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おすすめメニュー

ーーーーーー真田行家闇饗秘饌の間ーーーーーー


闇饗秘饌の間では、く一人の格好をした料理人が所狭しと動き回り、配膳を行っている。ぬ? く一人とは何かであるだと? ああ申し訳ない、これは女の忍者のことである。前回の話を覚えているだろうか? そこで人類史上初の発見をしてしまった私だったのだが、まだ見ていない方は是非見て頂きたい。そしてこれはもしも私自身が言い続けなくては、泡沫の如く消え去ってしまう程に脆く儚い内容である。何せ私以外この話を広めることはしてくれそうにないからな。孤高の才覚に妬み嫉みし、この大発見から目を背け、あえて聞こえないふりを決め込んでいるのだ。


「く一人」


が、その線の角度や重なりによって見事に「女」という一文字を形成するという、このあまりにも美しくも誰一人気付けなかった真理。これほどの世紀の閃きを前にして、なぜ誰も拍手喝采を送らないのか? 理由は一つしかない。

それは、私のあまりの才能が、彼らのプライドをズタズタに切り裂いてしまったからだ。だから私に嫉妬し、黙殺という卑劣な手段で、この大発見を歴史の闇に葬り去ろうとしている。

だが、甘いのだ……彼らが黙るなら、私自身が何度でも、この物語の中で声を大にして叫び続けるまでよ。そうだなwこうして言い続けるだけで、またしても文字数が恐ろしいほどに稼げちゃうんだからな! ふむ、やはり私は、この先の未来永劫後継者たちが束になっても敵わない、唯一無二の稼文字者なのかもしれぬ。

物語の配膳シーンという、本来なら一瞬で通り過ぎるはずの何気ない描写から、まさかこれほど重厚で、自らの才能への嫉妬に悶える


「余計な語り」


を盛大に引きずり出してしまうとはな。自分の脳でありながら、この留まることを知らないビビッとした閃きの嵐には、本人ですら恐怖を覚えてしまう。だからこそ、私はこれから冗談抜きで、本気でこの


「く一人」


という概念を我が作品の絶対不変の真理として、生涯を賭けて表現し続けていくのだ。もろちん……もちろんくノ一でも通じるが、く一人でこれから表現していく。冗談ではなく本当に本当なのでよろしくお願いします。

で、く一人達は配膳前に一度台の上におすすめメニューを置いているな。正方形の台だ。4×4分の皿が載っている。ここから生徒の席まで運んでいくようだ。

だが、あまりの忙しさにお膳を手裏剣を投げる動きで席に運んでいる。お転婆なく一人もいる。危ないなあ……

そして、入り口には


『おすすめメニューはお一人様一つまで!』


が書かれた立て札が立っている。と言うことはかつて、二皿頂いた食いしん坊がいたようだな。


「どいてどいて! はい! お待ちどう」


「これが生おすすめメニューでござるね? 遠くで撮影した時とは全然違うわ……輝きが違う。だけど、今はいいわ」


「え? 一緒に食べるんでしょ?」


「うーん……まあもとはと言えば姉さんのせいでござる」


「なんで?」


「さっき姉さんがお見合いの話をしたでござろう! その瞬間に食欲が無くなったでござるよ」


「は? そんなことで食欲落ちる女々しい女なんだ。折角の作り立てが冷めちゃうよ?」


「構わぬでござる」


「まあこのクオリティ、冷ましてもおいしいと思うからいいと思うよ! 流石膳さんだわ。私が唯一認めた男な件についてだわ! いい匂ーい!♡! にんにくの!♡!♡! バカでかい肉に、にんにくを付けたやつなのね? もう最高じゃん」


「おすすめメニューは拙者も初めてでござる」


「4ヵ月に一度のイベントだもんね。でもこの料理、どの国の料理だろう?」


「お褒めに預かり光栄です」


「あ、膳さん! 丁度話していたんですよ! この料理ってどこかの国の料理なんですよねえ? もし良ければ教えてください!」


「構いませんよ? それを広めるために作っています。これは中国の


『天辛麻辣(てんしんまーらー)カルビ』


でございます。調理法はシンプルで巨大な牛肉を焼き上げ、激辛麻辣スパイスソースをかけて召し上がっていただく料理でございます。器からはみ出すほどに大きいカルビに、辣油、花椒(ホアジャオ)、黒酢、ニンニク、他にも各種スパイスをブレンドした、皿にねっとりと絡みつく濃厚な特製ソースをたっぷりと注ぎ、豪快に焼き上げた料理でございます。辛さの中に、天にも昇るような幸福感に満ちた気分を約束する至高のカルビでございます」


「解説ありがとうございます! 耳で聞いただけでよだれが出てくる……おいしそう……食べる前にさらに楽しみが増えました! にんにくだけだと思っていました! でもそんなに色々使ってくれているんですね!」 


