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放たれし幽霊 瘴影丸

「ハッ……痛い! 痛い!! ねえ、おばさん! 鏡は? どこ? 教えて!」

アリサは目を覚ますと同時に激しい頭痛に襲われもんどりを打つ。


「あっ! 起きた!! 姉さん……何を? 鏡なんてどこにもないよ?」 


「はあはあ……どういうことよ……はあはあ……」


「……苦しいの? でもよかった……いつもと違って眠っている時もすごく苦しそうだったの。戻ってきてよかったよ( ;∀;)誰かいる? 今すぐ来て!」


「はい……あら? お嬢さん大丈夫? 凄い汗よ……それに涙も……今にも死にそうよ」

ふきふき

駆け付けたく一人が汗と涙をぬぐってくれる。ぬ? く一人とは何かであるだと? 今はそんな説明をしている暇はないのだ。場の状況を把握してくれないか?


「はあはあ……はあはあ……こんな所で死ぬわけには……いてててて……あ、そうだ! お茶持って来て? 膳さんの!」

涙と汗の量が尋常ではなく、照代は瞬時にあの膳のお手製の薬茶をアリサに与えようと考える。いい判断だ。


「かしこまりました!」

ダダダダダ


「どこが痛むの? さする!」


「頭かな……」


「うん!」

すりすり


「いたいいたい! 力加減して!」 


「あ、ごめん!」


「気を付けてね……でも何よあれ……でも、最後の……クッ、もうあのことを考えるのは止めよ……」


「どうしたんでござる? 怪我はないでござるか?」

照蔵が心配そうにアリサに歩み寄る。


「へ、平気です」

すると走っていったく一人が戻ってくる


「姉さん! 飲んで!」


「ありがと」

ごく


「どう?」


「少し落ち着いたかも……いてて……」


「あら? さっきはいててててだったけど、今はいててよ? 


『て』


の数が二つも減ったよ! だから少しは良くなったってことよね?」


「馬鹿なこと言わないの……はあ……ちょっと横になる」

相当きついようであるな。


「でもこれからどうするでござるか」


「うーん……小田無双さんを再び呼んで封印してもらうしかない。おい、誰か! 小田さんに連絡してくれ」


「は、はい!」


「でも生きてるの? 無双さん」

横になりつつも気になったことは質問する。


「もちろん子孫に決まっているだろう? 小田無双さんなんだよ。子孫の名前も」


「そうか……そうよね。襲名ってやつか。どうすればいいの? さっき倒れた生徒さんもあいつのせいで?」


「はい、毒を受けたような苦しみをして気絶してしまいました」


「これからも増えていくかもしれないんじゃない?」


「その通りです。こんな所に集まらずさっさと出て行った方が被害は少ないですよ?」


「うう……」


「どうするの姉さん?」


「私は瘴影丸なんて居ないと思っているわ……ちょっと行ってくる」


「どこに? え? もう立てるの?」


「寝ていられないよ」


「ついていくわ。でもどこに?」


「祠に行く! 確かめないといけないことがある」


ーーーーーーーーーー真田行家 庭内 祠ーーーーーーーーーーー


「こんな所に何の用なの?」


「こいつに万物調査をするのよ」


「あの技を? 生で見れるんだ」


「葉隠のお見合いの時も見せた筈だけどねえ」


「あ、あの掌を前に出して唸ってた時?」


「ええ、でもこれは動かないしあんなことをしなくても直接触れればいい。はあああああ」

そう、遠距離でつかえるようになったとしても直接触っても視ることは出来る。念じながら蒼い球を操作する必要がないのでアリサ的にはこっちの方が楽そうではあるな。その操作自体を嫌っているようであるし、どうしても視たい相手が高い所に居る場合以外では直接触れて視るだろうな。

ブウン


真田行家庭内の封霊の祠 LV245 建造物


力 0

素早さ 0

体力 450

賢さ 0

運 80

HP 900

MP 0

攻撃 0


防御 180


スキル


☆☆☆噂の残滓 

☆☆苔の記憶


満腹値 --/--

状態異常 煤まみれ


好きなもの お供え物 暗所 封霊石

嫌いなもの 金槌 湿気 日光


一見神聖な場所にある祠で何かの魔力がありそうだが、特にそういうものが存在しない。ただの石造りの建造物。神聖な力や霊力は完全なるゼロだ。

噂の残滓は実際には何も封印されていないが、噂を聞いた者に恐怖を与える。

苔の記憶は長年の風雨を記録しており、天候予測に微弱な補正を与える。


「ただの石なんだ。やっぱり……」


「噂なんてそんなものなのね……」


「戻ろう」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……という結果が出たから幽霊がやったとは思えないよ」


「そうだとしても実際に倒れた生徒はどうなるんですか? 封印が解かれ、暴走して無差別に攻撃する瘴影丸の仕業としか思えません。で……もしもですよ? 霊の効果が無かったとしてもです。それは単体でしか見ていないはずですよ? だから、二つがセットの時に視たら霊的なステータスになるかもしれませんよ? だから二つを組み合わせてもう一度見て下さ……」


