進捗の確認をしよう
皆が村へ帰っていく中、去り際にガイアスがピクシー達から伝言があったんだと教えてくれた。
「ピクシー達に頼んでいた物があっただろう?パラシュートとハンモックと言ったか?出来たから作業小屋に置いたので確認してほしいそうだ。また何か頼みごとがあったら、呼んでほしいと言っておったぞ!」
そういえば、ピクシー達を見かけないと思ったら、頼んでいた物はすぐに完成したようで「物造りって楽しいんだね~、ドワーフ達の気持ちが少しわかったよ~♪」とはしゃぎながら帰ってしまったらしい。
ガイアスはそれを聞いて非常に嬉しかったんだそうだ。顔がにやけている。
「そういうことだから、確認はソラがしてくれ。ワシらは明日には完成させたいからすぐにでも寝る。じゃあな」
「あぁ、ありがとう。明日も宜しく頼むよ。また明日~」
ガイアスが村へ帰るのを見送ると、残ったのは俺、マリンとノアだけだ。眠れない精霊組である。
「マリンとノアは引き続き、ガスを取りに行くのをお願いしてもいいかな?俺は作業小屋で頼んでた物が出来上がってるか確認があるから」
「分かった~。ガス取ってくるね~」
マリンとノアは物凄い勢いで森の中へ突き進んでいった。気球の方はマリンとノアに任せて大丈夫そうだ。
俺は作業小屋へ向かうと、小屋の端っこに三十個のパラシュートとハンモックがずらりと並んで置いてあった。搭乗員の人数を考えると十分な数だと思う。多めに作ってもらって良かった。
試しに一つずつパラシュートとハンモックを広げてみる。
パラシュートに関しては、少し小さい気もするが、この世界の住人の身体能力が非常に高い。落下速度をある程度軽減できれば問題ないと思う。紐が絡まったりしても樹属性魔法でどうにかなるだろう。
次はハンモックを調べてみる。寝る部分は衣服より少し網目が広くなっているが、伸縮性を考えるとこのくらいの網目が妥当なのだろう。端っこにはロープが等間隔で四本伸びている。このロープを柱や突起に引っかけて吊るすのだ。
ここまで出来なら問題ないだろう。多少の手直しが必要なところは職人達が勝手に魔改造してくれるに違いない。
パラシュートとハンモックの確認は出来たし、ゴンドラの進捗でも確認してみるかな。
俺がゴンドラに向かうと、マリンとノアがガスを注入している最中だった。流石に戻ってくるの早すぎないか?器用に触手を伸ばして、注ぎ口も自分で開け閉めしている。それが終わるとまた森の中に直行だ。
マリンとノアの成長が著しく思える。森に置いてくれば、人間達とすれ違いになっても森を簡単に守ってくれそうだ。頼りになる反面、俺の存在価値が薄れていく気がする…。いや、ポジティブに考えれば楽になるのだ。そう思うようにしよう!
ゴンドラに着くと、後ろに扉が付いていた。ここから乗り降りするのだろう。目の前には上るための階段が見える。恐らく甲板まで伸びる構造なのだろ。だから階段の位置がここにあるのだ。
まずは地下二階の部屋から確認していく。
入口の両脇には扉があり、開けてみるとトイレがあった。トイレの下の位置にクランクが付いているので後から土と枯草などを入れるのだろう。今は入っておらず、空の状態である。
そして両側にある休憩室を見ていく。休憩室には扉は付いておらず、開放的になっている。何かあったときすぐに出られるように扉を付けていないのだろう。
片側十部屋、両側で二十部屋もある。部屋数が多く思えるのはいくつか倉庫代わりに使うのだろう。
そして奥に扉の付いた部屋が両側にあった。中を開けるとまたトイレがあった。前と後ろで使い分けするようだ。
地下二階を見終わると、階段を上り、地下一階へと上がる。
内壁や天井がまだ張られておらず、バリスタが等間隔で設置されていた。バリスタの先にはスライド式の木窓が取り付けられており、使用するときだけ開けれるようにしてくれている。開きっぱなしだと風の抵抗が凄いからだろう。
