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教皇の異世界物語  作者: しらす御飯
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色々慣れてはきたけれど

連投。

 窓から入り込む日差しが眩しい。


 本日も快晴だ。


 ごそごそとやや硬い木のベッドで目を覚まし軽いストレッチをする。


 俺がこのロイネリアの街に来てから1週間ほど経過していた。


 その間にあったことを簡潔に一言で纏めるとこうだ。


 依頼を受けることにひたすら打ち込んだ。


 選り好みせず勤勉で素早く確実な俺の仕事ぶりは中々ギルドと依頼者からの評判が高いようだった。


 俺を指名してくる依頼も幾つかある。


 まあFランク限定での話だが。


 ーーー時々ギルドで出会うマーク達とはよく話したり、それ以外での知り合いもそれなりにいる。


 そうなってくると周りの目が気になり俺の立場がどうなってくるのか気になる所だろうが


 心配ご無用。


 何も問題はない。


 俺に茶々を入れてくるような奴がいないのは俺の立ち回りの賜物だろう


 現代社会で鍛えられた俺の一つのスキルといってもいい位だ。


 部屋を出て階段を下りながら今日の予定を考える


 と、そこで見知っている人物を見かけた。


「おはようございます、エメリさん」


「・・・・ん?・・・・ああ、おはよー」


 ゆったりとした動きで掃除用具を運んでいる女の人がいる。


 髪は寝癖を直していないのか元々そうなのかボサボサ、栗色のショートヘアに眠たげな目で俺に返事を返すこの女の人はエメリさん。


 俺の下宿しているこの宿「海月」の経営者の一人である


 この宿はお勧めの宿としてギルドのある受付嬢から教えて貰った。


 一泊の値段が平均程度よりやや安いし料理が美味く過ごしやすい宿という話でこの街に来てからお世話になっている。


「丁度良いところに起きて来たねー。手伝ってよ」


 とこの宿に泊まり続けてから毎日この様な冗談か解らないようなことを言う人だ。


「・・・勘弁して下さいよ、俺は毎日荷物運びだったり重労働な依頼が多い新人の冒険者なんですから。・・・それに客にそう言うこというのおかしいですよね?」


「あははは、でもそうは言っていても疲れてるようには見えないんだけどねー」


 むっ、鋭い。


 この人の言っていることは実際本当だ。


 ーーー俺の基礎能力が高いせいかどんなに動いてもぜんぜん疲れない


 普通大人二人が力を合わせて運べるような荷物を運ぶどころか片手でも余裕だったほどだ。


 そう考えると俺の肉体能力は尋常じゃ無いのかも知れない。


 近接戦闘向きな脳筋じゃないのだが・・・


(まあ、いいか)


 エメリさんに「朝食できてるよー」と言われて食堂に向かう俺。


 食堂にはいるとそれなりに人がいる。


 冒険者だか解らないが朝から酒を煽っている奴が数人いた。


 朝っぱらからそんな状態で大丈夫か?


 そんな奴らを横目に見つつ端の席に座る俺

 他の人に取られてなければここの席が俺の定位置だ。


 席に着くと程なくして茶色の短髪な表情の厳つい大男が近づいてくる。


 俺と目が合うなり二カッと笑う。


 ちょっと怖い。


「今日も美味いぞ。特にこのスープは自信作だ」


 と言いながら机の上に焼きたてのパンとスープを置いていくこの男の人の名前はトムさん。


「海月」の料理人兼宿主だ。


 ちなみに先程のエメリさんはトムさんの娘らしい。


 奥さんはどうしたのかと思ったが、俺が聞くまでもなく「逃げられた」と言い盛大に笑うようなことがあった。


 いや、笑うところじゃないのだが。


 奥さんに逃げられてからはこの宿を二人で切り盛りしているらしく雇い人などはいない。


 何でも無駄な経費がかかるから人は雇えないのだそうだ


 しかしそれにしたってたった二人だけでこの宿を経営していくのは大変だろう。


「どうした?暖かいうちに食えよ?」


「あ、はい、頂きます」


 俺はさっとスープを口に含む。


 うん。


 美味い。


 そんな満足そうな表情を俺は浮かべていたのかトムさんはそれを確認すると厨房の方へと戻っていった。


 トムさんは元冒険者で何というか鍛えられた体つきをしている大男だ。


 そのような人が何故この様な美味いものを作れるのか不思議だった。


 何かの料理スキルでも持っているのだろうか?


 それにしても人は見かけによらないとつくづく感じる。


「俺も自分のことは言えないか・・・」


 と朝から周りの騒がしい中、黙々と食事を続ける渡であった。















 ーーーーーーーーーー















 朝食を終えた俺はエメリさんに軽く挨拶をして宿を出る。


 向かう場所は冒険者ギルド


 俺の日課だ。


 一週間の間依頼を沢山こなしたとはいえ俺は未だFランク

 貰える報酬の金額などたがが知れている。


 そのため今宿泊している宿の代金を支払ったり、この街の名物を食べ歩いたりしているうちに俺の所持金が減っていく。


 ーーーこの世界にきて自分は結構金遣いが荒いということが判明してしまったがそれは良いとしよう。


 元々大した額を持っている訳ではないので毎日冒険者ギルドで街の活動に貢献すべく俺は依頼を受注する。


 決して嫌なわけではないよ?


