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教皇の異世界物語  作者: しらす御飯
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テンプレな展開と葛藤

年内はあと一回の投稿とします。

 幾ら何でも、ここ冒険者ギルドでは争いごとを起こすことはないであろう。


 ーーーと思っていた俺が馬鹿だったよ。


 目の前にいるこいつは俺を脅しているだけではない。


 スキル「敵意感知イービルセンス」で解る。


 こいつは公衆の面前で俺を物理的に潰すつもりだ


 間違いない。


「おい、何とかいったらどうだ?ビビってんのか?」


 そんな風に気持ち悪い笑みを浮かべながら俺をジロリと見下ろす大男。


 違う。


 断じて違う。


 いや、


 確かにビビっているといえばそうかも知れないが


 お前のせいで目立ってしまうことにビビっているんだ。


 いかんいかん


 気をしっかり保て。


 とりあえず目の前の馬鹿を説得しよう。

 無理なら力押しで。


「俺があなたの気に障るようなことを何かしましたか?」


「・・・そう、それだ」


「・・・はい?」


「・・・その態度が気に食わねぇんだよ!!」


「は?」


 俺が唖然とした態度を見せると、今が脅し所と思ったのかダンッ、と足踏みをし俺を睨む視線を強める大男


「お前最近調子に乗っているんじゃねえのかぁ?」


 と、俺の背後をちらりと見て言う。


 一瞬奴が見たのは受付だ。


 あ。


 そうか。


 もしかしたらこいつは受付嬢に良いところを見せたいだけの正真正銘の馬鹿なのかな。


 いや、奴自身それで良いところを見せているつもりなのだろうか。


 ・・・ギルド側からは迷惑でしかないような気がするのだが。


「先輩のそういう忠告は有り難く聞いて置くもんだぜ。なあ・・・後輩」


「・・・今後から気をつけます」


 言っていることは良く解らないし理解したくもないが

 こういうのは下手に刺激しない方がいい筈だ

 奴の自己満足を叶えてやるために俺が下手に出る方法で。


 この対応でいいはずだ。


「あぁ?」


 と言う素っ頓狂とも威嚇にも聞こえる声を上げた大男。


 男の怒りが一気に沸点に達したようだった


 一体何が気に食わなかったのか


 何か変なこといったか?俺。


 こういう輩は何が言いたいのか良く解らん。


「ふざけんなよ・・・てめぇ」


 ふざけているつもりなど無い。


 とりあえずこの遣り取りはここでは目立つ。

 やめてほしい

 早く解放してくれないだろうか。


 と俺がキョロキョロと周りを気にするように見ると


「てめえ・・・!」


 拳を硬く握りしめ今にも得物を抜かんとする大男


「あの小僧やっちまったな」


「可哀想に」


 と言う野次馬の声が俺の耳に入ってくる。


 俺が何をしたというのか。


 波風立てずになるべく平穏に過ごしたいのだが

 どうしてこんな事に。


 とりあえずお互いのためにこれだけは言わなければならない。


「ギルドでは暴力は御法度ですよ」


 という俺の忠告が引き金となったのか


「なめんじゃねぇ!!」


 ーーー大男が飛びかかってこようとする


 が。


「そこまで」


 という制止の声に大男は立ち止まる。


 慣れ親しんだ声だ。


 その声の主は俺を一瞥した後男に向き直り


「その人の仰るとおりギルドで血傷沙汰は御法度ですよ」


 俺は声のした方向を振り向くとそこには予想通りポアルがいた。


 ポアルは男に向かってにこやかに笑いながら


「ギルドの規律を乱す者がどうなるか。貴方は知らないわけではないでしょう?」


「・・・チッ」


 俺を睨みつけ


「覚悟しとけよ」


 と言うと悪態を付き俺を睨みながら大男は去っていった。


 意外とアッサリ引き下がるんだな。


 本当に奴は俺が目に付いたから絡んできただけなのか解らないが。


 背中に気をつけなきゃな。















 ーーーーーーーーーー

















 その後俺はポアルから説教を受けた。


 恐らく、言ったそばからああいう奴に絡まれたのが気に食わなかったのだろう。


