↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/43

発覚

前回、アリサは鞄の中に封霊石があるんじゃないか? と、怪しまれ、その潔白を証明するために中身を全て出す (但し、封霊石は左手の中)果たしてこのままバレてしまうのか?


「ふう、めんどくさ……どう? 鞄の中身はこれだけよ? 好きなだけ見なさい」

右手で鞄の中を見せる。左手は不自然に斜め後ろに下げているな。

出てきたものは、塩の瓶、携帯電話、モバイルバッテリー、財布、防犯ブザー、鏡、マジック、スケッチブック、マジックも消すことのできる消しゴム、懐中電灯、絆創膏、タオルーズの2枚組タオル、そしてすでに空になった弁当箱に水筒、と売店で買ったのど飴。と、封霊石……はアリサが左手に握りしめている。だが不自然に握られた拳は余りに目立ってしまっている。だがアリサはうまく騙せていると感じているな。


「確かに封霊石らしきものはないな」


「でしょ? あなたはおかしな難癖をつけて乙女のカバンの中身を無料で見たんだからね? 後で何かよこしなさいよ!」(ふう、ひとまず安心かしら?)


「そ、それは確かにそうだね。十分な報酬と金一封を……と、見せかけてえええ? はあああああ!」

ピー


「しまった!」

そう、おじさんは後ろに石専用の金属探知機を隠していた! そして、アリサが安心し、緊張の糸が切れた瞬間を見逃さなかった。素早く機械をアリサの手に向ける。


「反応は左手からみたいだ、だがずっと握ったままだね? 中に何か握ってはいないか? 見せてくれないかな?」


「な、何言ってんの? 手の中を見るなんて……卑猥よ! この変態! おまわりさーん! 助けてー」

おい、今この瞬間に呼んだとしても、この屋敷にすんなり入れる警官などいるわけがないであろう! 門番に止められるのオチだ。


「そんなことで裁かれることはない! まあただの思い過ごしなのかもしれない。でも一応ね。もし良ければ掌を見せてくれるね? たったそれだけで身の潔白は証明されるんだ。簡単だね?」


「何で? 今左手はアロンベータで遊んでいて運悪くくっついちゃって開かない状態なのよ。本当に困ったわ」

この嘘は4点くらいである。10000点中な!


「ええええ!? そ、そりゃあ大変だ! でも大丈夫だ!」

その4点の嘘に本気で乗ってくれる優しいおじさん。


「え?」


「丁度おじさんアロンベータのはがし液を持っているんだ。だから、そのくっ付いてしまっている左手を出してほしいんだ。不自由でしょうがないだろ? 今じゃんけんをしようものならパーで負けちゃうよ? それじゃいやだろう? すぐに解放してあげるからね?」

ニチャア

勝ち誇った笑顔のおじさん。恐らくはがし液の件はハッタリだろう。そこまで用意がいいはずがない。まあ、4点の嘘には4点のハッタリでも十分であるしな。そして当然アリサの嘘を完全に見抜いている。そして握りしめた掌の中身も分かっているのだろうな。


「くそっ」

掌を開く。中にはくすんだ黒い石が、鈍い光を放っている。


「やっぱりアロンベータの件は嘘だったか……そして……あったよ、封霊石。君が盗んだんだよね?」


「……」


「ね、姉さん……」


「なんてこった」


「どう責任を取るつもりなんだ! お嬢ちゃん!!」


「早く戻さないと……って、戻しても幽霊って祠に戻るの? どうなの?」


「私だってこんなこと知らないよ!」


「みんな静かに! この子が逃げないように見ているんだ! この泥棒猫に」


「くうっ……泥棒猫? 盗んだ? それは人聞きが悪いわね。暗かったけどなんかよさげな石があったから……少し拝借……」


「拝借って……鞄の中にしまってそのままだったろ! いつ返すつもりなんだよ」


「さっきこっそり返そうとしたんだ! でもずっといたから返せなかったのよ」


「私のせいにするというのかい? それにまだ聞いていない言葉があるよ?」


「うう……ご、ごめん……でも信じて? そんな化け物を封印している石だなんて夢にも思わなかったのよ?」


「それは信じる。門番に聞いてびっくりしたよ……君は合言葉を自力で当てたらしいな……信じられないよ……」


「そうよ。簡単すぎたわ。もっと工夫して考えるべきね。あ、ところで今は8月だからいいけど、1月の場合睦月でしょ? 10月は神無月。そういう場合どうするつもりなの? それだけは知っておきたい!」


