5月 体力測定
今日から数日は体育が体力測定の日だ。体力測定は、1日で終わらせるのは時間的にも体力的にも厳しい。だから数日かけてやるのだが、ああ言うのは雷麦とかトムとかがやるものであって、俺は正直やりたくないと思っていた。
「(´・ω・`)」
「ふふっ」
月にはウケた。まあ唐突だったからな。
「ガッハッハ!どうした龍!そんな顔して!」
「ああ、体力測定だと思うと憂鬱でな。」
「フフッ、龍さんは去年はどうだったンですカ?」
「うーん。一応Aだったんだが、こう言うのは雷麦が得意だからな。雷麦の去年の握力はな握力計をぶっ壊すぐらいだったんだぜ」
「わお!アンビリーバブル!私は去年40キロだったので今年はどのくらいになっているかタノシミですっ!」
トムは去年ギリギリAに届かなくて悔しかったのだろう。今年こそは!と意気込んでいた。
学校に着いてしまった。さて、やるか。
まず最初はハンドボール投げだ。俺の学校はハンドボール投げを校庭でやる。雷麦の影響でもある。
出席番号順に投げる。俺は前よりの真ん中ぐらいの番号だ。軽く腕を回して、準備運動をしてから投げる。
記録は……
「56メートル」
どよめきが起こる。基本的に30からどれだけ飛ばせても40いくつが限界だからだろう。俺に向けて疑いの視線を飛ばしてくる。なんでだよ。
そして、雷麦の出番になった。途端に、住民へ避難指示が出される。学校では耳栓が支給され、数キロ離れたところに車で避難することになった。そして、ヘリコプターが出動し、雷麦に照準を合わせる。
「準備はいいですか?」
「ガッハッハッハ!いくぞ!!!!」
円の中で少しだけ助走をつける
「どっせえええええいいいいいいい!!!!!!!!」
ドゴゴゴゴゴッッッッッ!!!と地面が揺れる音がなり、ドガアアアアン!!!という爆発音と共に小さな火の玉がマッハいくつかで飛んで、遠くの雲に穴を開ける。その後、遅れたかのように土煙があたりに舞い、地面は断裂し、衝撃波で学校の窓は割れ、煙が晴れた後は、破裂して燃え尽きたボールだった何かの残骸と、天変地異のような大規模な地殻変動だった。
「うわっ……」
「………」
同学年の奴らはあまりの衝撃に言葉が出ないまたは、出たとしても言葉が続かないようだ。
「すっっげえええええええ!!!!」
「やべえええええええええ!!!!」
「雷麦いいいいいいいいい!!!!」
1組の奴ら……順調に雷麦に染まってるな。
次の日は腹筋と反復横跳び、立ち幅跳びだった。……立ち幅跳びが嫌な予感がするな。
「雷麦。お前は絶対軽く飛べよ?絶対だからな?体育館の修理費もバカになんねえんだからな?」
疑問系で圧をかけて要るのは体育の先生。過去に片手で収めることができない程度には地面を陥没させる雷麦には厳重な注意……飛ぶとしても3メートルまでという制限を課した。
「ガッハッハッハ!!!!大丈夫だ!何度も壊してどのくらいで壊れるのかは大体把握したからな!絶対に壊れないように加減して飛ぶぞ!」
そしてしっかりと加減してとんで、3メートルピッタリで着地した。着地時のドズンッ!!!!!という音に体育の先生はビクッ!と震えて、壊れていないことに安堵していたが、それ以前に、なぜ3メートル飛べる。俺なんて2メートル50くらいだぞ?毎日運動している俺ですら50なのに、軽くふわっととんで3メートルいける雷麦の凄さを改めて実感する。
あまり噂をするのはよくないが、心の中で思うだけならいいだろう。トムはなんか19メートル跳んだらしい。こいつらよく日常でもの壊さねえな。
腹筋は雷麦は苦手のようで、20回だといっていた。俺は順調にやったので、30回だ。トムも30くらいらしい。
そして反復横跳びだったのだが、雷麦が着地するたびに体育館が大きく揺れた。体育の先生は怯えの域に達していた。雷麦も俺も50くらいだった。
日を数日跨いでまたしても体力測定。今回はシャトルランだった。俺の得意分野だ。
「龍の得意分野じゃねえか!!!!!!」
「体力が取り柄なもんでな。」