「違う!」


「ひい?」


「幽霊がどうやって毒を人間に与えるのよ! どう考えてもおかしいしありえないわ。幽霊の出来ることなんてせいぜい金縛りにさせたり写真に怖い感じで映り込んで驚かす程度でしょ? 毒を人に盛るなんて絶対に不可能よ。今までそんな事例が世界中で一つでもあった?」


「で、ですがさっき起こっていたじゃないですか!」


「そうね。でもそれが起こったのはこの屋敷内だけじゃない? 絶対におかしいわ」


「で、でも……もたもたしてると……」


「霊体は毒という物質を運べない! 断言する! よし! 勝負よ」


「え?」


「私がもし真犯人を見つけることが出来たら瘴影丸なんてただの迷信のでたらめ。で、犯人が見つからなければ私を少年院でもどこにでも連れて行けばいい。だから、調査をさせて?」


「その間に被害者が増えなければいいけどね。実際何人かやられているんだよ?」


「ここで逃げれば瘴影丸の脅威からは避けられると思う。でもいない前提で考えるなら、誰かが瘴影丸に成り代わって罪のない生徒を数人攻撃したってことにもなるわ」


「まさか! 何でそんなことを?」


「恐らく犯人の本当のターゲットは照男さんだったと思うんだ。だけど、瘴影丸の存在に現実味を出すため、そして自分に疑いが掛からないようにそう、瘴影丸の伝説になぞらえて無差別に毒で襲ったということかもね。照男さんだけ狙われたら不自然だと思うし……それにあのカード!」


「なんです?」


「カードよ。照男さんの部屋の入り口にあった物よ。そこには暗号が記されていた」


「そんなものが……」


「確か今も照男さんが持っているわ。帰った時に見せてもらうこともできると思う」


「ですね」


「で、幽霊が犯人ならカードなんて照男さんの部屋の前になんか置けないよ」(そう言えばあのカード確か……ディアって人物? がこの屋敷に忍び込んで置いたってことよね? この屋敷のセキュリティをくぐり抜け……そんなことが出来るの? いてて……また頭が……くっ、これ以上考えるのは無理ね……)


「でも生徒も忍びです。毒を盛られるような間抜けではないと信じたいです」


「確かに。だけどこの学校の生徒は毒に耐性があるんでしょ? それをみこしてわざと毒で攻撃して死者を出さないようにしたんだと思う。あくまで罪から逃れるための工作だから」


「そうなのですか? 初めて知りました」


「あ、そうか……誰も知らないんだった」


「だとしたら照男様はどうなるんです?」 


「別の目的があったとしたら?」


「どんな目的ですか?」


「それも分からない。(あの映像では邪魔だからって理由だった気がする。間違いなくあの映像はこの事件の犯人と誰かの会話だったわ。最強の忍び、岩を刀で真っ二つという特技……全て該当している。でもそれを言っても信じてはもらえないよね……やば、また頭が……)でもね? あの石を私が拝借したのは昨日のお昼前。その時に瘴影丸は解放されたはず。なのに奴が仕事を始めたのはいつだった?」


「あ! そうだ、今朝照男さんが倒れてしばらくしてからだ!」


「そう、封霊石? が無くなったということがみんなに伝わってから生徒が突然犠牲になった。それは瘴影丸が解放されたという事実を利用し真犯人が本当に瘴影丸が仕事を行ったように見せかけただけかもしれないってことなのよ」


「た、確かにそうだ。まあ幽霊が解放されてすぐには力が戻らず、万全の状態になるまでにもしかしたら一日時間が必要だったかもしれない」


「でもタイミングが偶然にしてはできすぎなのよ。これは意思を持った人間がやったこととしか思えない。幽霊が無差別で不特定多数の生徒を襲いまくっている様な感じがしないのよ。今みんな集まっている。この場で突然誰かが倒れてしまうのを確認するまでは信じられない。だから真犯人はいる! それならば私の得意分野! 全て解き明かす」


「ねえさん……」


「大丈夫よ。私が失敗したことなんてある? 私、失敗しないので」


「何回もあるじゃない。直近では石を盗んだことがバレちゃったでしょ?」


「あれえ?」


「でも姉さんの推理力は私の400倍はあるわ。だからどんなトリックもトラップだって切り抜けられるわね」


「惜しいわね4000万倍よ。かなり間違えているわね。本当にダメな妹……でも4が合っていたから及第点ね」


「そうだったわねごめん」

それはちがうよ!


「じゃあ行きましょう」


「でも具体的にはどうするの?」


「まず照男の倒れていたところを探してみましょう」


「え?」


「鑑識に邪魔されたけど何かがあったのよ。それを今から調べる」

何故そっちから行くのだ? 


