忍者屋敷の泥棒?
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「ここに来るのは3回目になるかしら? 今度こそ、今度こそ秘密を暴き出す」
「兄さんの専用の部屋よね」
「うん。初めて入った時、ものすごく吐き気に見舞われてよく見られなかった。でも、今はお腹もいっぱいだし……行ける!」
「無理しないでね」
「ええ」
「ここだけでしょ? ふすまなのに鍵がかかってるのって、すんごい違和感よね」
「そうよ、ここだけよ。絶対怪しいよね」
「でもここも兄さんは網膜で開けられるのよね? カギは何のためにあるの?」
「まあ、ここにあるであろうマントを補充するため……かな? 電池みたいのが切れたら交換するんでしょ?」
「あ、そうだわ!」
「それを兄さんの網膜だけでしか開けられなかったら、作っても補充できないよ」
「そうか……でもそんなのどこにあるんだろう?」
「そういえばそれ聞いてなかったね。でも探せばあるでしょ」
ふすまを丁寧に調べる。すると、ふすまの丸い取っ手の真ん中に鍵穴を発見。
「これだ! 鍵穴発見! じゃあ行くわよ……」
ガチャ カチッ スー
中に入ると、エアコンで外よりは涼しいが、異様に重苦しい空気。空腹時で寝起きのアリサには相当苦しい環境だろう。
「うっ、相変わらず嫌な気分……うう……」
「確かに大人でもここは気持ち悪いかも……」
「でもここに隠れているマントには最適の環境なんでしょうね」
「そうね。多分あのハンガーに一つずつマントが掛かってるんだよね?」
そういいつつ謎のハンガーを見上げる
「見えないけど多分ね。じゃあ私があんたを持ち上げるから取って見て」
「逆でしょw これは私の仕事よ!」
ガッ
「ちょっ、危ないよ! うわ、たっか! 突然持ち上げるなあ!」
「2メートルくらいでしょ。頑張って」
「さっさと終わらせて早く降りよう……ここか? そこか? それともこっちか?」
ぶんぶんぶん
手をがむしゃらに振り回してマントを探す。
「ちょっと姉さん! もう少し静かに探してよ。そんなに暴れられちゃ危ない! 落ちちゃう」
そんなことせずに、脚立とか梯子を持ってくればいいんじゃないかなあ?
「ないよ。結構広範囲を探ってるのに」
「全然伸びてないわ。かと言っても姉さんに私を持たせるわけにもいかないし……」
しかしアリサのリーチは身長とぴったり同じ120cm! これでは届かない。アリサに棒でも持たせて振り回さなければ届かないかもしれぬな。
彼女たちだけではマントを探すには心許ない。一旦外に出て助けを呼ぶという選択肢もあるのだぞ! そうでなくとも、どこかから長い棒を持ってくるなり足場を作って探すという考えすら出てこない感じである。ひょっとしたらここの重苦しい空気でそこまで頭が回らぬのか? それとも犯人が入って何か細工をしている可能性もある。それがよぎって頭が回らないのかもしれぬ。
「よーし!」
照代の目の色が、僅かに変わった。何かを閃いた顔だ。
「え? 何? その目……なんか嫌な予感がするよ? その目は前にも見たことある。ロクなこと考えてない時の目だわ。
正に誰も使わないで有名な
『ニンジャ・リバイバル・デリート』
を閃いた時に見せたあの惨めで腐った魚の目のようなどす黒くも僅かな希望があると思い込んでいた勘違いも甚だしい輝き……」
「何それwww大丈夫大丈夫、任せて任せて!」
「あ、これはやばいわ。今の言葉全てを誉め言葉と受け取ってる……やばい。しかも同じことを二回ずつ言ってる……
『はい』
一回だけならいいのに
『はい、はい』
って言ってお父さんに怒られている某王子様みたいよ? そう言ういい加減な態度が一番信用ならないのよ! ちょっと、ひとまず今は降ろして。で、話し合わない? ね?」
「……」
スチャッ
この音は? ははあ、まさかこれは……照代は
『アリサを構えた』
ようだ。ぬ? どういうことか……か? 当然私も分からない。だが照代は今、アリサを構えたのだ。そうとしか言いようがない。