はじまった。皆は、このシャトルランの音を憂鬱げに走っている。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド。その間にゆっくりと走る。俺は、その速度に合わせて、ゆっくりと速度を上げていく。レベルが上がるときに速度を上げるのでは無意味に体力を多く消費してしまう。だからゆっくりと速度を上げていくのだ。
最初は歩ける程度だった速さも気がつけば走らなければ間に合わなくなっていく。そして、男子では50あたりで、体力のない生徒が1人脱落した。そこから皮切りに、70、80あたりから脱落者が増えていく。そして、100になった。最初の頃の緊張感とはまた違った雰囲気になっており、残っているのは、俺以外では運動部だけだ。そんな運動部も、110、120と上がっていくにつれ、脱落したようだ。そんな中、俺はと言えば未だ余裕だ。日々のルーティンが生きていることを実感する。まだジョギングする程度の速さ。少し疲労感は感じるが、呼吸を整える余裕がある。
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
雷麦がラストスパートをかけた。全力で走ることにしたようだ。全力とはいえ、俺ほど長距離は誰も走らないだろうから、疲労感で体が鈍った状態の全力、しかも無慈悲にもそこでさらに速度が上がる。いま走っているのは俺と雷麦だけだった。
「どりゃああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
140を超えたあたりから、目に見えて雷麦は疲れた顔をしていた。全身から汗を吹き出し、湯気がたっている。こうなっている雷麦は久しぶりな気がする。前見たのは中二の頃に朝から夜遅くまで俺らでサッカーした時だったな。懐かしい。
雷麦は150でギブアップした。
俺は速度をさらに上げていく。いつものジョギングのペースになったが、いかんせん急激に止まって再加速するものだから慣れない動きで消耗が早い。だが、必要以上に速度を上げることで、減速の猶予を大きくした。そして、問題は起こった。
回数が200にいったあたりのことだ。誰かが、ラインに水をこぼしたのだ。汗をかいていたし、俺は集中していたから、それが見えていなかった。その水溜まりをふみ、滑った。転びこそしなかったのだが……
グギッ
足首から嫌な音がした。でも、俺は止まる気はない。一歩進むごとに痛む足を無理やり動かし、どんどん速度を上げていく。減速を慣れない左足にしたせいで、ロスが多くなった。その上、もとより3秒くらいで端から端まで辿りつかなければいけないから全力に近い速度を出すしかないのだ。
ッ!
音源の完走まであと少しだ。
あと3……2……1……音源が止まる。なんとか走り切ることができた。未だに湯気がたっている雷麦が近づいてきたかと思えば、両手で担ぎ上げられて、どこかへ連れて行かれた。
「バッキャロウ!!!!何怪我して走ってんだ!!龍!!!」
雷麦からビンタを食らった。全くもって正論だ。だが、物理的なダメージで言えば、雷麦のビンタの方が痛い。大砲のような威力だ。
「なぜ気がついたんだ?」
これでも隠し通せるくらいの自信はあったんだがな。
「当たり前だろうが!!!!何年友達やってると思ってる!!!」
完敗だ。これは勝てない。
雷麦はどこに連れてきたかというと保健室である。無理に走ったせいでよりひどく腫れた足をみて、保健室の先生は、
「無理はダメだといったはずですよ!でも、よくそんな状態で完走したね〜。普通歩けなくなるくらいの痛みはあるはずだけど。」
「俺が寝転がっていないでさっさと龍をみとけりゃよかったぜ。そうすりゃ抵抗したとしても無理やり止めてやったのに。」
雷麦は全力ダッシュをしたあと、疲労困憊で地面に寝転がっていたのだ。
「しばらくは安静にしてなさい?いいね?」
「そうだぞ龍!!!大人しく従ってろ!!」
先生と雷麦の圧には勝てなかった。
「治るまでは安静にする。」
こう言うしかなかった。