 とりあえずここは彼女の言いたいことを言わせる

 それでしかこの長い説教は終わらない。

 俺が下手に何か言っても説教が返ってくるという或る意味無限ループになってしまうからだ。


 黙して待つ。


「ほんとに反省しているんですか?」


「してます」


「なら良し」


 ニコリと笑うポアル。


 やっと解放された・・・


 言いようのない疲労感があり体が重く感じる。


 ギルドでは今後気を付けねば。

 もう説教は勘弁して貰いたいものだ。


 そんな俺の態度をを見て

 はぁ、と彼女は溜息を付き


「こちら側もそういった荒事に目を光らせてはいますが、あくまで目の届く範囲であることと今みたいに現場を押さえなければ立証が出来ないこともあります」


 そう言葉を区切り彼女は俺をじっと見る。


「本当に気を付けて下さい」


 そう言う彼女の表情はとても不安そうだ。


 ふん。


 俺は多分心配ないよ、ポアル。


 心配するなら相手の方だな。
















 ーーーーーーーーーー














 斯く斯く然々。


 今、俺はEランクになるための昇格依頼を受けている。


 といっても偶々この依頼がFランク最後の依頼だということだがこれを達成した後俺はようやくEランクの依頼を受けれるようになる。


 Eランクになってもやることは余り変わらない。

 一人前の冒険者になるための下積みだ。


 強いて言うならFランクと異なる点は討伐依頼が加わることだ。


 とはいっても小鬼ゴブリン程度が最高なのだが。


 昼間にはあんな事があったので作業中にも一応警戒していたが

 一向に襲ってくる気配はない。


 まあ襲ってこないならばそれはそれで万々歳なのだが

 警戒するのがあまり必要ではない街中で気を張っている俺の身になって欲しい。


「ーーーっと」


 ドスンと俺の身長ほど有りそうな大きな荷物を置く。


「それで最後だよ」


 俺の横からおっさんの声が掛かる。


 このおっさんは依頼人。

 依頼は馬車に重い荷物を積み込むための手伝いだ


「ご苦労様、本当に助かったよ」


 ポンと俺の肩に手を置き


「・・・しっかしぱっと見こういう力仕事に向かないような体つきなのに・・・人は見かけによらないもんだなぁ」


 と、俺の腕を掴む。


 確かにこのおっさんの言うとおり俺の腕力は傍目には不自然に映るだろう。


 100キロ近くは有りそうな荷物を軽々と持ち上げる青年。


 この見た目は力自慢の大男のような体躯をしている訳でもない。


 レベルが100だから筋力が他の奴らとはかけ離れているんです、と言っても意味不明だし化け物みたいに思われるだろう。


 だから俺は嘘で押し通している。


「実は筋力を強化するスキルを使っているんですよ」


 大体俺がこう説明すると相手は驚いたり感心したりする反応を見せ、納得してくれる。


 スキル様々だ。

















 ーーーーーーーーーー
















 一仕事終えた俺は冒険者ギルドへ向かう。


 これでEランクだ。


 初めてのEランク依頼は3匹の子鬼ゴブリン討伐に決めた。


 さほど難しい依頼ではなく冒険者ではない大の大人でも一匹なら倒せる相手である。


 だが、俺の気分は乗らない。


 いっそ同ランクである他の大蜂ホーネットウルフの討伐に変えてしまおうか。


 しかし報酬は小鬼ゴブリンの方が明らかに良い。


 やはりこれにするか。


 俺が小鬼ゴブリン討伐を避けている理由としては奴らがが怖い訳とかそういう訳ではない。


 薬草や解毒草やらを摘みに行く依頼で小鬼ゴブリンに遭遇したが特に恐怖など感じる相手じゃない。


 ・・・ただ


 何となく嫌だ。

















 ーーーーーーーーーー
















 そう、


 それは6日前。


 色々、スキルを魔物モンスターで色々実験し確認しながら探索していた時だ。


 薬草採取依頼を受けた俺が周囲を「感知サーチ」で警戒しつつ森を進んでいると数匹の魔物を感知した。


 ロイネリアの街近辺にあるアカルナの森は魔物モンスターが定期的に駆逐されていると言うことが分かり目的の魔物を探すにはこの「感知サーチ」スキルがなければ大変そうだった。