 これは労働を美徳とし怠惰を罪とする日本人としての性なのか・・・


 そんなことを考えているうちに冒険者ギルドに到着する。


 扉を開けるといつもの風景。


 しかし、こう周りの奴らを見ていると暑苦しいと感じる。


 男ばかりだしな。


 冒険者には女性が少なく、ギルドに屯したがらない。

 そんな男冒険者の心を癒してくれるのが受付嬢だ。


 俺も最近仲良くなった受付嬢がいる。


 まあ、仲良くなったは勘違いかも知れないが


 そうして、窓口に向かうと何時も通りのように


「あ、ワタルさん。今日も依頼ですか?」


「ああ、そんなところだ」


 輝いてみえる程の黄緑色の短髪を揺らし、俺に笑顔を向けてくる美人と言うよりは可愛いといった顔立ちの女性がそこにはいた。


 彼女の名前はポアル。

 このギルドの受付嬢の一人であり、俺の生活を支えている人物といっても過言ではない。


 なぜなら今の俺のランクの中で割の良い依頼を紹介してくれたりするし、ときどき掲示板に貼っていないようなものまでこの受付嬢は融通してくれたりする。


 そんなことやって大丈夫か?と俺はちょっとだけ心配だ。


「そろそろこんな依頼はどうですか?」


 と唐突に俺に今回の依頼の話題を持ちかける彼女。


 いつものことなので俺は渡された用紙に目を通す。

 そして驚いた。


「え?」


 それは小鬼ゴブリン討伐依頼だった。


 小鬼ゴブリンはRPGで皆が想像する通り緑色の小さな人型の魔物モンスターである。


 奴らが魔物モンスターの雑魚中の雑魚で有るのはこの世界でも変わらないらしく、数の多い害獣として定期的に駆除されている。


 俺が驚いたのはこれがEランクの依頼であり、

 今のランクではこの依頼を受けることは出来ないということだ。


「ポアル・・・俺のランク知ってるよね?」


 ボケているのかな?


「知ってますよ。最近凄い勢いで依頼をこなし、ランクがFランクでありながらもギルドと依頼人双方に定評がある期待の新人・・・ですよね」


 こともなげにさらりと答えるポアル。


「いや・・・そうじゃなくてだな・・・」


 俺は戸惑う。


 ほんとに解っていないのか?


 そんな俺の表情を見てをにひひ、とポアルが笑い


「冗談ですよ、確かにワタルさんのランクではまだこの依頼を受注できませんが・・・実は後一つ依頼をこなせばEランクへと昇格できるんですよ!」


「・・・そういうことか」


 ・・・よかった。

 てっきりポアルがボケてしまったのではないかと心配したよ


「それにしても・・・相当に速いペースですよこれ」


「そうなのか?」


「ええ、このまま順調に依頼をこなせば・・・いつの間にかワタルさんも一人前のDランクへと昇格しているのかもしれません」


「いつの間にかって・・・そんなに早いのか・・・」


 目立ったりしてないかな?

 今度からもっとゆっくり依頼を受けるようにしようか・・・


 ・・・いや、そうすると今、依頼を受けているこのスピードが普通な俺としてはこれからの冒険者ライフが窮屈になっていくかもな。


 俺がそんなことを考えていると


「ワタルさん!」


 とポアルの呼ぶ声。


「あ、ごめんごめん」


 と俺の軽い謝罪に

 ポアルは溜息混じりに


「ごめんごめん、じゃないですよ。・・・冒険者の中にはワタルさんのような新鋭の冒険者を潰そうとしてくる輩もいるんですから・・・気をつけて下さいよ?」


 新鋭って・・・


 ちょっとポアルさん。

 そんな大したことをやっている事はないと思うのだが・・・

 やはり困ったことに認知されてきているのか俺。


 しかしそうなってくると・・・


「穏やかじゃないな」


 気遣ってくれるのは有り難いよ。


 しかし、目立っているのか。


「ええ、気をつけて下さい。・・・ギルド側としては誰もやらないような低ランクの依頼を消化してくれる貴重な存在を失いたくはないので」


「それが本音か」


 俺は溜息を付く


 ちょっと感動して損したよ。


 それにしてもそんな奴らがいるのか。


 一応注意しておくか。


 寝込みを襲われたりしたら嫌だしな。


 彼女の有り難い忠告を聞いた後

 俺はさっさと依頼を決めてギルドを出る。


 ーーーつもりだったのだが


 これは一体どうしたことだ。


 いつも通り、俺はこの騒がしいギルドから出て行こうとする。


 しかし、その道を意図的に塞ぐように

 戦士風の厳つい顔をした大男が俺を睨むように立っているのだ。


 顔と額に横傷がある。


 そんな睨まれるようなことをした覚えはないのだが。


 ーーー俺は何気なく横を通り過ぎようようとするが


 肩を掴まれた。


 ゴツゴツとした手だ。


 その大男は低い声で威嚇するように俺に語りかけてくる


「先輩を無視しようとするなんて言い度胸じゃねぇか」


 さらに低い声で


「最近調子に乗っているみたいだなぁ?お前」


 それだけでこいつの目的は大体解る。


 ああ。


 やっぱりこうなるのか



 俺。






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