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閑話 Gトータス発進&変異(クローヴィス博士視点)

 Gトータスの格納庫に到着した。まだここの区画は矢の攻撃がされていないようだ。壁に矢が刺さった後やひび割れは見受けられなかった。


 私は早速、Gトータスのコックピットに入り、起動の準備に入る。矢で攻撃されている音がどんどんと近づいているのが音と振動で感じるようになってきた。早くチェックを終わらせなければ!攻撃音が私の鼓動を早めていく。


 最終チェックを終えると、後は将軍を待つだけだ。額の汗をハンカチで拭っていると、攻撃音の合間に複数人の走ってくる足音がどんどんと近づいてきた。


「博士、お待たせしました!」


 将軍だ。兵士を五人連れて、手には袋一杯に詰められた人工魔石があった。


 先に兵士達がコックピットに乗り込むと、最後に入ってきた将軍がハッチを閉めた。


 将軍は袋から人工魔石を取り出し、コックピットの後ろにある魔石を嵌め込む装置に次々と嵌め込んでいく。嵌め込んでいる間に正面の壁には次々と矢が突き刺さり、そこら中にひびが入っていく。


「博士、装置に全ての人工魔石をセットしました。Gトータスの起動をお願いします!」


「了解しました。ではGトータスの起動準備に入る。それぞれ持ち場のメーターをチェックし、規定値の赤い線まで魔力の圧力が上がることを確認せよ!」


「はい!!」


 私はGトータスを起動させるためのレバーを思いっきり引いた。


 ゴウンゴウンと音を立てて、Gトータスが立ち上がっていく。


「魔力の圧力、正常に上昇中…、規定値まで達しました!各足部、動かせます」


「よし、まずは右の前足からだ。タイミングよく動かすように気を付けろ!各足部はまだ一人一人の操作じゃないと動かせないんだからな!」


「了解しました。では行きます!」


 私から見て、右奥の操縦席の兵士が操作を始めると、Gトータスの右前足がドスンと音を響かせながら前に出た。次に左奥の兵士が、そして右手前の兵士、最後に左手前の兵士の順で操作を行うと、Gトータスが歩き出した。


「凄い、この巨体が動くとは信じられませんな。しかし、正面に扉を付ける前にGトータスを動かすことになるとは思いませんでしたな」


 Gトータスは元々、予算の中から少しずつ部品を集めて秘密裏に作っていたので、格納庫に扉を付けていなかったのだ。今では壁にひびがそこら中に入っているため、中から簡単に壊して出られそうだ。まさか、こんな形で扉を作る手間が省けるとは思わなかった。


「確かに。こんな形で扉を作る予算が浮くとは夢にも思わなかった。一方的に攻撃を受けているのは解せないけどな」


 壁の近くまで移動させると、口からヘルファイヤーブレスを吐かせて壁を破壊しようと試みようとしたところ、ドォォォオオオンという音と衝撃が建物中に響き渡った。


「なんだ?外で何が起こっているんだ!?」


 先ほどの轟音のせいか、格納庫の壁全体と天井にひびが入り、今にも崩れそうだった。


「いけない。早く外に出ないと瓦礫に圧し潰されてしまうかもしれない。ヘルファイヤーブレスの準備を急げ!壁を破壊して外に出るぞ!」


「了解しました。ヘルファイヤーブレス発射準備…、完了しました!いつでも撃てます」


「ヘルファイヤーブレス、てぇ~」


 Gトータスの口から青い炎がゴォオオオウウウという音と共に吐き出され、正面の壁が崩壊する。イグナイトのテールファイヤーとは違って火属性だけではなく、風属性の魔法も合わせているので威力は桁違いだ。


「今のうちに格納庫から出るんだ!急げぇ~!」


 Gトータスが格納庫から出ると、ガラガラと音を立てながら格納庫の天井が崩れ落ちた。間一髪だった。安堵したのは束の間、周りを見渡してみると、そこは地獄絵図のような光景になっていた。