 俺のこの「感知サーチ」スキルでも半径300m前後は把握できるので警戒にはこれで十分だ。


 そして、隠密用スキル「姿隠し」を使い気配を消し小鬼ゴブリン達に悟られないように遠目から視認するところまで近づく。


 ついでに説明するならばこの「姿隠し」は「感知サーチ」や魔物モンスターの探知に引っかからないようにするためのものであり、本来盗賊シーフが持っているスキルであるが、この程度の低ランクのスキルならば巻物を使って獲得できる。


 巻物スクロールは一回使いきりの者や数回使ったら無くなるもの、永久的に使える物があるが、俺の持ってる「姿隠し」の巻物は同じ巻物でも品質が最高級の物であり、その効果も他の物とは持続時間が長いし高い隠蔽度をを誇る。


 しかも永久的に使えるようになっている。


 そんな最高級の品質であるがこの程度の巻物でここら辺一帯に完全に通用してしまうのが或る意味恐ろしい。


 他の大蜂ホーネットウルフなどの魔物モンスターには相当近くまで接近しなければ気づかれることはなかったのだ。


 それこそ触れられるぐらいに。


 今回は小鬼ゴブリンでもそうなるかという実験だ。


 薬草を摘みにこの森に来たのだから本来は無視しても良かったのだが、このときの俺は色々見てみたいという興味本位で近づく。


 森の茂みからこっそり覗くと十数メートル先に4匹の子鬼ゴブリンがいた。


 実は初遭遇である小鬼ゴブリン


 「姿隠し」のお陰でまだ気付いていないようだ。


 小鬼ゴブリンの背は150㎝程だろうか


 どれも体格に大差がない。


 緑色の体皮に粗末な布のような物を着ていて醜悪な顔立ちをしていて4匹とも棍棒を持っている。


 何やら訳の分からぬ言葉で互いに話し合っているように思えるが、当然俺に小鬼ゴブリンの言語は判らない。


 ちょっと驚かしてやるか。


 俺は雑魚同然の子鬼ゴブリンに驚かしたくなって辺りに人が居ないことを確認して奴らの目の前に飛び出た。


「ギギッ!!」


「ギガッ!!」


 奴らは俺の突然の出現に驚きながら身構えた。


 (此処まで接近しないと気づかないか・・・)


 小鬼ゴブリンにも通用した。


 だが、それは数瞬の後


 俺の姿を視認すると4匹とも嫌らしい笑みを浮かべた。


 こいつらの笑みは俺を格下だと思い侮っている顔だ。


 これって・・・


「俺ってそんな弱そうに見えるのかな・・・」


 思わず俺は呟く。


 雑魚中の雑魚である小鬼ゴブリンに馬鹿にされる俺。


 思わずがっくりと肩を落としてしまう


 ーーーしかしそれは大きな隙となる。


 そんな渡の姿を見て諦めだとも絶望だとも思った子鬼ゴブリン達は嬉々として飛び掛かってきた















 ーーーーーーーーーー
















「ギギーッ!!」


 彼は歓喜していた。


 黒いローブを着た身形の良さそうな獲物が自分たちの前に現れたことを。


 突然何かが現れたのには驚いた。


 しかしよく見れば貧弱そうな奴ではないか


 そして今目の前にいる獲物はこの状況に絶望しているのか

 隙だらけだ。


 狩ることは容易い。


 彼は獲物の頭めがけて木製バット程の棍棒を振り下ろす。


 これを喰らえば死ぬとまではいかないものの気を失ってしまうだろう。


 そうなれば、他の奴らと一緒にタコ殴りにして新鮮なミンチの出来上がりだ。


 ボガッ


 鈍い音が彼の耳に入り

 棍棒を握る手には確かな感触が感じられる。


 彼の渾身の一撃が奴の頭にクリーンヒットした。


 二ヤァ、と彼は醜悪な笑みを浮かべる。


 決まった!


