飛行機を改良しよう
森を警戒してみたが、獣の泣き声が聞こえるくらいで、静かなもんだ。そんなことを考えていると、ふと地面が揺れている様な気がした…。
何かの勘違いか?地面に手を当てて確認してみる。少しだが、確実に揺れている。震度でいうと1ってところか?
山の方をふと見て見ると、高いところでは雪崩や落石が所々で発生している。どうやら北の方が震源みたいだ。落石が主に発生しているところは俺が吹き飛ばした山からだが……。
そういえば、フェリーゼは地震が多発していると言っていたし、ゴレイユは地脈の流れがどうとか言っていたような?
何かの自然災害の前兆じゃなきゃいいけど、あとでガイアスにでも聞いてみるか。長命種なら過去の災害とかにも詳しそうだ。
ドワーフの村へ戻ると、起きてる人はまだいなかった。揺れで起きてた人はいなさそうだ。
次に井戸の近くに集まっているトレント達を確認しにいくと、トレント達の大半は起きていた。
ユングが俺に気づいたのか話しかけてきた。
「おや、どうしたソラ。こんな夜中に、何か用か?」
「ああ、地震が起きてたみたいだから、一応確認して回ってるんだ。他の人達は起きてないみたいだけど、ユング達は起きているんだな」
「そうだな、トレント族は地面に根を張るから、揺れには敏感なんだ。最近は多くなって敵わん」
ガイアスより、ユングに聞いた方が早そうだな。
「その地震っていうのはどれくらいから増えてきたんだ?昔かなり大きな地震とかあったのか?」
「ここ百年くらいだな、その前は確か、千年近く前に一度大きな地震があったな。何があったか知らんが人間達が住む地域の魔素が薄くなってきたのもその頃だった気がする」
どうやら、大分前に大きな地震があって、人間が住む地域だけ魔素が薄くなったらしい。
ん?フェリーゼが確か、今人間が住む地域は魔素が薄くて精霊や妖精が生まれにくいって言っていた気がする…。
今度フェリーゼに会ったら聞いてみるか。何か重要なことを隠されている様な気がする。
「ありがとう。また何か気になることがあったら聞いてもいいかな?」
ユングは「ああ、構わぬ」と言い終えたら、眠ってしまった。周りのトレント達もいつの間にかまた寝ていた。
ユングとの話を終えると、日が昇り始める頃だったのだが、村が慌ただしい音を立て始めた。
俺は音の発生源のところへ向かうと、ガイアス達が集まっていた。ガイアスはこちらに気づき挨拶をしてくる。
「おおう、ソラか。これから二手に分かれて滑走路脇の作業場造りと飛行機のパーツ造りに分かれて作業をするんだ。早く飛行機の改良がしたくて、皆うずうずしていたからな」
どうやら、飛行機の改良が待ち遠しくて皆で早寝早起きしたらしい。職人らしくてふと笑いが零れる。
「じゃあ、俺はリンとマシロの様子を見た後、飛行船の気球でも試作してみようかな。予想以上に早く飛行機が完成しそうだからな」
「ガッハッハ、おう。そうしてくれ。試作品を作ってみないことには完成品は造れないからな。それに長く時間もかけられんしな」
ガイアスは鍛冶場へ、半数が滑走路へと向かっていくのを見届けると、俺は酒場に入ることにした。
酒場に入ると、誰もいない。ミカがいないのは珍しいのかな? いや、流石にミカも休むことはあるか。
そんなことを考えながら、酒場の奥へ向かい、リンとマシロがいる部屋をノックする。
「ソラ?ちょっと待ってね、今開けるから」
マシロが欠伸を噛み締めながら扉を開けてくれる。リンはまだ寝ているみたいだ。
「リンお姉ちゃん、もう良くなったみたいだったんだけど、ミカおばさんに拳骨されて無理やり寝かされたの。だからもう少しだけ寝かせといてあげてね」
リンの頭をよく見るとたんこぶが見えている。痛そうだ、かなりきつめのお灸をすえられたみたいだ。
マシロにガイアスが鍛冶場にいること、俺は滑走路で気球造りをする予定を伝えておく。
「飛行機造り、頑張ってね!楽しみにしてる!」
