採掘風景
ミカの雷が落ちて、屋内での作業は出来なくなってしまった。
俺は、滑走路の脇に作業場を用意してほしいとガイアスにお願いをしに行った。
「おう、ソラか、それは良い。ワシらもあそこに簡単な作業場があればいいと思ってたんだ。明日までには作っておくからそれから利用すればいい」
飛行機の微調整を滑走路の脇でした方が良いので、二つ返事で請け負ってくれた。
その後、ミカに滑走路脇に出来る作業場に樹脂の入った樽と大量の布をそこに置いてほしいと頼み込んだ。
「あんな匂いさ、二度とごめんさね。わかった。次からはそこに持ってってやるよ」
男性陣が出禁になった結果、ミカも手持ち無沙汰のようだ。こちらも二つ返事で請け負ってくれる。
酒場の奥からくしゃみするリンの声が聞こえる。俺は酒場の奥にあるリンがいるであろう部屋へ顔を出す。
「あ、ソラ。おはよう。リンお姉ちゃんは見ての通り、寝込んでるよ。今日は私、リンお姉ちゃんの看病するからミカおばさんにもそう言っといてね」
リンの状態を確認すると、顔が真っ赤になって体が寒そうに小刻みに震えている。見えている肌は汗だくだ…。
俺はこんな状態のリンを見るのは初めてだが、マシロが看病してくれるし大丈夫だろうと、マシロに任せることにした。
酒場に戻ると、ミカにリンが食べれそうな軽食とマシロの朝食をお願いする。
「ああ、何か食べやすくて温かいものでも作っとくよ。リンの体調が悪い所なんて私も初めて見たよ、そんなこともあるんだね。ハッハッハッ、なんかの悪い前触れじゃないと良いけどね~」
あんな元気なリンが体調を崩すなんてあまり考えられないだろう。そして最後の一言は余計だ。俺も何か嫌な予感が湧いてきちゃうじゃないか。
まあ、夜は特にすることもない。森の監視をしておくか。
これでドワーフとリンやマシロの予定は確認した。後はトレントたちくらいか?でも樹液以外お願いすることは今のところ何もない。
うーん、と考えていると、ガイアスと職人達が木の籠を背負って森の奥へ移動しているのが見える。
俺は気になって、後を追うことにした。途中でガイアスに見つかったが…。
「どうしたソラ?これからワシらは鉄を取りに鉱山に行くんだが、一緒についてくるか?」
そういえば、ドワーフ達が何処から金属を調達しているのか知らなかった。俺はガイアスに「連れて行って欲しい」とお願いする。
ガイアス達は森の奥に見える山々に向かって、黙々と突き進んでいく。道中何回か魔物と遭遇するが、ガイアスを見る度に逃げ出していく。どうやら、リンと同じく、ガイアスがここらへんの魔物をコテンパンにしているのだろうと簡単に想像することが出来た。
山に近付くにつれ上の方を見ると、標高の高いところに雪が積もっているのが見える。あそこまでリンは飛んでいったのかと軽くため息が漏れる。
山の麓に着くと、穴がいくつもあった。恐らく坑道だろう。坑道の前には大きな岩が置いてあるが、あれは何かの目印かな?と思っていると、大きな岩が突如動き出した。
「ガイアス達か、後ろに珍しいものを連れているな? 風の精霊が一緒とは何かあったのか?」
「やぁ、ゴレイユ。後ろにいるのは風の精霊のソラだ。森に攻め込んできた人間達を追い返すのに協力してくれたんだ。ソラ、こいつはゴレイユ、岩の妖精でここの坑道を住処にしている。ゴレイユ、今日は多めに鉄鉱石を取っていこうと思ってるんだが大丈夫か?」
「まだまだ。鉱物には余裕がある、好きに持っていくといい。……ただ、最近は地脈の流れが少し騒がしいがな。気にするほどではないが…。それとガイアス、ソラ。人間達を追い返してくれて有難う。何か協力できることがあったら、何でも言ってくれ。出来る限りのことはする」
挨拶を終えると、ゴレイユはまた大きな岩の様に丸まってしまった。
坑道に入る前に早めの昼食を食べるみたいだ。ガイアス達は木の籠から軽食を取り出していく。
「坑道に入ると腹が減るからな、いつもこうして入る前に飯を食べるんだ。入った後は砂まみれで体を洗わないと、家にいれてもらえなくて夕食も食べれないからな」
飯を食べながらガイアス達は飛行機に関する部品の話であーでもない、こーでもないと話合いを始めてしまった。俺は会話に入れず、待ちぼうけを食らった。
昼食が終わったのか「じゃあ、鉄を取りに行くぞ」と、ガイアス達は火もピッケルの様な道具も持たずに、坑道の中に入っていく。どうやって、鉄を取るつもりなんだ?
結論から言うと、魔力感知での地形把握と岩魔法での鉱石採掘だった。確かにこれなら目が見えなくても良いし、ピッケルなどの道具はいらない。腹が減る理由もこれだ。これがこの世界でのドワーフ像なのか…。俺の想像していたドワーフ像が少しずつ崩れ落ちていくのを感じる。
坑道から出ると、日が傾き始めるところだった。木の籠には鉄鉱石が一杯入っているので、俺以外は皆砂まみれだ。確かにこの状態じゃ家に入れてもらえないだろう。
ゴレイユに挨拶を済ませると、ゴレイユは手を振りながら見送ってくれた。
村に帰る頃には、既に日が落ちかけていた。ガイアス達は作業場に鉄鉱石を置いていったあと、側にある水場で体を洗いだした。どうやら、鉱物を取りに行ったあとはここで体を洗うのらしい。でもこの水場の水、鉄を冷やす時にも使ってなかったか…?
まあ、今さら衛生観念を説く気もない。ドワーフ達はこれで何十年も生きているのだ。
その後、皆各々の家へと帰ってしまった。大雑把過ぎる…。溜息を隠せないまま、俺は夜の森の警戒をすることにした。
人間達が攻めて燃え続けていた森は完全に沈下したのか、もう煙は立っていなかった。静まり返った森が、かえって不気味に感じられた。




