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作戦を提案する

 ドワーフの村での洗濯は朝食後から昼食までの短い間だったのだが、村全体から集められたせいか、酷く多く感じられた。


 樽に水を入れ、次々と洗濯物と洗剤を投入して、ただひたすらに回す。たまに逆回転もしてね。


 さすがに脱水と乾燥は難しいので、昼食後、洗濯済みの衣類を各家庭の女性陣が取りに来て、家の前にある物干し竿や張られたロープに引っかけて乾かしている。


 乾かす前、衣類を絞っている腕はかなり太い…。血管が浮き出ているし、筋肉も筋がハッキリと見える。日頃の賜物だと思う。あれでどつかれたら痛そうだ。まあ、俺は痛覚がないから関係ないけどね。餌食になるのは男性陣と悪さをした子供達やリンくらいだろう。


 そんな感じで午前と言っていいのか、午前中は洗濯するのが日課となっていた。そして、空いている午後に割り振っている作業の進捗を確認していく。


 やっぱり、樹属性魔法はかなり優秀で、ピクシー達は、わずか二日で気球を仕上げてくれた。


 俺が拍手しながら「ありがとう、助かったよ!」とお礼を述べると、お礼が嬉しかったのか「他に手伝えることはない~?やらせてやらせて~」と目をキラキラさせながら、仕事を求めてきた。


 そんなピクシー達に、いざというときの脱出用のパラシュートと休憩用のハンモックを作って欲しいとお願いをした。気球に比べたら大した量ではないので、一日で作ってくれると思う。

 

 膨らませていない気球は、樹脂が重なっている箇所がべっとりくっついていたが、樹属性魔法を使えば簡単に剥がせるらしい。なので、膨らませる際はリンかマシロにお願いすることにした。


 そんなリンだが、暇なのか、ゴンドラ造りのお手伝いをしていた。


 ゴンドラはログハウスの様に、加工した木材をただ金槌で叩いて嵌めていく方式みたいで、初心者のリンでも手伝えているみたいだ。


 それを見た俺が、「樹属性魔法でくっつけた方が早くないか?」とガイアス達に言ったところ、鬼の形相で怒られた。


「何を言っているんだソラ! 樹属性魔法で成型するとミリ単位の調整が出来ないし、何より質量の重い木材は魔力をたくさん使うんだ。それに魔法ばかりに頼っていると腕が鈍る。だから木材と金属は道具を使って加工しているんだ!」


 他の職人達も目をギラギラさせて、威圧感を放ってきた。魔力が目で見えるほど漏れている。職人達に対してかなり失礼な質問だったようだ。俺は誠心誠意頭を下げて謝罪し、ようやく落ち着いてくれた…。


「分かればいい。だが、あまり軽々しく口にするものでもないな。それは覚えておく様に」


 内心、ガイアスの方がかるがしく言ってる場面もあると思うのだが、それを指摘すると関係がこじれそうなので、心に留めておくことにした。


 まあ、リンも顔をニコニコ綻ばせながら楽しそうに金槌を振ってゴンドラを造っているので、ゴンドラに関しては、ガイアス達に任せても良さそうだ。


「それで、ソラ。ゴンドラが出来る前に確認しておきたいんだが、作戦は考えてあるんだろうな?ここまで作らせて何も考えていないわけでもないんだろう?」


「あぁ、作戦は考えてあるよ。ガイアスには先に説明するね」


 俺の考えた作戦はこうだ。


 プランA

 ・外壁の塔にあると思われる魔素吸収装置を飛行船のゴンドラからバリスタと俺の圧縮魔法で撃ち崩す。

 ・敵が空飛ぶ兵器を持っていた場合は、風の精霊である俺が空を飛んで対処する。


 プランB

 ・プランA後、相手に対空戦力がなかった場合、軍事拠点をバリスタと俺の圧縮魔法で攻撃をする。

 ・蠍の兵器が出てきた場合、数によっては殲滅、若しくは戦力の低下を狙う。


 プランC

 ・プランB後、相手にこちらに反撃する手立てがないと判断した場合、飛行船を軍事拠点に向けて移動させ、気球を大爆発させて軍事拠点と周りにいるであろう蠍の兵器を吹き飛ばす。確実に破壊出来なくてもかなりの時間が稼げるはずだ。

 ・実行前には、ピクシー達が作ってくれたパラシュートで乗組員は事前に脱出させる。空が飛べ、ガスを操作することが出来る俺が最後まで残れば気球の爆発も簡単だ。


「つまり、プランAは最低限の破壊目標を破壊しつつ相手の出方を見て、Aのまま終わりにして帰るか、相手の出方によってはプランBとCに移行するということか…。相手の対空装備はどれくらいあると思っている?」


「フェリーゼから見せてもらった街の光景では、外壁にバリスタの様な装備はなかった。それに飛行する兵器があったら、森を偵察するときに事前に使っているはずだ。でもそんな情報は森に住むトレントから聞いたことが無い。そんなの見かけたら教えておいてくれてるはずだ」


 そう、人間達が森に進行してきたとき、取った手段は何かを探すようしらみつぶしに森を二方面から攻めてきていた。


 事前に偵察していたら、最短ルートで目的地に向かって進軍していたはずなのだ。目的がエルフなら尚更だ。


 俺が森の上を飛んだだけでもエルフの里はある程度予測できた。あそこだけ他より樹々が高いのだからかなり目立つ。


「飛行兵器はないだろうけど、対空兵器はあるかもしれない。だから地の利を生かすために飛行船を選んだんだ。高度を稼げば、今の人間の技術じゃ届かないだろうし、こっちはバリスタで一方的に攻撃出来るからな」


「なるほど、そこまで考えていたのか。乗組員の人選はこちらで選んでも構わないか?人間達の戦力を削がないとまたいつ森に侵攻してくるか分からないからな。協力は惜しまん」


「ありがたい。こっちからいずれお願いしようとは思ってたんだ。出来るだけ危なくないような作戦を立てたつもりでも参加してくれるか分からなかったからね」


「ガッハッハ、森の危機が迫っているなら協力は惜しまんさ。あと、バリスタの試作品は明日にも完成する。明日はそっちのテストをしよう。これの性能で戦局が大きく変わるだろうからな!」


 ガイアスはそう締めくくると、俺の背中をばんっと叩いてゴンドラの方へ去っていった。


 これで乗組員の協力は取れた。明日はバリスタのテストか…。どんな性能になっているのか楽しみだ!

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