「え? 何で私を構えてるの? なんか嫌な予感しかしないわ……こら! 構えを解きなさい! 姉の命令よ! 早くしなさい!」
「はああああああ! てやああああああ」
照代の耳には最早何も届かない。
ぶん、ぶんぶん、ぶんぶんぶん、ぶんぶんぶんぶん
アリサがまるで竜巻を彷彿とさせる動きを見せる。この様子を神は見て
『子供は風の子』
という言葉を編み出したのかもしれぬな。
「ぎゃあああ」
照代がアリサの足を持ち、ジャイアントスイングを始める。皆さん、この見事なスイングを見てくれ! この豪快なジャイアントスイング! ぶん回されているアリサの姿、かつて木乃伊二男キノイに振り回されながらも圧倒的な存在感を放っていた、あのハタンスンセンを彷彿とさせる回されっぷりである! 成程! その前動作の構えだったのか。全く機転の利く妹である。
ふわっ
「ん? あ! 当たった! 止めて止めて! 今何か手に当たったよ!」
不意に、アリサの伸ばした指先に、何か柔らかい布のようなものが触れた。届いたというよりはその風て落ちたものに偶然手が当たったというのが正しい認識だろうな。
「え、ホント!?」
ピタリと、遠心力が止まる。急停止の反動で、アリサの体がぐらりと大きく揺れた。
「うっぷ……目が……目がまわるうう……」
「姉さん大丈夫!?」
「大丈夫じゃないわよ! あんた将来ハンマー投げの選手にでもなるんじゃないの……室伏照代さん……はあはあ……」
「え、褒め言葉?」
「貶してるのよ!」
ふわ、ふわふわ ぽとぽと
「お疲れ!」
構えを解き、アリサを優しく床に立たせる。少し遅れて凄まじい風圧が巻き起こり、メタマテリアルのマントがふわりと舞ったあと、地面に落ちる。
「あっ! ぽとぽとって音がしたわ。多分今床に落ちたわ! 作戦成功ね」
「ふらふらするわ……まあ、いいでしょう。探してみなさい」
何故かそれ以上怒らないアリサ。
「あったわ! ここにもある! 変なの……全く見えないのにそれを持ってるわ私。ええと、5枚くらい落ちてる。上にはまだあるのよね? ハンガーの数だけあるんだから」
「そうね。まあ全部降ろすまでもないわ。じゃあ調べててみましょう」
「ええ」
「待って? このマントを巻き上げた時に起こった風。それはただの風ではないのね? だから名前を付けるわ」
「え? それって必要?」
「うん。こういう概念的なものにも形を与えたくて、忘れたくなくって名前を付けているのよ。だから、絶対に要る。これ2話ね?」
わたしんぐわたしんぐ
「え? なに?」
アリサは床に合った鞄の中から
『2話』
を照代に手渡す。すると、操られたようにそれを読み始める。
「ふむふむ、これは……目玉が飛び出して……目玉が喋ったあああああああ♡」
「そう。早乙女さんが目玉が飛び出て入れ替わった時に
『交換しよう』
と早乙女さんの目玉が発言した。それは私も驚いたわ。でも驚いただけで終わらないのがこの私。それをクロスアイ現象と。そして」
わたしばかよねわたしばかよね
「ちょっと! まだ読みたい!」
「黙って受け取れ!」
アリサは続いて
『1話』
を渡す。
「最後の方を読みなさい」
「もう! いいところだったのに……なになに? あ! 刑事さん姉さんの母さん、つまり私の母さんから掌底を受けてたんだ……」
違うじゃん。
「そうそう……で、また2話に戻って? ep36の
『竜牙登場』
の回を見なさい」
「はい……え? マジかよ神様……下顎の骨が外れて逆にくっ付いたああああああああ♡♡」
「そう、竜牙さんが顎が外れ、180度回転して嵌り直した時の減少……現象も
『逆刃刀』
と名前を……いいえ、命を与えた。今私とあなたが起こした現象もそれに相応しい。故に、与えなくては……いけないな?」
「仰せのままに」
「そうね……今までは他者の為にその才覚を発揮してきた訳だけど、今回は自分の宝となるもの……心を込めて生み出さなあかん……ふむ、これでいいわ……
『美幼女のため息』
で」
「いいねそれ!」
そうかなあ?
