エリーゼと対話
クロノの家に着くと、エリーゼの神精石が付いている魔剣を差し出された。
「この魔石のところに魔力を込めるとエリーゼと話すことが出来るのだが、相性があるらしく、今のところ話せるのは私とグロスだけなのだ。試しにソラもやってみてくれないか?私とエリーゼが話すと、小言ばかりで話がなかなか先に進まんのだ」
大きい魔剣だ。長さだけならエレナの身長くらいあるんじゃないか?差し出されたけど持てる気がしない。まず、持てるか力試ししてみるか。
「持てるか分からないのでそのまま持っていても構いませんか?持ち上げられるか試してみたいので…」
「分かった…」
俺は魔剣を六本の腕全てを使って持てるか試みた。結果は持てなかった…。この魔剣重すぎ、そして俺の力弱すぎる…。
「申し訳ありませんが持てそうにありません。魔剣を剣立てに置いた状態でも構いませんか?」
クロノは俺の非力さに「そういえば風の精霊のエリーゼも非力だった」と苦笑していた。
クロノが剣立てに魔剣を置くと、俺は神精石に触れて魔力を流してみる。
「あら?誰かしら。クロノでもないしグロスでもないわね?もしかして話に聞いていたソラちゃんかしら?」
ちゃん付けかー。まあ、パイセンだし仕方ないか。
「はい。ソラと言います。貴女と同じく風の精霊で、異精霊化して元に戻りました。創造神になった後どうなるのか確かめるため、参りました。神精石になった感じはどうですか?それによっては創造神になるかどうか判断したいと思っています」
「あらあら、ソラちゃんも私と話すことが出来るのね!そうね~、相性の合う誰かに魔力を込めてもらえない限り、意識もないし話も出来ないって感じかしら。外を見られれば楽なんだけど、クロノもグロスちゃんも最近は全然話し相手になってくれないから知りたいことが一杯あるのよね~。ソラちゃんはグランちゃんやリオンちゃんとその弟か妹をご存じかしら?」
魔力を込められない限り寝てるような状態ってことか?グランとリオンは知っているみたいだけど、エレナのことは知らないみたいだ。
「妹のエレナのことですか?今はこの村に来てアマキの人達に魔力操作の指導を受けているところですよ」
「あらあら、妹ちゃんでエレナちゃんって言うのね!外見はクロノに似ているのかしら?それともお相手のグレアちゃん似なのかしら?それにグランちゃんとリオンちゃんは今は大きくなってどうしてるのかしら?聞きたいことがたくさんあるわ。クロノはどうしてる?ちゃんと食べて元気にやってる?人外戦争で仲間をたくさん亡くしちゃって、私が異精霊化を治している間はずっと消沈していたの。グレアちゃんが食事を運んできて一緒に話している時は笑っていたけど、私はそれが空笑いだって分かっていたの。グレアちゃんはどうやらクロノに一目惚れしちゃったみたいで初々しかったわ~。食事を持ってくる度にクロノの気を引こうと必死になっていて可愛かったものよ。それにグレアちゃんには釣り合うお相手がいないって話になってね。クロノが折れてグレアちゃんとの間にグランちゃんとリオンちゃんが生まれたの!あのときはまだまだちっちゃくて私でも簡単に持ててね。とても可愛かったわ~。でもグレアちゃんに三人目の子供がお腹にいるときに私の異精霊化が治っちゃってね。結局三人目の子供を見る前に帰ってきちゃって、そのあと創造神になっちゃったから会えなかったのよね~。グランちゃんとリオンちゃん、それにエレナちゃんだっけ?この目で見てみたいわ~。そうそう、グロスちゃんはどう?大きくなってクロスに似てきたかしら?ってそういえば、ソラちゃんはクロスを知らなかったわね。ああ~、外の景色を見てみたいわ~。そうでなければこんなに聞きたいことなんてないのに~……」
うわ~、めっちゃマシンガントークで質問してくる。しかもクロノとグレアの馴れ初めも暴露してるし、クロノが話したがらないわけだ。グロスも同じ理由で避けてるに違いない。俺も将来こうなる可能性があるのか?この状態になるのは嫌だな。せめて見聞き出来て少し動けるなら別だけど…。
