進の戦略で手が読みやすく完勝していたのだが、ミレスはまだルールを覚えきれていないようで小さなミスを繰り返しては待ったをかけてあげて、その都度優しくルールを教えてあげた。


 ミレスは「う~んとえっと~」と言いながら必死にルールを理解しようと努力しているのか、頭から湯気が立ち昇り、頬も薄く紅色に染まっていた。うっ…、ミレスが可愛すぎる…。「この子、森にお持ち帰りしてもいいですか?」とゴレスに交渉しようと何度も考えさせられた。


 きっとリンやマシロ、ラピスやレイにも可愛がられるだろうな。でも流石にグレアとゴレスの許可は下りないだろう。この気持ちを心の中にきつく押し込んでおく。


 ミレスとの対戦中にドランがグレア、グラン、リオンと共に将棋とオセロを持ってやってきた。どうやらグレア達も将棋とオセロをやりたいらしい。


 流石にグレア達を並ばせることは出来ないので、グレア達には俺と一緒に対戦相手として別のテーブルに座ってもらった。


「ちょっと、お母様や兄様は並んでないじゃない!不公平よ、不公平~。私もそっち側でやらせなさいよ~」


 エレナが地団太を踏んで文句を言っている。俺はグレアに視線を向けてエレナの対処を促してみると、グレアは氷のチェーンの付いた首輪を見せびらかすと、エレナは黙って列に戻って行った。


 母は強し!娘の止め方をよくご存じで!でもそれはちょっと物騒なのでやめた方が良いと思うのは俺だけだろうか?うん、俺だけなんだろうな。深く考えることはやめて、ミレスとの対戦に集中することにした。


 エレナとミレス、そして色々な種族の人達と対戦して強さの傾向が分かってきた。まずウッホ族が皆物覚えが早く、指す度に強くなっていくのが分かった。次にアイスジャイアントとアイスマーマンが同じくらいに強く、その下にホワイトウルフとホワイトライガーが同じくらいの強さだった。


 横で打っているグレア達を見た限りではエレナと違い、ウッホ族よりも明らかに強く見えた。


 つまり、グレア達→ウッホ族→アイスジャイアントとアイスマーマン→ホワイトウルフとホワイトライガーの順番で強かった。これで種族ごとの知能の高さの傾向が分かった。残念ながらエレナとミレスはホワイトウルフとホワイトライガーと同じレベルだった。ミレスはともかく、エレナだけグレア達より頭一つ二つ遅れている感じだった。残念な子である。


「ソラ、色々教えてもらってありがたいのじゃが、そろそろ森へ帰りたいそうじゃな?いつ頃帰ろうと考えておるのじゃ?」


 まだいてほしいそうな視線をグレアが向けてくる中、このままずるずるといても仕方ないので俺は「出来れば今日の夕食を終えたら、そのまま出発しようと思っています。森に着く頃には朝になっていると思うので」と今の考えを伝えた。


「そうか。確かにこのまま街に留めておくのもソラには負担しかなさそうだしのう。では帰る際には皆で見送ろう。それくらいは良いじゃろう?」


 流石に嫌だとは言えない。感謝の気持ちをありがたく受け取ることにする。


「えぇ、嬉しいです。短い間でしたが、ありがとうございました。どの道、北の氷原には光の精霊に会いに行かないといけないので、その際には寄らさせていただきますよ」


「そうか!ではそれは楽しみにさせてもらおう。でもそろそろわらわはお主とも将棋とオセロを指したい。相手をしてもらってもいいかのう?」


「喜んで!!」


 その後、グレア、グラン、リオンの順番で将棋とオセロを指してみたが、グレアには負け越し、グランとリオンとは五分五分の勝負だった。さっきまで初心者だった相手にこの戦績とか…、俺…弱くね?肩をガックリと落としつつ、重い溜息が洩れた。