「では問おう。適当に返しているかテストよ? どの辺がいいねと思った?」
「え? ええと、姉さんがため息をつくほどの、絶望的な状況を切り開いた救いの風ってことかしら?」
「……違うわ、5点ね。おばさん。正しくはこうよ。この風は、私の体重約20数kgが、あんたの異常な腕力によって毎秒数メートルの円周運動をした際に発生した、計算通りの遠心力と風圧よ。マントを舞い上げた。だけど、それだけじゃないの」
「ええ、回りすぎて目が回っちゃったけど、確かにマントが落ちたわね! 後は?」
「自分の腕のコンパクトさが災いし、妹のアイデアと腕力で成功。イコール、自分自身の力では解決できなかったと知ってしまった悔しさから出たため息かしら?」
「その二つの意味からため息ね。私と姉さんの協力の結晶ね」
でも命名しても今後そんな言葉使わねーじゃん。って、待てよ? え? あ、やっぱりだ! しっかりと使っていたああああああああ!!! そうだ……これも文字数稼ぎの極意であったか……過去の話、ただするだけであったら顰蹙を買ってしまう。だが、今回アリサはおかしなことを言い始めたな? そう新しい言葉を突然作り始めた。もちろん1話から見て下さる方にはそういう癖があることは承知の上だ。このやり取りは至極退屈かも知れない。だが、新規の方がほとんど。だから突然こんなことを作成した時、
『何を言っているんだこの子は?』
と疑問を抱かれ恐怖の果てに、この小説から離脱してしまう可能性も出てしまう。だが、
『過去にもいくつかの言葉を作っていた』
というエピソードを無理なく差し込めば、アリサは突然おかしなことを言う子ではないという安心感も読者様に与えつつ、おまけに1話や2話の宣伝も出来た上に、1話、2話で出た仲間達を再利用まで出来てしまうのだ……これは、セリフを伸ばしたり、おかしな言葉を翻訳すると言うよりも遥かに高度な文字数稼ぎのテクニックだったということだ! 一石何鳥だ? 一石三鳥くらいか? 一個でどれだけ活躍する石なんだよ! まるで意思を持っているみてえに鳥を落とすじゃん……石だけにか? でもよく考えたら3じゃ足りないか? それほどにこの稼ぎ方はメリットリが多い。鳥が足りねえよお。もっと鳥を取り寄せてこい!! そう、クロスアイ現象も、逆刃刀もこういう経緯があって作ったんだよ? だから今から作る言葉も必要なんだよね、分ったかい? と初見の方に優しく説明するフリをするだけで簡単に稼げてたんだよ!! そしてこの
『美幼女のため息』
も次に何かアリサが言葉を作った時に例として採用されるであろう。ああ、まだ私は若かった……一見余計なことと思っていたが、このアリサの行為はこの小説で犯人が誰とか忍者がどうのこうのなんかよりも最重要のことをしてくれていたんだよ! アリサよ……お主は私を超えようとしているのか? まあ、アリサになら超えられても仕方が無いな……譲ろう……
「ええ。じゃあ、マントを調べてみよう」
じー
「何か分かった?」
「なにも分からない。じゃあ視ましょう。はああああ」
ブゥン
マントを手に取って気合を込める!
メタマテリアル LV1 性別:なし
力 0
素早さ 0
体力 160
賢さ 100
運 50
HP 320
MP 200
攻撃 0
防御 20
スキル
☆☆☆光学迷彩 消費MP4(通常時)/消費MP40(最大)
☆熱源漏出
☆内部冷却 消費MP8
満腹値 -/-(該当なし)
状態異常 なし
好きなもの 物陰 静寂 涼しい空間
嫌いなもの 火 直射日光 激しい動き
枠は水色に光っている。
マント。防御力は僅かだ、がそれはおまけ程度。着用の用途は防御上昇を得るためではない。
『光学迷彩』
は、その内側にいる間は身を隠すことができる能力。動作の激しさに比例して消費量が加速度的に増加する。普通に使っていれば一時間で4程度だが、激しい動きともなると最大でその10倍は消費してしまう。もし激しい動きで連続使用すると5時間が限界である。普通に使えば大体50時間使用可能。
『熱源漏出』
は、MPが無くなると熱も消え、ただの布と化してしまう。
『内部冷却』
は、それを装備して移動していると、次第にマント内は熱を持つ。もし熱が出なくなると周囲との同化は出来なくなる。
光学迷彩使用中、放置していれば最大で100度付近になる。それを抑え、マント内の温度を一定にするスキル。1時間で8消費するが、通常時は起動せず、動きに比例して動きのレベルが上昇を確認した時のみに作動するオートスキル。
連続使用5時間と語ったが、この分とあわせて消費するので実際は5時間よりは短くなるだろう。あやふやで申し訳ないが詳しい計算は気になった方が各自で行ってくれ。
「へえ、周囲と同化した感じなんだ。でその度にMPが消費されて、それが無くなると布になっちゃうって感じなのね。でもそれじゃ、あの時見たまんまよね。これにMPがあって、無くなると布に戻るっていう具体的な仕組みを知っただけじゃん。じゃあ新しい情報はこっそり使えば50時間連続で使えるってことくらいかしら」
「えー? 苦労したのにほとんど手掛かりなしなのね?」
「でも再会した直後は随分と弱っていたのに、この短い期間でパワフルになったよね。あの時のあんたからは想像できないことをしたんだよ? 私を持って振り回したんだからね」
「お見合いの憂鬱さと毒で死にかけた恐怖が混ざっていたからね。でも今は一時的にお見合いのことを忘れられているし、毒の恐怖も薬の効果で薄くなってきたのかもね」
「そうなんだ。折角入れたのに、これで終わりかあ……あら?」
「どうしたの?」
「なんか変なシミが」
床に染みが所々に落ちている。先程の美幼女のため息でマントが落ちていた辺りだ。
「どれ?」
「これ、昨日の夕食の時に兄の居た辺りで見た色とは違うけど……あれは黒かった。ただの泥かな? これは無色だよね? ちょっとこれ持って行けないかしら?」
「ハンカチで拭いてビニールにでも入れておこうか?」
「ありがとう。でもビニールなんて持ってるの?」
「お医者さんに渡された薬の入れ物だけどね」
「毒を弱める感じの薬?」
「ええ、あと睡眠薬も」
「眠れないんだ」
「ええ、これが無いとダメね……一応拭き取ったよ」
「毒かもしれないから直接触っちゃ駄目よ? でももしこの成分が兄を弱らせたものと一致したら、この部屋内に誰かが入って塗ったってことになるわよね? そんなことが出来そうな人っているの?」
「分からないなあ。鍵だってかかってるし」
「鍵ねえ……」(あれ? たしか鍵開け得意な奴が……誰だっけ? あ、葉隠だ! 確かこんなデータだったはずよ!