「面倒だけど行くわ」


「はいっ!!」


ーーーーーーーーーー真田行家 庭ーーーーーーーーーーー


「姉さん? 兄さんの倒れていたところに来たけど、ここってもう調べつくされていないかしら? まだ調べるところってあるの?」


「とりあえず倒れていた辺りの地面を探してみる。確かこの辺で」

キョロキョロ


「何もないじゃない……」


「ないよね……」


「あら? 何か泥が浮いて……る?」


「え?」


「ほら、何の変哲もない地面に少し浮いて汚れがあるわ」


「私視力2.0なのに見えないわ」


「姉さん視力低過ぎよ」


「そういえばおばさんは8.9だもんね。でもこれでも高い方なのよ? 悔しいわあ……あ、ちょっと水とか持って来て?」


「何に使うの?」


「いいから早く!」


「コップ一杯でいい?」


「うん」


「面倒ねえ。ちょっと待っててね」

ダダダダダ


「持って来たわ」


「ありがと」

そういうと床に水を撒いてみる。


「どう?」

すると、地面に当たる前に空中で水がはじける。


「やっぱり地面の上に何かある」

そう言い水滴が残っているなにかを拾い上げる。


「布だ……完全に透明の……だけどちょっと汚れが付いていてそのお陰で気付けたけど、これが無かったら全く気付けないくらい完全に地面に同化しているわ」


「なんなのこれ?」


「ほら!」

アリサは両手で布を広げて自分の体を布で隠す。すると画した部分は背景に溶け込み顔と掴んでいる手だけが浮いているように見える。


「わあ、今姉さんトラクエ6のムーアデスタの第三形態みたいよ」


「ああ、左手を先に倒さないと何度も復活されちゃうあのボスね? まあ顔が全く違うわ。あんた目が腐ってるの?」


「ごめん。でもそれくらい綺麗に消えてるって言いたかったのよ」


「やっぱり体は見えないの? 凄い不思議な気持ち」


「これで兄さんは見えないように移動していたのかな?」


「そうかもね。人間が完全に消えるなんて不可能だもの。さっき病院に行く前用事を思い出して? 二階に行っていたけど、その時これの予備を取りに行ったのかもね」


「確かに。それがここに落として見つからなかったから面倒になって予備を取りに行ったんだわ。刑事さんと移動している途中で消えていたもんね」


「照男さんは人に見られたくないからこういう道具で身を隠しながら生活していたのかもね」


「そういえば視た時、metamaterialって言うのを装備していた。で、立ち上がった時にそれが落ちたんだと思うわ」


「メタマテリアルう?」


「恐らくこれのことよ」


「この透明になるマント?」


「そう、この屋敷内にmetamaterialと言う名前の部屋があったわ」


「ああ、何度も通ったけど一度も入ったことはないのよね」


「私は入ったことがある。部屋の上部で何かが揺らめいていたんだけどこのトパースが瘴影丸を開放する鍵ってことを知って怖くなって思いっきり遠くに投げるようにして捨てたんだけど、途中で何かに引っ掛かって落ちて行ったのよ。垂直落下してた」


「何かにぶつかって落ちたってこと?」


「ええ。それはこのマントが沢山部屋内に干してあったのよ。ハンガーは普通のやつだった。そこにこのマント? をかけていたみたい。ハンガーは部屋一面にあったから相当な枚数を保持していたと思う。なくしてしまったら探すのは苦労するし予備を多めに作っておこうと考えてね」


「そうかもしれないわね」


「で、その時とっても気分が悪くなって意識を失いかけたのよ」


「え? どうして?」


「なんか部屋の充満する空気がおかしな気がしてね。で、奥に入っていくにつれて吐き気が増していって死ぬかと思ったくらい気持ち悪かったわ」


「ってことは? マント一枚では出せない不思議な力を、干してある数十枚のマントが引き起こしたのかもしれないわ」


「考えたくはないけどね


『ずっとここに居てはいけない!』 


って警告された気分よ」


「でもこんなマントを持っていたってことは、限界まで鍛えても消えるまでは至らなくて悔しさの末に、metamaterialに頼ったって形になるかもしれないわね」


「忍者の限界を感じてこんな行動に……」


「責任感強いよね」


「結構イケメンなのにそれを自分では気づいていない感じがしたわ。鏡とか見たことないの? 照男は」


「そんなの分からないよ。でも怖いわ」


「何が?」


「いつまでもこんな所に居たら瘴影丸に毒を盛られそうよ。ここが犯行現場なんだから」


「あんたねえ、そいつがいないことを証明するために今頑張ってんでしょ? 姉さんを信じなさい」


「収穫はあった?」


「この布だけね。多分犯人もこれのせいでなかなか標的を狙えないことにイライラしていたと思うよ」


「でも本当に犯人っているのかな?」


「まだ言うの? まあ幽霊が毒を盛るよりは現実的でしょ?」


「でも私も子供の頃から聞いていた話だからおかしいって思っていても信じてしまうのよ」


「まあそうなるか。この屋敷の生徒もみんな知ってる感じなの?」


「うん、授業でやってる」


「それね、絶対要らない知識! インフォメーションダンシャリィを行いなさい!」 


「歴史の授業でどうしてもやってしまうらしいのよね」


「この屋敷の歴史は社会に出ても役に立たんやん……じゃあ洗脳を解かないとね。一応これも持って行きましょ……」

透明な布をなくさないように食堂へと運ぶ。


「ええ」

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