 これで奴は気を失う。


 哀れな奴だ。


 自分たちの目の前に現れなければこうなら無かっただろうに。


 死体は剥ぎ取って自分たちの巣に戻ってからじっくり食ってやろう。


 欲を言えば雌であって欲しい。


 彼はそう思った。


 しかし、


 その思考は途切れた。


 倒れない。


 何故?不思議に思ったのも束の間。


「やはりこんな攻撃じゃダメージは入らないよな・・・」


 と呟く目の前の獲物。


 気を失っていない!?


 それどころか何でもなかったように何かを呟く目の前の存在に驚愕していた。


 何をいっているのかは解らなかったが

 呆れとも取れる感情を浮かべているであろうことは彼にも理解できた。


「ギーガッ!!」


「ギギィ!!」


 しかしこんなことでは彼らは逃げない。


 当たり所が偶々良かっただけだ。


 きっとこいつはやせ我慢しているのだ。


 それにこちらは4匹いる。


 4対1だ。


 こんな俺達よりも貧弱そうな奴にやられるはずはない。


 4匹は一人にに対して集中攻撃を浴びせる

 ーーーといっても棍棒で袋叩きにしているだけなのだが。


 連続で鈍い音が辺りに響く。


 響く。


 響く。


 倒れない。


 それよりも彼らにとって衝撃的なのは


 ーーーあれだけ叩かれたにも関わらず目の前の奴には怪我どころか服が汚れた跡さえ見られない。


 4匹の彼ら達は悟る。


 目の前の奴は貧弱な獲物じゃない。


 得体の知れない化け物だ。


 そう理解した彼らは立ちすくむ。


「そろそろこっちからいくぞ?」


 目の前の化け物はニヤリと口元を歪める。


 何を言っているのかは分からない。


 しかし漠然と


 ただ


 怖い。


 怖い。


 目の前の存在に恐怖することしか頭になかった。


 彼らが今考えていることは同じことだ。


「ガーガッ!!」


「ガーアッ!!」


 脂汗を飛ばしながら手汗で滑る棍棒を放り捨て彼らは背中を向け全力で逃走を試みる


 が。


 自分の背に一瞬熱いものーーーいや、ぞっとする程とても冷たいものを感じ


 強烈な痛みとともに何が起こったのか解らないまま

 地面に自分の体は崩れ落ち


 視界の端に映る自らの大量の血とその匂いに死を感じながら


 彼の意識はそこで途切れた。















 ーーーーーーーーーー















「うわ・・・グロいな」


 自分がやったことなのにそんなことを呟く。


 しかし、俺は率直にこの4匹の小鬼ゴブリンの死体を眺めながら、この状況に多少でも何か思うところがある自分について考えていた。


 奴らの背中には大きな氷柱が深く突き刺さっている。


 この氷柱は俺の魔術師スキル「氷矢アイスアロー」であり、ランクは2と低級のスキルである。


「・・・他の魔物モンスターを殺したときは平気なのにな」


 大蜂ホーネットウルフも殺したが、この小鬼ゴブリンを殺した時の様な感情は湧いてこない。


 少しだけ


 本当に少しだけだが罪悪感のような、胸にチクりと刺すような気分になるのだ。


 俺のアバターが膨大な精神値を有していてもこういうのは無理か。


 だが、状態異常になったり吐き気を催すには程遠い。


「・・・都合が良いな。俺は」


 人型ではない魔物モンスターは幾ら殺しても平気。


 人型の魔物モンスターは殺すと気分が悪い。


 甘い。


 ここはもう日本ではない。


 魔物モンスターが徘徊する森だ。


 小鬼ゴブリン達を痕跡を残さない程「灼熱バーンアウト」で手早く処理しながら


 俺は自嘲気味にそう思った。







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