 将棋とオセロは夕食まで続き、夕食を終えると、皆が俺を街の入口まで送ってくれた。


「ソラ。この街を代表して礼を言う。ありがとう。これで当分は退屈せずに暮らせそうじゃ」


「ソラ様!近くに来た際は絶対に来てくださいね!絶対ですからね」


「ソラ~、次合うときまでには私をもっと楽しませるもの考えて来てよね!首を長くして待ってあげるわ」


 グレアからアイスヘブンの代表としてお礼を、ドラン達ウッホ族は涙を流しながら感謝を、エレナからはツンデレ風なおもちゃの催促の言葉を頂いた。


「あぁ、考えておくよ。では、皆さん、また会う機会を楽しみにしています。それではまた~」


 俺は皆に向かって手を振りながら街を出て、地上へと出る階段をひたすら登っていく。


 地上に出ると、辺りはすっかり暗く、数十メートル先が見えない程吹雪いていた。風は山に向かって吹き、上昇気流を作っているのが魔力感知で分かった。


 この上昇気流に乗って飛んでいけば、楽に山を越えられそうだな。


 俺は左右の腕の三本の間に膜を作り、ムササビやモモンガのような皮膜で風を捉えると、風の勢いで空へと舞い上がることに成功した。ついでに両足はプロペラに変形させ、セスナ機のような感じで空に向かって飛んでいく。


 みるみるうちに高度が上がり、すぐに山頂が見え、そのまま飛び越えて行く。


 飛び越えた先には地平線の先まで山々が続いており、山と山の間の麓には森が点在しているのが見えた。


 前回は山がえぐれているのに視線を奪われて、山々をよく見ていなかったので、観察しながら飛ぶことにした。珍しい植物や動物がいるかも知れないしね。


 樹々の隙間からは動物がちらほらと見えた。大きい角を生やしたカモシカ、ホッキョクグマのように真っ白ででかい熊、鷹とは思えぬほどの大きさの鳥など、様々な動物が生息していることが分かった。


 鷹のような鳥に至っては俺に向かって飛んできたが、こっちは足のプロペラで飛行機並みのスピードを出しているのだ。流石にこの世界の動物でも追い付くことが出来ず、諦めて帰って行った。


 ひたすらに飛んでいると、やっと地平線の先に森らしき光景がだんだんと見えてきた。その頃には後ろから太陽が昇り、辺りを明るく照らし始めていた。


 森に戻ったらエンデのところに真っ先に向かいたいところだけど、位置的にはドワーフの村の方が近いか?最初にドワーフの村から寄った方が効率が良さそうだ。滑走路もあるし上空からならすぐ見つけられそうだしね。


 俺はドワーフの村を探しながら森の上空を飛んでいく。


 案の定、滑走路が見えたのでドワーフの村はすぐに見つかった。でもおかしい。飛行機が何十機も見えるし、気球はないようだが、飛行船のゴンドラと思われるでかい船体が置いてある。短期間であれだけの数が作れるだろうか?もしかして思った以上に時間が経っている?


 ドワーフの村の上空にたどり着くと俺の不安を更に掻き立てた。


 ドワーフの建物は竪穴式住居のような作りだったはずなのだが、全てが木造建築になっている。殆どが平屋建てだが、ちらほらと二階建ての家が見える。そしてシャワー室のあった場所は大浴場のような風呂場が出来上がっていた。


 流石のドワーフでも数週間、数ヶ月で出来るとは思えない。あれからどれだけの時間が経過しているのだろうか。知るのは怖いが覚悟を決めて、ドワーフの村へと降り立つことに決めた。


 一番大きな建物が村長の家だろうと思い、その家の前に降り立ち、意を決して扉を叩いて「ごめんください。誰かいませんか?」と尋ねてみる。


「誰じゃ?朝っぱらから呼ぶ奴は?」と言いながら扉を開けて出てきたのはガイアスだった。


 ガイアスは俺を見ると、咄嗟に戦闘態勢に入り「誰だお主?何の用で来た!どうやってここまで入ってこれたんだ!」と警戒をあらわにしていたが、俺の姿に見覚えがあったようで「お主?もしかしてソラか?まさか本当に異精霊から戻る手段があるとは思わなかったな」と俺に気づいてくれた。


「やぁ、ガイアス。久しぶり。あまり聞きたくはないんだけど、あれからどれくらい経ってる?リンやマシロは元気にしてるのか?」


 俺の質問にガイアスは言うのを少し躊躇いながら「ソラ。あれからもう二十年近く経っておる。リンやマシロは元気だが、色々変わっていて驚くと思うぞ」と答えてくれた。


 俺は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。あの白夜の地域は、マジで精神と時の部屋のような場所だったようだ。そして俺が浦島太郎状態になっていることが確定した。

やっと森に帰って来られた…

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