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ドワーフ村へ案内

 朝になると、いの一番にマシロが起きて朝食の準備を始めた。他の人達はまだ熟睡中である。


 マシロが朝食の準備を終える頃には、匂いに釣られたのかリンを始め、次々と起き始めた。


 朝食は簡単にパンに鳥肉と卵焼きを挟み、マヨネーズをかけたサンドイッチだった。お手軽なのにとても美味しいみたいだ。グレアの尻尾がブンブンと左右に揺れていることから見て取れる。こういうところはエレナにそっくりだ。まあ、母親だからエレナが似ているのだろうが…。


 朝食を終える頃、コンコンと玄関をノックする音が聞こえてきた。玄関を開けると、そこにはティアとケイティが立っていた。


「リンお姉様、綺麗な魔族の女性がいらしていると聞いています。ドワーフの村へ行くなら、ぜひお供させてください。その女性にあった衣装を私が見繕って差し上げましょう!お化粧もしたいです!!」


 ティアがグレアに視線を向けながらフンスフンスと鼻息を荒くして興奮している。尻尾の生えた珍しい人なので、体に合う衣装を作ってみたいんだそうだ。エレナのときは急ごしらえでサイズの合う服を提供しただけだったのでモヤモヤしていたらしい。


「あの子はわらわを見ているが、何か用でもあるのかぇ?」


「あぁ、グレアに合う服を作ってみたいんだと、グレアは美しいからお化粧もしてみたいらしい。興味があるならやってみますか?」


 グレアの目がキラキラと乙女のような表情になった。どうやら興味津々のようだ。


「うむ、お願いしよう。エレナの着ていた服はわらわには小さくて着れそうになかったからの。わらわのサイズに合った服を作ってもらえるのは助かる。それに人間のお化粧の仕方にも興味がある、教えてもらえるかえ?」


「グレアはお願いしたいってさ、人間のお化粧も教えて欲しいって言ってる。頼めるかな?」


「喜んで!さあ、リンお姉様、ケイティ、ドワーフの村へ行きましょう!」


 こうしてティアとケイティの案内の元、俺、リン、マシロ、グレア、ドランのメンツでドワーフの村へ行くことになった。


 ドワーフの村へ着くと、ガイアスとミカが出迎えてくれた。トレント経由で話が伝わっていたらしく、待っていてくれていたようだ。


「やぁ、ソラ、久しぶりだね~。聞いていた通り見た目が変わっているね。それでも中身は変わっていないようで何よりだったよ。ここから女性達はあたしが案内するから男性はガイアスに案内してもらいな、ではいこうかね」


 ミカが、女性陣を連れて村の中へと案内していく。マシロがいるから通訳は大丈夫そうだ。


 残された俺とドランはガイアスに連れられて、まずは滑走路へと案内された。


 滑走路には飛行機がズラリと並んでいた。そういえば前の飛行機と大分作りが違っているように見える。どのような魔改造を施したのだろうか?


「ソラは知っていると思うが、これが新しい飛行機だ。マナタービンエンジンという魔導具が組み込まれている。そのおかげでペダルを漕ぐ必要がなくなった。代わりに魔力を消費するようになったがな」


 話を聞くに、どうやら俺の世界にあるガスタービンエンジンやジェットエンジンに近いものを作ったらしい。魔石に込めた魔力で火を発生させ、膨張した空気の圧力でタービンが回転してプロペラが回る仕組みのようだ。


 元々は人間が使っていた蠍の兵器「スコルピオン」という動力を解析して作り上げたらしい。ただ、魔素を吸収する装置は絶対作らないようにと上位精霊や妖精達に釘を刺されたようだ。


「これで人間達が来ても上空から偵察が出来るようになったのだ。武装はないので攻撃が出来ないのが難点だが、付けると重くなるし魔力もその分必要になるからまだまだ改善の余地がある。そこはおいおい詰めていこうと思っている」


 おいおい、この時代に戦闘機を作る気か!どんだけ産業革命を起こそうとしてるんだ。いや、飛行船にバリスタを搭載させた俺が言うべきことじゃないな。


 ドランは目を輝かせて「ソラ様!あの飛行機とやらに私も乗ってみたいです。いいでしょうか!?」と懇願している。


「ガイアス、ドランが飛行機に乗ってみたいらしいんだけどいいかな?」


「おう、二人乗りだから乗れるぞ!ワシが運転をしてやろう。ついてこい!」


 飛行機に案内され、ガイアスが操縦席に、ドランが後部座席に乗り込もうとする。


 しかし、ドランの体、特にお尻がでかすぎて座席に入らなかった…。ドランは膝から崩れ落ち、号泣している。大の大人が泣くなんて余程のことだ。相当落ち込んでいるようだ。


「…まあ、そうだな…。一機くらい大きめの席を作っておこう。それまで我慢してくれないか?」


 座席の改善がされると聞いたドランは、涙を流しながらガイアスの手を取り「ありがとうございます。出来たら乗せてください!」と感謝していた。


「次は鍛冶場へ行くか、この時間なら昼食に近いし、職人達も少なくて鍛冶場も空いているだろう」


 ガイアスの案内の元、次は鍛冶場へ行くことになった。


 鍛冶場に着くと、鍛冶場も一部木造に変わっていた。煙突部分だけが石造りのままとなっている。


 中に入ると、職人が誰一人いなかった。昼食にでも行っているのだろうか?