『力 281
素早さ 841
体力 112
賢さ 43
運 11
HP 225
MP 87
攻撃 511
防御 536
スキル
忍術マスター
ギャンブルマスター
口説きマスター
☆☆二枚舌
☆☆盗む 消費MP3
☆☆☆鍵開け 消費MP1
☆☆☆隠し通路発見 消費MP1
☆☆☆影分身 消費MP10
☆☆☆力限界突破
☆☆☆速さ限界突破
☆☆☆☆☆神速百連クナイ 消費MP60
☆☆☆☆☆影分身神速千連クナイ 消費MP85
満腹値 98/100
状態異常 怯え 混乱 借金250万
E,上忍クナイ
上忍黒装束
好きなもの 女性 幼女 ギャンブル
嫌いなもの 男性 借金取り アリサ』
あいつなの? でもそれしかない)
「葉隠を探さないと」
「え?」
「あいつがカギを握ってるはず」
「まさか犯人なの?」
「確定はできないけど……幽霊が居ないと講義をしていた時に突然幽霊にやられたふりをしている」
「ふりで断定?」
「そう」
「で、布団の間で居なくなってなかったっけ?」
「そう、毒で倒れたのにさ、居なくなってるなんておかしい!」
「瘴影丸にさらわれたのかも……」
「そうね……あいつは葉隠を見つけ次第見境なしに片っ端からさらうからねって……こら! いつまで引っ張るのよ!」
「え? 違うの?」
「当たり前でしょ。幽霊なんかいない!」
「でも……」
「私と葉隠どっちを信じるのよ」
「姉さんだけど……それでも……」
「優柔不断!!」
「確定じゃないんでしょ?」
「そりゃ……」
「こういう第三者の意見も頭に入れといて……思い込みは危険よ? 姉さんは見境なしで突っ走るから……」
「第三者って……あんたこそガッツリ当事者でしょ? 自分の家が大ピンチなんだから」
「戻って一週間そこらじゃ当事者とは言えないのよね。全然実感ないわ」
「毒さえ受けてなければまだ新聞記者やってたもんね」
「ホテルの料理の特集なんてするんじゃなかったわ」
「運が悪かったわね」
すると……何やら大声が……
「あれ? タンスの中に入れておいたへそくりが……な、ない!」
「あ、古流忍術の秘伝の巻物がないぞ! 誰か来てくれー」
「それどころじゃないわよ! こっちなんて九字切りの象牙細工が無くなっているわ! しかも天目茶碗も一組無くなって……だ、誰の仕業なの?」
色々な所から何かが無くなっているという報告が響き渡る。
「ええ? 盗み? このパニックに乗じて泥棒でも入ったのかしら?」
「ロ組以外の生徒はみんないるはずもない幽霊と戦っているもんねえ……今がベストタイミングよね」
「のんきなことを……あの庭を抜けてこの屋敷に入れる泥棒って相当やばいわ。それにこのパニックの情報を外部の人が知ることもないでしょ?」
「そうなの? まあそうね。でも庭のトラップは大したことなかったけど……」
「姉さんはあの庭を何事もなく通ったってことなの?」
「ちょっと落とし穴に落ちかけたくらいかな?」
「すごいわ。108の罠があるのに一つしかかかっていないなんて」
そのほとんどはアリサの背の低さのお陰で回避できたということは、彼女は知らない。
「そんなにあるんだ……じゃあ内部の人間の犯行? 急に? 屋敷の誰かが盗もう! って気分になって盗んだってこと?」
「分からないわ」
「そうだよね……とりあえず照蔵さんの声が響いてたから、そこに行ってみましょう」
「ええ」