「え? そ、そんなの家の人に聞かないと分から……って! 話を逸らして逃げるつもりかい!」


「くっ」

アリサは論点ずらしのプロである。


「どこまで話した? ええと、あ、合言葉だよ。それを自力で解いたんだ! だから、この屋敷の予備知識一切ないままで入った上で無傷であの祠まで辿り着いたんだ。数多張り巡らされた罠にも一切掛からずにね。相当賢い子ってのは分かるよ。でも幽霊が封印されているなんてことまで予想できないよな。あれに関しては立札でも置かないといけないね」


「何も書かないであんなの封印されているなんてさ……不親切すぎるよ……」


「でも結果的に君が瘴影丸を世に出してしまった。その事実は変えようがないんだよ」


「……姉さん、さすがの私でもこれは擁護できないよ」

悲しそうな照代。


「照代、あんたにもこの気持ちが分かる日が来るわ。大人の女ってのはね、ヒカリモノに弱いのよ。まだ子供のあんたでは難しいかもしれないけどね?」


「そうなのね。指輪とか全く興味ないわ。記事を書く時に邪魔になるからね」


「でもこれ、今返したらどうなるの?」


「恐らく祠には戻らないだろうな。無双さんの力で再度封じないと……よほど愛着があるなら話は別だがずっと閉じ込められていたわけだからね。近寄りたくもないはずだ」


「だよね……じゃあこれ、返す必要ってあるのかしら?」


「うーん……もう、効果はないだろうね。最早ただの石ころだ」


「これでも十分綺麗だけどね」


「そう思うのか。だけど本来それは白のトパーズだったんだよ? 本来乳白色の宝石だったんだ。今は黒くくすんでいるけどね」


「じゃあ封印していく内に黒くなってたってことでしょ? 真っ黒になったら終了ってことなんじゃない? それじゃあ遅かれ早かれどのみち封印は解かれていたかもしれないよ?」


「う、そ、それを言われると……でも黒くなっているということはその間霊気を吸い取り弱らせていたとも考えられる」


「でも、黒くなりきったら結局その効果を失うんじゃないの? エアコンのフィルターだってそうでしょ? 真っ黒になったらもう取り出して洗浄して綺麗にしたものに換えるしかない」


「確かにそういう考え方もある。長い時間放っておいた皺寄せかも知れない。黒くなり切ったらもう吸い込めずに、霊の力が増幅して霊自身の力で封印を解いたかもしれない」


「そうよ」


「だが、その引き金を引いたのは間違いなく君だ。たとえ余命一日の命であっても、その日が訪れる前に奪えばそれは


『殺人』


になる。それと同じことだよ」


「でもこれ結果オーライとも言えない? 私が拝借したおかげで、危険な幽霊の復活をリアルタイムで把握できたんだから、むしろ


『ファインプレー』


よ。黙って放置されて自然崩壊してたら、それこそ手遅れになっていたでしょ? 被害者が山ほど出てから騒いでも遅いのよ」


「そう言われてみれば……一理ある、のか?」


「それにね、これは完全にこの家の怠慢よ。毒を吐いて空を飛ぶようなヤバい奴を、祠と石ころ一つで守りきれると思ってたのが甘いの。

私みたいな素人に一発で持っていかれるようなセキュリティなんだから、根本的に設計ミスなのよ。ただ置いてあっただけよ? じゃあ取るじゃん?」


「いやいや……」


「もっと二重三重にガチガチにロックしておけば良かっただけの話よ」


「うむ……ぐうの音も出ん。まったくもって、アリサさんの言う通りでござる。あの封印がいつまでも万全であると、わし自身が慢心してござった。かつて無双さんは、先代の真田行照故《まだいきてるゆえ》公がまだ存命であった頃にそれを忠告していた。拙者もその警告を耳にしていながら、歳月の彼方に忘却しており申した。……すべては拙者の不徳《ふとく》の致すところ。すまぬ」


「もうこの石にも封印の効果もなさそうですよね」


「そうでござるな……」


「じゃあこれ……私が貰ってもいいの? 照蔵さん!」

ぬ? 何を……


「ん? 今なんと?」


「これ、欲しいんですけど! お願いします!」

図々しいなあ……


「ふーむ、もういらない物だ。好きにしていい……はあ……」


「やったあああああああ(*'▽')」

アリサは封霊石・白のトパーズを手に入れた!