「誰もいないとは珍しいな。まあいい。これでゆっくりドランにワシらの鍛冶がどういうものか見せることが出来る」


 まず、ガイアスは鉱石を窯に入れ、溶かし始めた。続けて溶けてドロドロになった赤い鉱物を取り出し、折りたたみながら金槌で叩いていく。鉱物を金槌で叩くたびに火花が散る。確か俺のいた世界ではこれで不純物を飛ばして金属の純度を高めていっていたはずだ。


 金槌で叩いては金属を折りたたみ、硬くなってきたら再度窯に入れて柔らかくし、また金槌で叩いていく。それを繰り返していくと銀色に光る金属が見る見るうちに出来上がっていった。


 最後に金槌で形を成形し、砥石で磨けば包丁が出来上がった。どうやら簡単に作れる包丁の作り方を見せていたようだ。


「これがワシらが作る包丁だ。切れ味も良いし、折れにくい。ドランからみてどう思った?」


「ドワーフ達はこのようにして金属を加工するのですね。私達とは全然工程が違います。申し訳ありませんが、鉱物を少しお借りしても宜しいでしょうか?」


「うむ、お手並み拝見と行こうか」


 ドランは手渡された鉱石を岩魔法で金属だけ取り出し、金属の板を作り出す。そして手で強引に成型し、最後に砥石で磨けばあっという間に包丁が出来上がった。物凄い速さである。見ていたガイアスも驚いた表情で口があんぐりと開いてしまっている。


「全然工程が違うな。ただ見た目は同じに見えるが、質が違うように見える。少し試してみよう」


 ガイアスは二つの包丁を金属の棒で叩いて音の響きを聞き比べた。ガイアスの作った包丁はキィーンと高く長く響いているのに対し、ドランの作った包丁はガァインと低く短い。見た目は似ていても質が全然違うようだ。


「なるほど、このようにして質の違いを確かめることが出来るのですね。私のは早い分、質が悪いようだ。でもアイスヘブンでは困っていることはないので、ドワーフのやり方を取り入れるのは難しそうですね」


 ドランはガイアスのやり方を見習って、包丁を作ってみようと試みたが、力の加減が出来なくてドロドロの金属が飛び散り、鉄床にヒビが入ってしまった。


 ドランは「申し訳ありません、鉄床を壊すつもりはなかったのです」と謝罪する。


「ガッハッハッハ、なるほどな。ワシらより力や魔力がありすぎるようだな。これじゃワシらのやり方は合わないな。鉄床は壊れることがあるのでいっぱいある。気にすることない。だが、これで互いの鍛冶の文化が知れて良かった。礼を言わせてもらおう」


 ガイアスはドランに手を伸ばして握手して「お互いの文化を尊重しよう」と話をまとめた。


「さて、他に何を見せたらいいものか。ソラ、お主は何か思い当たることはあるか?」


 う~ん、そういえば魔導具の種類がどれだけあるか知りたい気がする。飛行機のマナタービンエンジンは知らなかったし…。


「魔導具はどんなものが作ってあるんだ?マナタービンエンジンにコンロ、洗濯機の他に何かあったりするのか?」


「あぁ、あとは冷蔵庫だな。必要な魔力が多くて酒場にしか置いてないんだが、これから酒場へ行こうか。丁度昼食が終わる頃で人もまばらだろう」


 俺とドランは同意し、ガイアスに連れられて酒場へと向かった。道中、ドワーフの人達の姿が全然見当たらない。何かおかしい気がする。


 酒場に着くと、ティアとケイティが扉の前で困惑した表情で待っていた。何かあったのだろうか?


「ソラ様、お待ちしておりました。申し訳ありませんが、グレア様をどうにかしていただけないでしょうか?酒場の中は酷い有り様になっております」


 何やら嫌な予感がする。俺とガイアス、ドランが酒場の中に入ってみると、中は死屍累々といった有り様でドワーフの人達が男女問わず倒れていた。その中にリンも混ざっている。


 酒場の中央ではお酒をグビグビと呷るグレアと顔を真っ赤にし、今にも倒れそうなミカがいた。マシロは止めようにもグレアとミカの勢いに押され、仕方なくお酒を注いでいるようだ。


 ドランは周囲を見て、状況を察したようだ。


「あぁ、そういうことでしたか、女王様はお酒で酔ったところを見たことがありません。女王様に飲み比べを挑んでこの有り様なようですね」


 どうやら倒れている人達は酔いつぶれているようだ。最後の砦のミカもあの状態だ。飲み比べはグレアの圧勝みたいだ。


「ガイアスも挑戦してみるか?」


「冗談をいうな!この状況を見て勝負しようとは思わん。ミカはワシよりも酒に強いのだぞ!」


 俺はお酒を注いでいるマシロに視線を向けて、頭を横に振る。流石にマシロもそろそろやめた方が良いと思っていたのだろう。首を縦に振って同意してくれた。


 グレアは戦闘力だけでなく、鋼の肝臓も持っているようだ。グレアに勝てる人はこの世に存在するのだろうか…。


 結局、この有り様なので昼食はマシロが作ってくれた。冷蔵庫の説明も皆が立ち直るまで後まわしになった。

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