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エンデーーー

 胸がざわつくなか、俺達は家に向かって走り続ける。遠くに見える雨雲が更に嫌な予感を掻き立ててるようだ。


 前を行くリンから魔力が洩れているのがはっきりと見える。リンも相当焦っている。


 横を走っているマシロは平静を装っているが、リンよりももっと魔力が洩れていた。近くにいる俺が怖いと感じる程の魔力の威圧を感じているのだ。道中にいた動物や魔物が泣き喚きながら逃げ惑っていた。


 もうすぐで家に着く。そろそろエンデが見えてくる。


 エンデが見えた!


 そこには、くの字に曲がっているエンデがいた…。


「エンデー、大丈夫?何があったの!」


 リンも初めて見るエンデの姿のようだ。


 エンデがこちらに気づく。


「おや、リン、マシロ、ソラ。おかえり~。お主等いつの間にそんなに増えたんだ?マリンとノアが化けているのか?それともまた別の精霊でも連れてきたのか? リン、大変だから勘弁してくれ…」


 その返答に、リンとマシロの魔力がすうっと収まった。あれ?これもしかして、エンデ酔っ払ってる?


「マシロ、近づいちゃだめ、何か分かるまで畑で作業してて!」


 リンが慌てた様子でマシロをエンデから遠ざけようとしている。


 そういえば、マシロはお酒で酔ってやらかしたことがあるとか言ってたな。


「分かった。畑に行ってるね。何か分かったらすぐに呼んでね」


 マシロが畑に向かうのを見送ると、俺とリンは扉を開けて家に入った。


 そこにはマリンとノアを追いかけながら泣いているラピスと、千鳥足で床を彷徨っているレイがいた。


「マリン~ノア~、待ちなさいよ~。もっとぎゅ~っとさせなさいよ。あたしが貴方達の面倒を任されてるんだからこれくらいのこ許しなさいよね。グスン、グスン」


「あはは~、なんか、ふわふわしてる~、変な感じ~。ヒック」


 この状況を見た俺は直ぐに原因を察した。発生源であろう地下室に続く扉に視線を向ける。


「リン、発生源は地下だと思うんだが、行っても大丈夫か?」


 一応リンに確認する。俺はまだ一度もピナコがいる地下室に行ったことがないのだ。


「はぁ~、大丈夫よ。私も一緒に行くわ、心配して損しちゃった」


 確かに、俺達の心配した気持ちを返して欲しい。あー、でもピナコにお願いしたの、俺だわ……。


 リンが地下室の扉を開けて、階段を下りていく。俺も後を追う。


 そこには一階と同じくらいの部屋があった。部屋の所々には茸が生え、部屋の中心にはアルコールが入っているであろう樽が並べられていた。


 でも原因を作り出しているであろうピナコの姿が見えない。


 リンは部屋の中心に並んでいる樽に迷うことなく近付いていく。


 そして、樽を順番にコンコンと叩いていく。重たい音が響く中、一つだけ軽い音がする樽があった。


 リンがその樽の蓋を無造作に開けると、そこには眠っているピナコがいた。


 そんな寝ているピナコの頭に向かってデコピンをすると、ピナコが起き上がった。


「ふぇ!リン、なんでいるの?ドワーフの村に行ってたんじゃないの?」


「ピナコさ~、上がどんな状況になっているのか分かってる?凄く心配したんだからね!」


 ピナコはなぜ怒られてるか分からないような顔で眼をパチパチさせている。


 寝ている間に起こった出来事なのかも知れないが、もう少し周りを気にするようにリンが注意している。他人を注意しているリンなんて初めてかも知れない。


 珍しいものを見た半面、原因を起こさせてしまったのが俺であるため、申し訳ない気持ちで一杯だ。心の中でピナコ、リン、マシロに謝っておく。


 リンに抱きかかえられたピナコはそのまま一階へと連れていかれる。俺は重たくなった足取りで付いていく。


「ふぇ~、もしかして、酔っ払ってるの?ごめんなさい~。知らなかったの~」


 どうやら状況が呑み込めたようだ。責任を感じてか涙目になっている。そんなピナコを見ていると俺の心に棘がグサグサ刺さるような感じがした。きっと気のせいじゃない。


 俺とリンは他に異常がないか調べることにした。


 俺は換気のために開けれる扉を全部開けていく。


 リンがキッチン脇の水を確かめると、「駄目ね、水がお酒になってる」と答えてくれる。俺は味覚がないので、こういう確認はリンにしかできない。


 あれ?外のキッチン脇にも水があったような?