「えーっと、外の光景が見えるように色々試行錯誤したりしてもらったことはないのですか?自分も将来エリーゼさんのような状態になるかと思うと、創造神になる決心がつかないのですが…」
「魔剣に嵌め込まれた後は、何もしてないと思うわ。それより外の光景が見えるように出来るのかしら?ソラちゃんには何かアイディアがあるの!!」
正直、ゴーレムやドールみたいな魔導具を作って、それに神精石を付ければいけないかな~とは思ってる。試してみないと分からないけど、ガイアス達にお願いすれば手伝ってくれると思う。
「人工的に作った石造のゴーレムや木を使ったドールみたいな魔導具を作って、それに神精石を嵌めたらどうなるか試したいとは思ってます。クロノさんの協力は必要ですが、出来ると思いますか?」
「それは難しいと思うわ。魔剣に私を嵌め込んだ後、くっついて取れなくなったって言ってたもの。無理に外そうとすればどうなるか分からないからクロノは了承しないと思うわ」
なるほど、神精石は魔剣から外せないと、でも神精石はむき出しになっている部分があるのだ。やりようはあると思う。
「でも神精石がむき出しの部分があるので可能性はあると思います。知り合いに腕の良いドワーフがいるので協力すれば希望はあるかと思います」
「ほんと!それじゃ試してもらおうかしら!クロノに変わって!私が説得してみせるわ!」
ふう、魔剣に嵌め込まれた神精石から手を離すと精神的に疲れたように感じた。話し好きなおばあちゃんに絡まれた感じである。
「クロノさん、エリーゼさんがお話したいことがあるって言ってます」
クロノは少し眉をひそめる。エリーゼの質問攻めに気が引けるのだろう。恐る恐るだが、魔剣に嵌め込まれている神精石に手を延ばす。
クロノの顔が徐々に険しい表情になっていくのが分かる。多分、魔導具を作る許可以外のことも、ここぞとばかりに聞かれているのだろう。
クロノが神精石から手を離すと深い溜息を吐いた後、口を開いた。
「話は分かった。許可は出してもいい。だが、ソラではこの魔剣は持てまい。どうする気だ?」
「自分では持てなくてもエレナがいるので大丈夫だと思います。魔導具に関しては自分の住んでいる森にいるドワーフに詳しい人がいるので、その人と研究しようと考えています」
「なるほどな、だが問題がある。そんな面白そうなことをマーヤが知れば間違いなく付いて行くに違いない。この魔剣はかなり頑丈なので壊れることはないだろうが、心配にはなる。どうしたものか…」
クロノと話し合っていると、グロスが話に割り込んできた。
「噂をすればといいますか、マーヤがソラを探しに家に来ています。玄関で待たせていますが、どうやら飛行機?とやらについて色々聞きたいことがあるようです。それと残念なことですが、ユーキが一緒にいるせいか今の話を聞かれてしまったようです。マーヤが目をキラキラさせていましたよ…」
タイミング悪くマーヤがクロノの家を訪ねてきてしまったらしい。ユーキは獣人の血が混ざってる。耳が良いに違いない。
クロノは溜息を吐きながら「バレたものは仕方ない。マーヤを少しの間、この村から遠ざけることが出来ると思えば、悪いことはない。ソラ、魔剣は託す。くれぐれも丁重に扱ってほしい。帰る頃になったらまた訪ねてくれ」と俺を玄関へと送り出そうとする。
俺にマーヤの相手をしろと?それに帰るとリン、エレナ、マーヤというトラブルメーカートリオが結成されかねない。会わせたら危険な匂いがプンプンする。どうしていく先々の問題児が俺に絡んでくるのだろうか?前世の知識を披露しすぎたか…。
己の行動に反省しつつ、俺は玄関へと向かった。そこにはマーヤが仁王立ちで立っており、目をキラキラさせながら尻尾をぶんぶんと振っていた。