「お、おい……なんだこの子は……」


「全く反省してないじゃない!」


「姉さん……子どもじゃあるまいし……はしゃぎ過ぎよ……」

子どもじゃん。


「くううう、折角犯人を捕まえたと思ったのに何でこんな空気なんだよ……くそっ!」

不機嫌そうなおじさん。


「きれいいいいいいい2つ目ええええええw」

元気いっぱいだ。まるで小5の女子ではないか! それにしても2つ目とは? そうだった……確かにペンダントにはすでに先客があったな。そう、一つの宝石が入っている。それはブラックダイアだ。ホテルイーグルスノーで意識を失い暴走した筋肉達が暴れていた時、石像の目に入っていたものが粉砕され床に転げ落ちたのだ。それをうっかり踏みつぶして砕いてしまわぬように一時的に保護したものであり、いずれ返すものであろう? 今まさに白のトパースを自分のモノにした直後に


『2つ目ええええええw』


等と言ってしまっては、お借りしたブラックダイアも私物化してしまっていると白状していると同義なんだぞ! そんなのだめだよ! 本来な? こんな大袈裟なリアクションを、自分の罪がバレた直後にしてはいけないんだぞ。周りはみな箍《たが》の外れて自由に動き回れる瘴影丸の恐怖に震えているというのに……もう少し空気を読んで欲しいものである。


「大切に保管しなきゃ……ブラックダイアの弟さんの入場でーすwwあ、白いし、妹さんかもしれないわ! どっちにせよぶつからないように紙でくるんで入れなきゃね♬……傷になっちゃう……あぶねえあぶねえ……ほら、新人! 先輩にあいさつしなさいwww声が小さい……小さいは余計よ! 声が小柄だと黒く染められちゃうからねwwwwはっきり喋りなさいよ?」

そして、トパーズをペンダントにしまおうとする。すると? 照代が何やら思い出したように……


「……あら、姉さん? その


『真っ黒な』


ペンダント。確かイーグルスノーホテルでも付けていたわね。へえ、それ、中に小物が入るのね? 珍しいわね。初めて知ったわ」


「あ、見たことあるんだ。いつの間に?」


「白のワンピースに黒のペンダントだったから、結構目立っていたわ」


「言われてみればそうね。あのお祝いの時のあれなのよ……え? え?」

ブウン


「これって肌身離さず持っている感じなのかしら? もしかしてお気に入り?」


「そうかもね」


「でもさ、あの時のあれじゃわからないわw……もっと詳しく……え? ね、姉さん?」

照代の何気ない一言。


それだけだった。


それだけのはずだった。


だが……


☆パチッ☆


脳内で何かが弾ける。


「……うっ」


ブル……


ブルブル……


ブルブルブルブル……


震えは小さく始まり、


瞬く間に全身へ広がっていく。


「あのお祝いって……何?」


「……」


「姉さん?」

アリサは天井を見上げたまま、口を半開きにして動かない。


瞳から焦点が消えていく。


「ちょ、ちょっと……姉さん?」


キュン……

キュ、キュン……


ギュルルルルルルルルルル!!


