天然ガスを探しに行こう
皆で高笑いした後、酒場を見渡すと、目に付いたのが、リンと村の子供達だ。
遊び疲れたのだろう。リンも含めて皆テーブルに突っ伏して寝ている。
女性たちの中には子供達の母親もいたようで、子供達が起きないようにおんぶしたり、抱っこしたりしてそれぞれの家に帰っていく。残ったのはリン一人だけだ。
ミカがマシロと交代すると、マシロがリンの分の夕食も一緒に持って、リンの横に座り夕食を取り始めた。
ぎゅるるるぅぅぅと誰かのお腹の音が鳴ったかと思ったら、リンが飛び起きて「お腹空いた~、ご飯!」とマシロが持ってきた夕食を頬張っていく。マシロは出来る子である。
リンとマシロが夕食を食べているのを横目に見つつ、ミカが酒場を閉める準備をしていた。
「ミカ、もう酒場を閉めるのか?日が傾いて暗くなってきているけど、これからなんじゃないのか?」
「ん?今日は男共が使い物にならないし、女性陣達は仕事を終えたばかりだからね。今日の所は早めに寝て、明日の準備でもするさね。今日駄目だった分、明日はキリキリ男共に働いてもらわないといけないからね」
ハッハッハと笑いながら、握り拳を作っている。どうやら、男性陣は明日こき使われるようだ。自業自得である。
「それで、ソラはこれからどうするんだい?リンもマシロもこれから部屋で寝る支度をするはずだ。トレント達の所にでもいくのかい?」
「いや、今日の夜は森の東にある沼地に行って天然ガスがないか探してこようと思うんだ。気球を膨らませる代わりの物を探さないといけないからね」
ミカは一人で大丈夫かい?と心配した顔で俺をじとーと見てくる。別に魔法の練習をしたりするわけじゃないから、やらかす要素はないはず…。うん、ない。
「別に今回は探しに行くだけだからね。問題はないと思うよ」
「そうかい、まあ、あたしがあんたの行き先知ってるし、別にいいか…。気を付けて行ってくるんだよ」
リンとマシロは夕食が終わったのか、後片付けを終えると、そそくさと奥の部屋へ向かってしまった。
それを確認したミカも、酒場を閉めて奥の部屋へ入っていってしまった。
取り残された俺。よくよく考えると、久しぶりの一人行動かもしれない。
辺りはもう真っ暗でシーンとしている。時折、苦痛を訴えてくる声が聞こえてくるが、二日酔いにやられている男性陣だろう。
俺は空を飛び、そんな村を後にし、森を東へ移動することにした。
森の上を飛びながら移動するのは初めてかもしれない。遠くに一際高い樹々が聳える一帯がある。恐らくエルフの里だと思う。少し離れた所にポツンとエンデと思える樹が見えるのだ。
その先をもっと東へ移動すると、森の中に光っている地帯がいくつも見えた。樹々が生えていないようで、あそこが目的地の沼地のようだ。
目的地の沼地に着くと、光っている原因が分かった。茸が発光して光っているのだ。家にある茸よりも数倍は大きい。その為、発光する光も強いみたいだ。
辺りを見回すと、発光している茸以外にも茸がたくさん生えている。これだけ生えていれば茸の妖精が一人や二人は居てもおかしくないかもしれない。
でも俺の目的は茸じゃなくて、天然ガスだ。魔力感知を眼に集めて、沼地を見回していく。
すると、至る所にコポコポと音を立てながら、ガスが噴き出しているのを発見した。天然ガスだ!あとはこのガスが空気より軽いかを確認するだけだ。
俺はガスを集めて、冷まし、空気で浮くか沈むか確認した。
おー、浮く浮く。このガスは空気に浮くガスみたいだ。あとは可燃性か不燃性かだけど、少し持ち帰って村で確認しようか。手持ちには火元がないからね。
いざ、帰ろうとしたとき、茸達が茸の胞子を噴出していた。
茸の胞子が茸の発光と夜空の光に照らされて、キラキラと光って、幻想的な光景を作り出していた。
生身だったら見れなかった光景かもしれない。こういうとき、精霊の体だったことに感謝したい気持ちが湧いてくる。俺は風魔法で茸達を刺激し、胞子の噴出を後押しした。
どんどんと胞子は飛び散り、さらに幻想的な光景を拡大していく。胞子は光の反射で色々な色に変わり、風で舞い上げれば、フワフワといつまでも漂っていた。それを夢中になって繰り返していると、いつしか日が徐々に出始め、幻想的だった光景も徐々に終わっていく。
日が昇ると、ただの胞子が舞っているようにしか見えなくなってしまっていた…。正直、名残惜しい。
でも自然の風景は限定的なものが多い。今回もそうなのだろう。リンは連れてこようとしたら茸漁りしそうだし、何より胞子が生身に与える影響が分からない。
この場所は俺だけの秘密の場所として心に留めておくことにする。
時折、いくつかの視線を感じた気がするが、魔物の気配ではなかったし、茸の妖精だったかもしれない。でも今の茸の妖精の扱いじゃ、連れて帰ることも出来ない。
どうやったら茸の妖精の待遇を改善させられるだろうか?俺は頭の片隅で考えながら、沼地を後にし、ドワーフの村へと飛び帰るのだった。