「リン、外のキッチン脇にも水なかったか?マシロは畑で作業してるんだろ?」


 それを聞いたリンが、物凄い勢いで外に飛び出して行った。俺も直ぐに後を追う。


「マシロー、キッチンに近付いちゃダメー」


 リンが大きな声で叫んでいるが、マシロは畑でキョトンとした顔で野菜を収穫していた。


「何か分かるまで畑で作業してねって言われたから、エンデには近づかないようにしてたよ?」


 マシロが良い子で助かったみたいだ。リンが冷や汗を拭いながら大きくため息を吐いていた。


 外の水もリンが確認したところ、やっぱりお酒になっていたらしい。少し顔が赤くなってきている。


「はぁ~、ソラ。どうしたらいいと思う?マシロは当分、家に入れれないわよ」


 俺は空を見ながら考える。空には黒みがかった雲が一面を覆っていた。


「あ!雨が降れば水を吸い上げて酔いが覚めるんじゃないか?外で雨宿り出来るところはないか?」


「ないわね。でも鳥小屋の屋根を樹魔法で延長すれば、なんとかなるかも知れないわ」


 リンが鳥小屋の屋根を樹魔法で延長させ終えると、ポツポツと雨が降ってきた。ベストタイミングだ。


「皆の酔いが覚めるまで、ここで雨宿りだな…」


 雨が次第に強くなるにつれ、風も強くなってきた。そしてふと疑問がよぎった。この世界の天気ってどうなんだ?


 飛行機も飛行船も天気に大きく左右される。嵐が続くなら最悪、今までしたことが無駄になってしまうかもしれない。


 俺はリンとマシロに疑問をぶつけてみる。


「なあ、この世界の天候ってどんな感じなんだ?飛行機と飛行船って雨とか強い風に弱いから、知っておきたいんだが…」


「うーん、今は暖かい時期だから十日に一回雨があるかないくらいじゃない?もう少しすると肌寒くなるくらい寒くなるんだけど、その少し前に雨風が強くなる時期があったような?」


 マシロは確かめる様にリンに視線を向ける。


「それで合ってるわよ。あと一月ってところじゃない?」


 それを聞いた俺は愕然とした。タイムリミットが丸々一月あると思ったが、少し前倒しにしないといけないかも知れないからだ。


 くぅ~、天候のこと抜け落ちてた~。俺が頭を抱えていると、リンが何かに気づいたようで声を上げた。


「あ!なんかエンデがゆっくり真っすぐになってきてる~」


 頭を上げると、確かにくの字に曲がっていたエンデが少しずつだが、真っすぐになっていくのが目に見えて分かった。


 そして、完全に真っすぐに戻ると、こちらにエンデが気づいた。


「おや?リンにマシロ、それにソラじゃないか。いつ戻ってきたんだ?なぜ、外にいる?雨が降っているんだから中に入りなさい」


 エンデは酔っ払うと記憶が飛ぶみたいだ。状況を簡単に説明した後、家の中に入ると、ラピスとレイも酔いから覚めていた。


 ラピスはマリンとノアに距離を取られ、肩をがっくりと落としていた。


 レイは二日酔いなのか、頭が痛いと頭を抱えている。


 対策として、今後はアルコールやお酒を造るときは、換気することで皆同意した。


 今日の俺の心は、家の心配、原因への責任感、ピナコへの罪悪感、天候の不安のクアトロパンチでノックアウトされた気分だ。

酔っ払って連絡できないだけでした。

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