「危ない!」


体が後ろへ崩れる。


照代は慌てて両腕で抱き止めた。


「お、おい! お嬢ちゃん!」


「アリサさん!」


ーーーーーーーーーーーーーーーQuietly, the looking-glass reveals.ーーーーーーーーーーーーーーー


どこかの教室。3人の男女の小学生が会話しているようだ。だが、ところどころノイズで掻き消えており、はっきりとは聞き取れない。


『ジ$ーン! 今日は、アリ+に%レゼ#トがあります』

 

                     ブウン

                 

            『な$よ? ジャー%? バカじゃない? それになんで呼$捨て&のよ!? さん付けしなさい! アホ』

                                            

                        ブウン


『ま=~あ、怒ら$いで怒らな&で』                                    

 

                     ブウン

   

                               『わあ、%#いな箱! アリ&*ゃんいいなあ。私も欲しいよ』


ブウン


    『残念、ダメな%だ。これは副*#祝いな$だ。さ=開けてみて!』            

                 

                                ブウン

                       

                     『フン! どうせ……あ、#ら? こ、こ%は?』

                 

                     ブウン


                               『わあああ、いいなああペ$%$ト? #っ黒だ#ど綺麗……』


             ブウン


   『あ、あんたにしてはい%&*スじゃない。しょうがないわね……今回?=は、貰って……あげる。特別よ?』


                   ブウン

                           ブウン

                                 

                       『本当? 良かった……付け&見て#。きっ?、似#う』


                                      ブウン

                   ブウン

 

『何度も言っ=#でしょ? 私には何でも+@うんだから……ほ?ね!』


          ブウン

                                   ブウン

                                      

                          『フフ、アリ@%#んらしいなあ。そこ、開けて見て? 小&#入る%だよ』

    ブウン


                  ブウン


「$え」


ブウン


               ブウン


ブオオン


ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ、怨


いつもと違う。


本来なら。


ここで意識は途切れている。


なのに、意識だけが残っていた。


「う……あ……」


ノイズが消えない。


頭蓋の内側を、巨大な鐘で何度も殴られる。


耳を塞いでも意味はない。


音は外ではなく、脳の奥から響いている。


鼓膜ではなく、記憶そのものが悲鳴を上げていた。


「や……め……」


ノイズはさらに膨れ上がる。


教室が割れる。


子どもたちの姿が砕ける。


声が伸びる。


笑い声も。


泣き声も。


全部。


全部が混ざる。


そして


ブツリ。


世界から音が消えた。


                はげしい  おとは  そこで  とうとつに  とだえた


                        《完》 《了》


「い、いや……おば……さん……助け……」

耐えかね、首を振り、照代に手を伸ばす。


「え? え? な、なに? どうすればいいの? 姉さん? 姉さん?」


「あ……がっ、あああああッ!!」


「……分からないよ……みんなどうすれば?」


「これも霊の仕業でござるか?」


「……おば……さん……」

震える手が宙を掻く。


「助け……」

その手を握る。それ以外出来ない。


「姉さん? 姉さん! しっかりして!」

返事はない。


その瞬間。


アリサの脳内に浮かぶ


『浄玻璃鏡』


が、これまでとは比較にならないほど激しく震え始めた。


ガガガガガガガガ


鏡面が白く輝く。


教室。


少女。


黒いペンダント。


笑顔。


少年。


涙。


誰かの背中。


知らない景色。


知らない声。


知らない記憶。


映る。


消える。


映る。


消える。


速い。


速すぎる。


脳が追いつかない。


「……ぁ……あ……」


鏡は止まらない。


まるで、


『見ろ』


と命じるように。


「いや……」


まだ。


まだ知ってはいけない。


その奥にあるものを。


光の向こう側。


そのさらに奥。


そこから、何かが這い出してくる。


闇だった。


色ではない。


存在そのものが闇。


底なしの悪意。


人の憎しみ。


呪い。


絶望。


何百人、何千人もの感情が、一つの濁流となってアリサへ流れ込む。


「やめて! 見たくない! 何なのよ! 何も見えない! 真っ暗! ママ! ママァ!!」

その叫びだけが、闇の中へ吸い込まれていく。


ブ   ウ   ン


最後に見えたのは、優しく微笑む母の顔。その笑顔だけが、ゆっくりと光に溶けていく。


「……」


そして……意識が……遠のく……


ーーーーーーーーーーーーー WARNING, WARNING. A Spectacular vision is about to be displayed... ーーーーーーーーーーーーー


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


最後の煉獄写しが始まります。斉藤や白川とは比べ物にならない程の強力な誰かの……罪。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。