マシロが満面の笑みで答えてくれる。これは期待に応える為に頑張らねばと気を引き締めながら、滑走路へ向かった。
滑走路に着くと、既に屋根付きで飛行機が入れる大きさの作業場が完成していた。ログハウスでもこんなに早く出来ないと思う。それだけ、飛行機造り、いや、作ったことのない作業が待ち遠しかったに違いない。
作業場の中には既に仕上げた布と樹脂の入った樽が置いてあった。ミカが作業場が出来る前に既に置いていってくれてたみたいだ。皆仕事が早くて助かる。
これならフェリーゼの設けた期間内に飛行船が出来そうだ。
飛行機の部品を取り外しているドワーフ達を他所に、俺は仕上がった布を広げて、どうやって繋げるか考える。
樹脂でコーティングしているから肌触りはツルツルなんだけど、軽く押してひび割れると、中が粘々になっていて、針で紐を通すことが出来ない。針がすぐにダメになってしまう。
糊はこの世界にあるかな?いや、素人の俺が考えてもダメだな。俺は直ぐにドワーフ達にアイデアを募集する。
すると、ドワーフの一人が木の板を二つ持って来て、それぞれに凹凸を掘り、二つの板で布を挟み、金槌で板を叩いて留めてくれた。あー、釘を使わないで繋げる木組みってやつだ!やはり職人の知恵に素人が叶うわけがなかった。
俺は手の空いたドワーフ達に気球造りの手伝いをお願いする。すると手の空いてるドワーフ達がガンガンと仕上がった布を繋ぎ合わせていく。今回は試作品なのでラグビーボールの様な楕円体ではなく、丸い形でお願いした。
あれ?俺って何も出来てなくない?ガックシと肩を落としていると、ガイアス達が金属のパーツを持って作業場に入ってきた。
「どうしたソラ?何でそんなところで、縮こまっているのだ?」
俺は布を繋ごうと考えたけど、結局、ドワーフの職人にお願いして簡単に解決されたことを報告する。
「ガッハッハ、そういうことか!ソラのアイデアには偏りがあり過ぎるみたいだな。だが、分からなかったら人に頼ることは悪くない。一人で出来ないからワシらもこうして話し合って試行錯誤して作っておるんだからな!」
バンバンと背中を叩かれ、気にするなと気を使ってくれる。
「それで気球の方はこれで完成か?」
「いや、気球と飛行機を繋ぐロープが必要だな。ロープはどこで調達してくるか…」と言いかけたところで、遠くから「ちょっと、私も混ぜてよぉぉぉおおお~~~」と大きな声を上げながら走ってくるリンが見えた。マシロも後ろから追いかけてきている。
丁度いい所にリンとマシロが来た。この二人は樹魔法が使えるからロープを作ってもらおう。あとついでにアルコールの入った樽も持って来てもらう様お願いする。
こうしてガイアス達は飛行機の部品の組み立てを、リンがロープ作りを、マシロにはアルコールの樽を持って来てもらう様お願いする。持ってきたアルコールの樽は残り一つなのでリンに任せると危ないと思ったからだ。
そしてマシロがアルコールの樽を持ってくる頃には、気球にロープを括り付けて飛行機の改良版と繋いだら試作品の完成だ!
皆がワクワクしている中、アルコールを沸騰させてガスを発生させ、気球を膨らませていく……はずだったのだが、気球が思うように膨らまない。
なぜだろう?ガス漏れはしていないと思うんだけどな…。あ、こういうときは魔力感知だ。俺は魔力感知でガスがどうなっているか確認出来ないか試してみることにした。
結果、気球には問題なかったが、アルコールを沸騰させてガスを発生させるのに問題があった。ガスが霧散して気球に上手く入っていってなかったのだ。
俺は風の精霊の特性が生かせないか、風をコントロールして霧散したガスを集めて気球に流し込んだが、気づくのが遅かった。アルコールの入った樽がもう空っぽだった。
気球は軽く膨らんだが、ロープを引っ張ってみると俺でも軽い力で引っ張れた…。浮力が全然足りていない…。
皆の視線が痛い…。結局、俺は気球を飛行機から取り外し、リンとドワーフ達は改良した飛行機を汗水垂らしながら飛ばすという結果に終わった。




