趣味と完治
メルフィーナとの対戦以降、モヤモヤした気持ちの整理が出来ていないせいか、負けることが多くなってきた。
実際、対戦相手の精霊達が強くなってきたのもあるが、俺が集中力を欠いたせいで負ける場面がちらほらあった。
このままじゃダメだな。何か気持ちを切り替えるようなことないかな~。
次の対戦相手は服がはだけて立派なメロンが今にも零れ落ちそうなメルフィーナだった!もう一巡したらしい。
「メルフィーナ、服がはだけてきてるぞ!しっかり服を着ろよ!」
メルフィーナは頬に手を当てて「動いたらはだけてきたのです。この服を再現したのは失敗したかもしれませんね」と他人事のように話している。
精霊の羞恥心はどこにもないらしい。いっそはだけない服装にすればいいものを…。
そこで俺は閃いた!俺の思考を読ませて、俺好みの服装を着させればいいのではないかと!
「メルフィーナ、俺の思考を読んで、服装を再現してみてくれないか?出来ればでいい」
「分かりました。では手を」
メルフィーナが差しだしてきた手に俺は手を重ねる。
「これがソラの考えた服装ですか?」
メルフィーナは俺が思い描いた服装を上手く再現してくれた。黒と白を基調としたメイド服を身に纏い、胸元や裾にはフリルがあしらわれ、純白のエプロンがその上から重ねられていた。頭にはカチューシャが装着され、側にはピンク色のリボンに前髪の左脇をピンク色のピンで留めている。
極めつけは太ももまである白いストッキングが履き、白いフリフリのガーターベルトで落ちないようになっていた。これでチェーン付きのハンマーを持たせたら完璧だ!眼福眼福。
「メルフィーナ、申し訳ないんだけど、氷でチェーン付きのハンマーを作ってみてくれないか?」
メルフィーナは氷でチェーン付きのハンマーまで作ってくれた。髪型が少し違うが、俺には何のコスプレをしているか一目瞭然だった。
「これに何の意味があるのですか?」
「ん?俺の趣味だよ。まさか再現してくれるとは思わなかったけど、これからは出来るだけその恰好でいてくれないか?」
そういうと、メルフィーナはおもむろにハンマーをジャラジャラと振り回し、俺に向けて投げつけてきた。俺は間一髪で避けることに成功した。
「うお、いきなり何するんだ!当たったら危ないじゃないか!?」
メルフィーナは頬に手を当てて「趣味と言われたので、これで攻撃されるのも趣味かと思いました」と真顔で発言している。
「ハンマーはもう消していい。ジャラジャラうるさいし、手が塞がって邪魔になるからな。でも服装はそのままで頼む、お願いします!」
俺が両手を合わせてお願いすると、メルフィーナは渋々了承してくれた。
そんな俺達のやり取りを見ていたゴードンから「お主達は何をしておるのだ?まだまだ元に戻るには時間がかかるのだからあまり騒がず、大人しくしていなさい」と注意を受けてしまった。
「ソラ、魔力が動かせるようになったら言いなさい。それで異精霊化が完全に解ける。その時になったらお主にやってもらいたいことを教えよう」
どうやら、魔力が感知出来たり、動かせるようになると異精霊化が完全に解けるようだ。
「分かりました、その時は言います。でも俺に何をさせるつもりですか?無茶な要求ではないですよね?」
「無茶ではないが、お主の未来を左右させることなのは間違いないな。だが我らも力を貸さねばならないので、ソラだけが負担を負うわけではない。出来るだけ協力してほしいということだ。強制はしない」
俺に拒否権はあるようだ。それだけで気持ちが大分楽になった。
その後、メルフィーナの姿を拝みながら、将棋とオセロを指したらぼろ負けした。視線が自然とメイド服に向かってしまい、全然集中出来なかったからだ。
流石に休憩もせずぶっ続けで指し続けていたので、俺は休憩をもらうことにした。
ついでに休憩所が欲しいと氷の精霊にお願いして、休憩室という名の氷の宮殿を作ってもらった。
これでここの場所が精神と時の部屋感が増した。満足した俺の顔がにやけて止まらない。
俺が宮殿で休憩している間も、精霊達は黙々と将棋とオセロを指していた。余程、将棋とオセロが気に入ったらしい。休憩を入れずによくあそこまで指せるものだ。感心する。
俺の体もまだまだ灰色のままだ。休憩を終えた俺は、元いた場所に戻り、将棋とオセロを再開する。
メルフィーナが目立つのでそれを基準に何周したか覚えることにした。
一、二、三、四、五…。九十八、九十九、百!
いやいやいや、流石に皆休まない?どんだけ精神強いのよ。いや、精霊だから精神強いのかも知れないけど、限度ってものがあるでしょ。俺の精神力のゲージは真っ赤っかよ!
こんだけ打っても体は少ししか薄くなっていないし、俺は百周を目途に休憩を取ることにした。それでも他の精霊達は休憩を取らない。ストレスになってないならいいんだけど、これがストレスになって異精霊が生まれるってことは流石にないよね?
そんな俺の不安も気にせず、精霊達は将棋とオセロを指し続けている。一応、ゴードンに確認してみるか。
「ゴードン、少しいいかな?流石に休憩せずに指し過ぎじゃないかな?これがストレスになってる精霊っていたりしない?」
ゴードンは爪で顎をポリポリしながら辺りを見回し始めた。
「今確認してみたがいないみたいだな。みな楽しくて仕方ないから指し続けているのだからこのままで良いのではないか?」
ん?テレパシーや念話みたいなことで確認したのかな?まあ、ストレスを感じていないことが確認出来ただけでも良しとするか。
二百、三百、四百…。八百、九百、千!
はぁはぁ、千回をとうとう超えてしまった。でも俺の体はすっかりと薄くなり、風の精霊の時の色に限りなく近くなってきていた。
「ソラ。そういえば、前の異精霊化した精霊は異精霊の状態が長くて魔力の操作や感知を忘れていたのを思い出した。そろそろ魔力の操作や感知が出来ないか試してみたらどうだ?」
ゴードンから指摘され、俺は魔力を操作出来るか試してみた。すると、魔力の操作と感知が出来るようになっていた!やっと異精霊化が解けた。これでリンやマシロ達がいる森に帰れる!
でもその前に俺に何かしてもらいたいことがあるって言ってたな。俺は気を引き締め、ゴードンに話しかけた。
「ゴードン、魔力の操作や感知が出来るようになった。これで完治ってことでいいんだよな?それで俺に何をしてもらいたいのか教えてくれるか?」
「あぁ、ソラ。お主には一時的にこの星の神になってもらい、事象の改変をしてほしい」
その内容に、俺の頭の中は真っ白になった。




