魔族の種類と役割
応接室を出て、グランの後を付いていくと「各族長には話は通してあるので、今頃集まっている頃だと思いますよ」と話してくれた。根回しは既にしていたらしい。出来る男である。
途中、エレナの部屋を通り過ぎる際、氷が解かれ、普通の扉に戻っていた。不安が過ぎる。グランに質問してみた。
「エレナの部屋の扉、氷が解かれているみたいなんですけど、大丈夫ですか?」
グランは頭をボリボリと手で搔きながら「リオンはエレナに甘いところがあるのです。話が終わったのを見計らって扉を解除したのかもしれません。気を付けてください」と溜息交じりに答えてくれた。
リオンはエレナに優しいところがあるらしいが、周りの人にはいい迷惑である。まあ、グレアに叱られるのは当人達なので自己責任ってことなのだろう。
建物から出ると、族長と思われる人物が集まって来ていた。グランの言ったとおりである。しかし、隅っこにエレナとリオンが立っている。嫌な予感しかしない。
「ソラ、来たわね!私が族長達の自己紹介をしてあげるから感謝しなさい!」
腰に手を当て仁王立ちして威張っているが、族長達はいい迷惑だと言わんばかりの表情をしている。リオンに至っては視線を逸らし、我関せずといった姿勢を取っている。エレナの監視ではなく付き人みたいなことしてるんですけど…。グランとは角くらいしか大きな見た目の違いはないのに、中身はエレナに甘々なようである。しっかりしろよお兄ちゃん!
「エレナのことは放っておいて、私が皆を紹介致しますね。左から順番に、体の一番大きいのがアイスジャイアントの族長ゴレス、ホワイトウルフの族長ルノワール、ホワイトライガーの族長ヒュウガ、ホワイトウッホの族長ドラン、最後にアイスマーマンの族長ザックです。これがアイスヘブンに住む魔族の種族となります。あぁ、最後に私達はダークイーターと呼ばれる種族になります。私とリオンは父親に似ているらしく、角が生えていますが、尻尾は生えておりません。エレナは母上に似ているので角はありませんが、尻尾が生えています。外見に多少違いがありますけど、そういう括りにさせてもらっています」
「あー、グラン兄様、私が紹介したかったのに~!」
エレナは地団太を踏みながらぶつくさ文句を言っている。リオンが窘めているが治まりそうにない。
各族長の特徴は、俺から見たらアイスジャイアントは雪男、ホワイトウルフは狼の特徴を持つ獣人、ホワイトライガーはユキヒョウの特徴を持つ獣人、ホワイトウッホなんて真っ白なゴリラだ。最後のアイスマーマンなんて見た目はアザラシに水かきの付いた手が生えている魚人だ。
魔族と言うより獣人国家に近い気がする。この世界の魔族という括りはどうなっているのだろうか?南に住んでいるという魔族とも違うのかな?それは自分で確かめに行けばいいか。どうせ行くことは決まっているんだし、今は深く考えるのはやめておこう。
「ワシがアイスジャイアントの長を務めているゴレスと言います。この図体なので力仕事が得意です。何かあったら頼ってください」
「俺はホワイトウルフの長を務めているルノワールだ。鼻は良いが手先が不器用なのでここでは狩りの仕事をしている。欲しい魔物がいたら言ってくれ。集めて来てやろう!」
「我はホワイトライガーの長を務めているヒュウガだ。ホワイトウルフと連携して主に狩りの仕事をしている。木や山に登るのが得意なので魔鳥を取ることが多い。綺麗な羽や毛皮が欲しかったら我らに任せろ!」
「私はホワイトウッホの族長を務めているドランと申します。魔物や魚の解体、衣服や家具を作ったり、畑の手入れをしています。手先が器用なので料理も任されています。アイスヘブンで気になるところがあったら言ってください。できうる限り対応してみせます」
「最後は私だな。アイスマーマンの族長を務めているザックと申します。主に海を潜って海産物を取ってくるのが仕事です。海のことに関しては任せてください」
各族長が丁寧に自己紹介してくれる。しかし、ウッホ族だけ突出して仕事が多い気がする…。その白い毛はストレスで生えた白髪じゃないよね?それとも年老いてシルバーバックにでもなったのだろうか?他の種族より心なしか覇気のない声だったので心配になる。
あと、アイスマーマンのザックの声が低音ボイスすぎて渋すぎる。可愛い顔してなんだそのイケボはってつい突っ込みたくなった。
そんなことを考えていると、エレナがザックに抱きついてボヨンボヨンとしたお腹を盛大に揉みしだいていく。
「ねぇねぇ~ザック~。私除け者にされてるの~。癒して~」
「エレナお嬢様、皆が見ている前で私のお腹で癒されるのは止めていただきたい。あぁ、あはぁ~ん」
低音ボイスで注意しているが喘ぎ声が洩れている。お互いに気持ちいいのだろう。エレナはザックのお腹を揉みしだくのをやめようとしない。そんなエレナが俺に視線を向けた。
「ソラ、ザックのこのお腹気持ちいいのよ~。貴方も触ってみなさいよ~」
正直触ってみたいが、俺が触っても良いのだろうか?ザックに視線を向けると「優しく触ってごらん」と仰向けになってお腹を見せてくれる。
ではお言葉に甘えて…。もみもみもみもみ…、おおぅ、エレナの胸も柔らかったけど、こっちは柔らかさの中に絶妙な弾力がある。エレナが揉みしだくわけである。
我に返り、周りを見渡してみると、エレナ以外の全員が白い目で俺を見ていた。流石に羽目を外し過ぎたか。咳払いしつつ、ザックから距離を取る。
「これで挨拶も終わったことですし、アイスヘブンの案内を致しましょうか。ソラ、何か気になることがあったら言ってください。この街以外の文化を知っている貴方の意見は貴重ですから」
エレナが手をあげて「私もついてく~」と声を張り上げていたが、グランに「家に帰って母上に叱られてきなさい。リオン、エレナをあまり甘やかさないように」とリオン共々釘を刺され、肩をガックシと落としながら家に帰って行った。
「では、私も付き添いましょうか。工房にも案内しましょう」
ドランも付き添いに名乗りを上げてくれた。彼がこの街の職人みたいだし、この街の文化について色々教えてくれるだろう。俺は「ぜひ!」と同行してくれることを歓迎した。
グランとドラン以外は挨拶を終えると、散り散りに街の中に去って行った。
「どこから街を紹介しましょうか?こういうことはしたことがないので要領が分かりませんね」
グランは苦笑いしながら悩んでいるようだった。そこで俺が助け舟として「上の階層から順番に見て回ればいいんじゃないかな?見晴らしもいいでしょう?」と提案をする。
「それはいいですね。そうしましょう!提案ありがとうございます」
グランを先頭に俺とドランは街の上の階層へと移動することにした。




