飛行船を造ろう
結局、いいアイデアが思いつかないまま、ドワーフの村まで戻ってきてしまった。
酒場を見下ろすと、俺が戻ってきたのに気づいたのか、酒場からリンが出てきて仁王立ちで待ち構えている。
「ソラ。どこに行ってたの!面白そうなところに行くなら私も連れて行きなさい!!」
ぷーと頬を膨らませて、ぷんぷんと怒っているが、空を飛んでいったし、リンが行くにはガスマスクが必要になると思う。俺の知識ではガスマスクなんて知らない。作れないから今後も連れていけないと思う。
「ミカに言ったさ。それに、気球を膨らませるガスを探しに行っただけで、面白いものがあると思うか?それにガスには体に悪影響を及ぼすものだってある。精霊の俺ならまだしも、生身のリンなんか連れて行けないよ」
連れていけない理由を話すと、リンが肩を落として「そっか…、私でも行けないところがあるのか~」とガッカリしていた。納得して頂けたみたいで、とぼとぼと酒場の中へ入っていく。
中ではマシロと一緒に朝食を食べている最中だったようだ。テーブルについて、残っている朝食をついては口に運んでいる。そんな様子をマシロはクスクスと笑いながら見守ってた。
そんな様子を見ていると、ミカが顔を出してきた。
「やぁ、おはよう、ソラ。男共はもう滑走路に集まっているはずだよ。次は何を作ればいいのかワクワクしてたから早く行ってやんな。それと協力してくれるピクシー達もそっちに向かったみたいだから、相手を頼んだよ!」
男性陣はともかく、ピクシー達もやる気満々だな。昨日の今日でもう協力してくれるとは…。俺は急いで、滑走路に向かった。
滑走路には数十人の男性陣達とピクシー達十人が俺のことを待っていてくれた。
「さて、ソラ。飛行機はもう終わったからこれから飛行船を造るんだろう?どうすればいい?」
「どうすればいい?何すればいい?」とピクシー達も畳みかけてくる。
まずは先にピクシー達に仕事を振った方がいいかな?俺はピクシー達に今は球体の気球になっているが、これをラグビーやアメフトボールの様な楕円形にして欲しいとお願いする。
ピクシー達は「わかった~、やってるね~」と言いながら、樹属性魔法で器用に糸を操作し、布を変形させていく。そして樹脂は蜂蜜の様に変化させ、物凄い勢いで布に塗っていっている。
俺は一枚ずつ手間暇かけて塗っていったんだけど、樹脂も植物由来だ。樹属性魔法で簡単に操れるものらしい。ガッカリである。
ピクシー達の速さは尋常ではない。下手したら今日中にでも終わるペースだ。それを見て職人魂を刺激されたのか職人達が早くワシらにも仕事をさせろと急かしてくる。
ドワーフの職人達にお願いするのは気球に吊り下げるゴンドラとゴンドラ内に設置するバリスタだ。
バリスタは時間がかかりそうなので、手始めにボウガンを簡単に図形にして説明すると、ガイアスが「ちょっと待ってろ。それと似たようなものがある」と言って、村へ戻ってしまった。
そして戻ってきたガイアスの手にはボウガンと思われる代物があった。
「ガイアス、それどうしたんだ?それが俺の言ってたボウガンだよ!」
ガイアスは徐に語りだす。人間達が逃げた際、野営のテントだけでなく、色々の物資が取り残されていたらしい。このボウガンもその中の一つで、今まで埃を被っていたらしい。
あー、あの後、色々人間が残していった物資を物色してたのか。テントだけかと思ってた…。
「それに弓矢を装着して、引き金を引けば矢が飛ぶんだけど、それよりも大きいものを作って欲しい。それがバリスタって名前なんだ。ゴンドラの大きさからして二十個は作って欲しいかな。その分、ゴンドラに設置する場所が必要だけど、その設計図はガイアス達にお願いできるか?俺じゃ上手く設計図書けないと思うからな」
ついでに俺が矢を撃つ場所も作ってもらう。多分バリスタより俺の圧縮魔法で矢を飛ばした方が威力は上だと思う。
矢の矢尻も鉄製でお願いする。その方が威力が増すはずだから。
大量の鉄と木材がいるな…。鉄の材料は職人達に任せるとして、木材はトレントの協力が必要になるかも。
俺はピクシー達と職人達に指示を出し終わった後、トレント達がいる井戸のある広場に向かった。
トレント達はやることが無いようで暇を持て余しているようだった。そういえば、ここ最近は樹脂と飛行機の材料くらいしかやることがなかったはず…。
俺はユングに大量に木材が必要になるからドワーフ達に協力してもらえるよう要請する。
「あぁ、分かった。それと森を刺激することはあまりしないで欲しい。人為的に揺れが発生したのには驚いたものだ…」
多分、マリンとノアのやらかしを注意されている。煽ったのはリンなんだけど、俺が代わりに謝罪しておく。元々の原因は俺だしね。
職人達にはゴンドラとバリスタの製作頼んだ。ピクシー達には気球を、トレント達には木材をお願いした。
あれ、俺のやることなくない?大まかな作戦は考えてあるし、これはあとでガイアス達と議論すればいい。
ガスは気球が出来たらマリンとノアにお願いするつもりだ。俺だと体が軽くて大量に運べないのだ。
そういえばガスが燃えるか試してなかったな。酒場に戻って試してみるか…。
酒場に戻ると、暇にしているリンとマシロが女性陣や子供達と一緒に将棋やオセロで遊んでいるところだった。マシロが圧倒的に強いようでハンデをあげながら戦っているのが分かる。飛車と角を使っていないのだ。
飛車角落ちでも勝つとか、マシロの頭はどうなっているのだろうか。それよりもガスが燃えるか確認しないと…。ミカを探し出し、火種がないか尋ねると、手から簡単に火を出してくれた。火属性魔法が使えるようだ。
俺は体の中に吸収したガスを指先に集め、火に近づけてみると、火が着いた!可燃性のガスだ。取り扱いを気を付けないといけないが、これでやれることも増える。
これで俺のやることはなくなってしまった…。俺はミカに何かできることはないか尋ねると、ミカはニコッとした顔をして「あるに決まってるだろう!洗濯だよ」と洗濯場の方に向かって指を向けた。
俺は今日から終始、洗濯機代わりとして、洗濯をすることになった…。