これは恐らく飛行機を飛ばして得た経験が生きているに違いない。飛行機の空気抵抗をどう減らすか、かなり改良がされていたからな。
確かバリスタは両側で全二十機設置されるはずだ。現時点で半分の十機が出来上がってるんだから、ガイアスの言った通り、明日には終わらすつもりなのだろう。
また、マリンとノアを貸してって言われそうだな。後でマリンとノアに打診してみるか。かなり喜んでくれると思う。
噂をすれば見上げると、ひょっこりマリンとノアが顔を出してきた。今からガスの注入をし始めるのだろう。注ぎ口のロープを解いてガスの注入を始めていた。
「マリン、ノア。そのままでいいから聞いてくれないか。明日もガイアスにお手伝いを頼まれると思うけど、そうなったらお願いできるかな?」
ガスを注入し終え、注ぎ口を閉めながら「分かった~、手伝うよ~」と了承してくれた。
「ありがとう。マリンとノア、でも疲れたり、やりたくないと思ったときは直ぐに言ってくれよ。休憩は精霊でも必要だと思うからな」
「うん~、分かった~」
話が終わると、マリンとノアは黙々とガスを取りに森の中へ突き進んでいく。本当に分かっているのだろうか?でもマリンとノアは俺の命令を拒否出来たはずだし、俺の体感ではまだまだ休まなくても大丈夫な感覚はある。ならまだ大丈夫だろう。
俺は最後に気球周りを確認することにした。
気球とゴンドラを繋いでいる箇所は丈夫な柱の部分なのでそう簡単に壊れそうになかった。試しにロープを引っ張ってみると、気球の浮力が強すぎるせいで全然引けない。接続部分は大丈夫そうだ。
次に気球の膨らみ具合を確認してみる。触ってみると気球がたわむのでまだまだガスは入りそうだ。次にマリンとノアが帰ってきたら一旦ガスを入れるのはやめにした方がいいかもしれない。飛行船が浮き上がってからでは遅いからね。
気球周りの確認を終えると、マリンとノアが戻ってきた。いいタイミングである。
「マリン、ノア。それが終わったら一旦ガスを入れるのはやめにしよう。飛行船が浮き上がったら大変だからね」
「分かった~、これで今日は最後にする~」
マリンとノアがガスを注入しているのを横目に、俺は他に何かすることがないか少し考える。
そういえばパラシュートの性能を確かめてみるか。風を起こせばパラグライダー出来るかもしれないし。
俺は作業部屋へ戻ると、確認用に開いたパラシュートを引っ張り出して滑走路へと向かった。
マリンとノアも作業を終えたら、俺の行動が気になったのか、近づいてきた。
「パパー、何しようとしてるの~?」
「ちょっと、パラグライダーが出来ないか試そうかと思ってね」
丁度いい、マリンとノアにも体験させてみるか。俺はマリンとノアに体を小さくしてもらい、俺の体にしがみつかせる。
俺は開いたパラシュートに向かって風を吹き、徐々に強くしていく。すると、パラシュートは見る見る高く上がり、ついには空に飛び立った!
「パパー、凄い~。飛んでるよ~!」
「あぁ、成功したみたいだ。少し森の上を飛んで散策してみるか!」
パラシュートは見る見ると空へ上がり、眼前には大森林が広がっていた。ただ空を飛ぶのとは違い、視線が新鮮に感じる。初めて空を飛んだマリンとノアは感動でぷるぷると震えていた。
そして遠くの地平線から明かりがどんどんと強くなっていくのが見える。朝日だ。この体なら直射日光を見ても平気だろう。
朝日が昇ると、太陽の光が暗闇から世界を色とりどりへと色づかせていく。この光景も生身だと難しいかもしれないな。サングラスとか作れれば、リンやマシロにも見せられるかな?
朝日の光景に俺達が感動に浸っていると、下から大きな叫び声が聞こえてきた。
「ソラー。そんな面白そうなこと、私にもさせなさいよ~」
村の方からこっちに走りながら叫んでいるリンがいた。空を飛んでいたから見つかってしまったのだろう。良い視力をしている。
俺はそんなリンを見て苦笑しながら、色々な光景や楽しい生活があるこの森を守るのだと、心に誓った。




