帝都攻略戦2
旋回して軍事拠点を左回りに迂回すると、横目で見たよりはっきりと矢が至る所に刺さってヒビだらけになっているのが良く分かった。
堅牢な軍事拠点はレンガ造りに見えるが、ヒビ割れている箇所から鉄筋が見えている。見た目よりかなりしっかりとした作りのようだ。
「あれだけ矢が刺さっているのに良く崩れないな。プランCで止めを刺せるといいんだけど…」
そんな独り言をいいながら、俺も軍事拠点に向かって、出来るだけ矢が刺さっていない箇所に狙いをつけて矢を撃ちこんでいく。
下では俺達を無視するなと言わんばかりに、蠍が家や他の蠍を使って砲台の角度をつけて、飛行船に向かって砲撃してくる。
それでも飛行船のゴンドラには少し届いていない。矢が満載で高度が下がっていたら危なかっただろうが、今は高度が上がり続けているので、恐らくあの蠍の砲撃じゃどう頑張っても届かないと思う。
放物線を描いた砲撃は角度がついたせいか、街中に落ちるようになった。至る所でボカンっと家が破壊される音が聞こえてくる。
流石に街中に攻撃が落ちたのは衝撃的だったのか、それ以降、蠍の砲撃はピタリと止んだ。
どうしていいのか分からないのか、それとも上からの指示がないのか、蠍の兵器は鋏や盾でコクピットを守りながらこちらの動きを静観するようにその場から動かなくなった。
俺達は引き続き、軍事拠点を左回りに矢を撃ちこんでいく。最終的にはUの字に矢が刺さりまくっていて、ハリネズミというよりは束子みたいな感じになった。
これだけ一方に攻撃しても次の手がないってことは、相手は打つ手なしなのかな?プランCへ移行しても問題なさそうだ。
「ガイアス。どうやらあっちはこちらに攻撃が届かないみたいだ。プランCへ移行して、飛行船を爆発させて軍事拠点もろとも蠍を吹き飛ばす。どうせ、飛行船を持ち帰っても使い道が殆どないから無くなっても問題ないだろう。ただ、ガイアス達は徒歩で森に帰ることになるけど、大丈夫か?」
「飛行船が無くなっても問題はない。それにワシらの体力なら徒歩でも森に帰るのは容易なことだ。プランCへ移行しよ。皆、あともうひと踏ん張りだ。一度街を離れて地上に降りるぞ!」
「おう!!」
プロペラを回している男達が張り切りながらペダルを漕ぐ。森方面は向かい風なのであまり進まないのだからこればかりは頑張ってもらうしかない。
街から離れても蠍達はこちらに向きを変えるだけで、動こうとしない。戻ろうにも軍事拠点がボロボロなせいで帰れないのだろう。
軍事拠点の周りで待機してくれる分にはこちらは大歓迎だ。そのまま待機していてほしい。
だいぶ街との距離が離れてきた。これだけ離れれば、ガイアス達をパラシュートを使って地上に降りてもらっても問題なさそうだ。
「皆、パラシュートと持てるだけの食料を持って甲板から次々に地上に降りてくれ。ワシは最後でいい」
「了解!では地上に降ります」
そういいながらドワーフ達は甲板の後ろからパラシュートを開き、次々と飛行船から飛び降りていく。最後に残ったのはガイアスと俺だけだ。
「ソラ。後を頼む!あれを徹底的に破壊出来るかの違いで今後の人間達に大きな影響を与えられるからな。ではまた会おう!」
「あぁ、また後でガイアス。後は任せてくれ!」
ガイアスがパラシュートを開いて甲板から地上へ降りていくのを見送ると、俺は操縦席へと向かった。
操縦席のハンドルを操作してもう一度街に進路を取る。追い風なのでプロペラを回さなくてもゆっくりと街へと向かっていく。
俺達が帰ると思ったのか、蠍の中から人間達が外に出ているのが見えた。もう一度向かってくると分かるや否や、大急ぎで蠍の中へと戻っていく。
さてと、軍事拠点の近くに爆破させたいけど高度が高すぎる。俺は気球のガスを注ぐ口を縛ってあるロープを解き、ガスを洩れさせて高度を下げさせる。
洩れたガスは風魔法で操ることで導火線のように細く長くする。これで離れたところから火をつけて爆破させるのだ。
俺は風の精霊なので火は作れない。なので体には事前に無数の石を取り込ませてある。これを高速で回してぶつけて火打石代わりにするのだ。
一応、石を擦り合わせて静電気を溜めて静電気で火を起こすことも出来る。二段構えの保険だ。
ゆっくりと高度を下げながら飛行船は軍事拠点へと向かっていく。風の精霊の良いところは風の動きが分かることだ。
これのおかげで追い風だけで目標に向けて飛行船を誘導出来る。
俺は飛行船から降りて、空中で滞空しながら飛行船の行く末を見守る。
流石に高度が下がってきているのが分かると、蠍達は飛行船に向けて砲撃を再開し始めた。
ゴンドラ部分に砲撃が当たるようになったが、表面に攻撃の痕が付くだけで全然破壊出来ていない。
重力に引かれて弾速が遅くなる分、威力も弱くなっているみたいだ。
飛行船が軍事拠点の上を通過するのを見計らって、俺は無数の石を回転させてぶつけ、伸ばしておいたガスに火をつける。
導火線のように伸ばしていたガスが飛行船に向かって燃えていく。
燃えたガスが気球に到達すると、気球の中のガスが一気に燃え広がり、膨張して破裂した。
ドォォォオオオンっと凄い音を響かせながら、大規模な衝撃波と熱波を作り出す。
軍事拠点は殆どが倒壊し、周りにいた蠍達はもがき苦しむような動きをしていた。中から人間達が這い出してきたが、服が燃えていて逃げ惑いながら力尽き、動かなくなった。
流石に蠍は無事でも中の人間は無事では済まなかったみたいだ。軍事拠点の周りにある建物も至る所で燃え、火の海の状態だ。逃げ場なんてどこにもなかった。
流石に酷い殺し方をしたと思う。でも最初に森を焼き払い、妖精達を殺してきたのは人間達なのだから、お互い様だと心の中で納得するように心に問いかけ、少しでも気分を和らげるように努める。
これでフェリーゼのお願い、もとい命令を達成することが出来たかな?あとはフェリーゼに丸投げしよう。
俺は街に背を向け、森へ帰ろうとすると、後ろからゴォオオオウウウっという轟音が響いてきた。
振り返ると、軍事拠点から蠍よりも遥かに大きく、周りの建物を優に超える亀型の兵器がズン、ズンと重い音を響かせながら出てきた。