 軍部は殆どが崩れ落ち、周囲の建物が燃えて火の海になっていた。スコルピオンは見た目は大丈夫そうだったが、中の人間が熱さに耐えられなかったのか、スコルピオンの中と外に焼け焦げた兵士達が転がっていた。


「まさか、Gトータスを起動している間にここまで帝都が破壊されるとは、やつら一体何をすればこんなことになるのだ!!」


 将軍は血が滲むほどに拳を握り締めながら、壁を殴りつけて怒りをぶつけている。他の兵士達も騒然とした表情で呆けている。目の前の現実が受け入れられないのだろう。私も受け入れがたい。私が一番に心配したのはクレインが無事かどうかだった。


 この惨状では、上手く村人を逃がせたとしてもクレインが無事とは限らない。幸い、貴族街は障壁が張ってあるおかげか無事だった。ティアの心配はしなくても良さそうだ。


 そんなことを考えていると、ギラギラとした目をした将軍が「あいつのせいか!」と正面に指を指した。


 指の指している方向に視線を移すと、羽の生えたエルフのような外見の青年が広場の中心にあるモニュメントに降り立つところだった。右腕を変形させてモニュメントを削り、何かを成型しているようだ。


 あれが、将軍が見たという精霊と思われる存在か。確かに、体の一部を変形させている。よく見ると体も透けて見える。精霊で間違いなさそうだ。


 だが、あそこの広場には人外戦争時代の遺産である魔素吸収装置の元になった装置が設置してある。そして私は研究がてら修理し、再び使えるようにしたのだ。使いどころはないと思っていたが、まさか敵自ら罠の中に入るとは思わなかった。事実、私も入るとは思わなかった。


「将軍、あそこには旧時代の魔素吸収装置があります。遠隔操作で起動できるようにするので、注意を引きつけておいてください」


「了解した。あいつをこのまま好き勝手にさせてはいけません。必ず報いを受けさせましょう!」


 Gトータスの指揮を将軍に一任する。


 Gトータスにはイグナイトヘッドにも搭載されていたスコルピオンに指示を送る装置が取り付けてある。その装置を応用すれば広場にある魔素吸収装置も塔に設置した装置と同様に遠隔操作出来るようにしてあるのだ。一々塔に登らずに起動すればいいと付けた機能なのだが、こんなところで役に立つとは思わなかった。


 私は装置を弄り、波長を広場の魔素吸収装置に合わせる。


 その間、Gトータスはヘルファイヤーブレスで城内の城壁や家屋を吹き飛ばしながら、広場に向けて前進していた。そして精霊と思われる存在がモニュメントから矢先を成型し、こちらのコックピットに向かって撃ちこんできた。矢先はコックピットの前に展開されている障壁にぶつかり、霧散した。


 スコルピオンと違って鋏やシールドで防げないから障壁の装置を付けといて良かった。貴族街に作らされた装置がここで生きてくるとは、五月蠅い貴族達も役に立つことがあるものだ。


 よし、設定が完了した。これでいつでも広場にある魔素吸収装置を起動できる。


 精霊はモニュメントから二発目の矢先の成型に夢中のようだ。移動する気配がまったくない。


「魔素吸収装置、起動!精霊から魔力を吸い尽くせ~」


 装置を起動させる信号を送ると、装置が赤く光だし、広場にいる精霊の魔力を吸い上げていく。


 精霊は徐々に魔力を吸われているのか、羽が無くなり、徐々に体が小さくなっていくのが見て取れた。


「ワッハッハッハッ、見たことか。帝国に攻め入るからこういうことになるのだ。さっさと報いを受けて消えるがいい!」


 将軍が勝ち誇った表情で勝利を確信した言葉を口にしている。


 昔は捕まえた精霊や妖精から魔力を吸いだすために作られたらしいのだが、それがここで役に立つとは思わなかった。私も勝利を確信してホッとしたので額の汗をハンカチで拭い、今後の予定を考えることにした。


 しかし、精霊に異変が起き始めた。胸の辺りから体が黒く変色していき、それが体全体に回ると、精霊の姿が変貌した。


 元の大きさより一回り大きくなり、全身は黒くそして油膜を張ったような虹色が辺りでちらほらと光っている。そして無表情なお面をつけたような表情、背中に増えた四本の腕、手と足は魔物のように先が尖っている。一体あの精霊に何が起きたのだろうか?


「一体、あの精霊には何が起きているんだ?博士、装置の吸引力を高めてください!」


 私は装置の吸引力を最大まで上げていく。しかし、変異した精霊は全く小さくならない。魔力を全く吸えていないようだ。あれは魔力で出来た体ではないのか?


 変異した精霊は何事もないように、右手で頭をポリポリ掻いた後、両手をぐるりと体に回し、勢いよく振り回した。


 すると、腕が伸び、広場の周りにあった装置が粉々に吹き飛ばされてしまった。広場の中央に合ったモニュメントも巻き添えで粉々になっている。


「ヘルファイヤーブレスを試してみましょう。準備急げ!」


「ヘルファイヤーブレスの準備、整いました!いつでも撃てます!」


「撃てぇ~!」


 変異した精霊がヘルファイヤーブレスを受けて煙で姿が見えなくなる。しかし、煙が晴れると変異した精霊は何事もなかったように首を横に傾げてこちらを見ていた。


 仕方ない。魔力を膨大に使うが、最後の手段を使うしかない。


「メガバスターキャノンの準備をしろ。最大出力でだ。狙いは変異した精霊!」


「了解。メガバスターキャノンの準備を始めます」


 ソードバスターやシールドバスターに搭載したバスターキャノンをGトータス用に改良したメガバスターキャノンなら流石に無事では済むまい。


 ギュインギュインという音を立てながら、メガバスターキャノンに魔力が注がれていく。


「メガバスターキャノン、最大出力に到達!いつでも撃てます!」


「メガバスターキャノン、撃てぇ~」


 赤い光線が変異した精霊に向かって解き放たれる。


 しかし、変異した精霊は右手をあげるだけで、メガバスターキャノンを片手で受け止めた。赤い光線が幾つもの光に分かれ、光の通った先にある家屋や城壁が次々と吹き飛んでいく。


 光線が徐々に細くなり、消えていく。残ったのは、片手だけで受け止め切った変異した精霊だけだった…。


「メガバスターキャノンでも駄目なのか?我が帝国最強の兵器だぞ…」


 私を含め、全員が絶句して言葉が出てこなかった。出てくるのは全身から噴き出す冷や汗だけだ。


 今までこちらを攻撃してこなかった変異した精霊が両手と背中にある四本の腕を前に突き出し、黒い球体を作りだしていた。その球体は徐々に大きくなり、明らかに変異した精霊よりも大きくなっていく。


 黒い球体が大きくなるにつれて体の震えが止まらなくなった。それは私だけではないようで周りの兵士や将軍も同様に震えていた。そして球体がGトータスよりも大きくなる。どこまで大きくなるんだ…。最終的にはGトータスの二倍ほどの大きさまでになっていた。


「障壁に残りの魔力を全部注げ!大至急だ!」


 将軍が震える体を抑えるようにして掠れた声で指示を飛ばす。


 変異した精霊が声にならないような咆哮をあげると同時に黒い球体から放射線状に黒い光線が放たれた。Gトータスの障壁は意味をなさず、紙切れ同然のように吹き飛ばされていた。私は咄嗟にクレインから渡されたお守りを握り「約束を守れなくて済まない」それが私の最後の言葉になり、私の意識は黒い光線に飲まれて消えていった。

ここの先また視点が変わります。

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