「いえ、にんにくは一番量を使っているのでそれしか気が付かない方がほとんどでございます。本来花椒が一番香りの面では強いのですが。少量なので気付かない方もいらっしゃいます。ではゆっくりお楽しみくださいませ。あ、ここだけの話、これにも少量の毒は入れてありますので気を付けて下さいね。ではこれで……」

調理場に帰っていく。


「はいっ! おばさんもありがとう! ナイスタイミングで呼んでくれたじゃん。匂いだけでも美味しいよ! 絶対忘れられない良い香り!!」


「これは偶然よ? もし知っていたら、それを押し出してもっと上手に姉さんをおびき寄せていたと思うわ」


「そうなんだ。でも私を魚みたいに言わないでね? まあ私、人魚のように美しいし、運だけはいいからね。その強運でこのタイミングに招待されたのね!」

何でそんな嘘を言うのだ? もう5話の28エピソードであるぞ? それまでに一度でもアリサに運のいい描写があっただろうか? 事件に巻き込まれたりママに置いていかれたり鳥に眼球をひっかかれたりカエルのベロで命を落としたり地獄に落ちたりと踏んだり蹴ったりではないか……


「それが割とタニシ……楽しいんだよなあw」

ぬ? また聞こえていたか……そうか、アリサにとってはこれらの苦痛も娯楽として見れちゃうのか……ブル


「え?」


「え? どうしたの?」


「また誰かと喋ってるでござるか? 気味が悪いでござるよ……」


「まあまあ、そこまで騒ぐことでもないでしょ」

私の心臓は大騒ぎなんだよなあ……


「そう? じゃあ座りましょう」


「楽しみー」


「お待ちどうでござる! 召し上がれ!」

く一人が食卓に皿を置く。


「美味しそうでござる」


「いただきます」

パク


「どうでござる?」


「うーん……」


「え?」


「辛い、辛すぎる……」


「ええ?」


「その、舌がヒリつくし……炎が口から出そうよ……熱い……体が燃える……湯気となって天にも昇りそうよ……」


「うん、膳さんも言ってたしね、確かに辛そうでござるね。口から火が出るなんて前代未聞でござるよ。でも先に食べてもらって良かったでござる」


「人を毒見役みたいに……え? あれ?」


「え?」


「なんか変なところが空いてる」

テーブルを指さしながら食べる。


「ん?」


「気のせいかもね」


「そう? 変な姉さん!」


「でも……口に運ぶ手が止まらない……うまい、うまいよこれ。朝からこんなこってりしたものを食べているはずなのに……油が上質なのかしら? 意外とあっさりとしているのよ! この香辛料が抑えてくれているのかしら? 幸せえ。もう一つ食べたい!」


「お一人様一品まででござるよ姉さん!」


「だよねえ……ねえ、その料理、姉さんに寄付したいと思わない? ほら、あんたは妹のくせに大巨人じゃない? 私はほんのちょっぴり小柄でしょ? だから肉で成長しないといけないし」


「お一人様一品まででござる!!!!」


「そうよね……立札にもあったわ。これをおかわり自由にしたら国家予算が傾くわよ」


「大袈裟でござる!」


「じゃあお米ある? メイドさーんお米持って来てえ。あ、あとお茶も」

敢えてく一人と言わず、メイドさんと言った。これはやはり毬栗とのやり取りがあったからだろうな。


「はいはい」

コト コト


「これはお米と一緒に食べるべきね」

もぐもぐ ごくごく


「はあ、食欲旺盛でござるねえ」


「まだ食べてないの? 腐っちゃうじゃん。そんな勿体ないことするんだったらもらうよ? いいでしょ?」


「一応結婚を考えている乙女でござるし……でもあげないでござる。姉さん、毒を忘れていないよね?」


「あ……そっか、これにも入ってるんだったよね……二人分食べたら流石にまずいわね……じゃあおばさんが後で食べた方がいいね」


「そうよ! おすすめメニューを手放すのは嫌でござる。部屋に持ち帰ってゆっくり食べるでござる」


「まあ、いずれ本当に腹が減って死にそうになる時が来るもんね。それまで取っておけばいいわよ……ちぇっ」


「そうでござる」


「はあー楽しかったあぁ……おなかいっぱいになったしどうしようかな?」


「私の部屋でどの先生がいいかを考えましょう?」


「自分のことでしょ? 私よりも1周り以上年老いてるくせに何でもかんでも相談しないの!」


「人生が掛かっているからね。手紙でも言ったでしょ? 姉さんの推理をこの場面でも生かせないかと思って。一緒に考えて欲しいでござる。それとも忘れちゃった?」


「覚えてるよ。何だったらダイレクトメッセージにまだ残ってるし」


「おいしいごちそうも出したんだからお願い!」


「もう少しこの屋敷を回りたいんだけどなあ」


「終わったら回っていいから」


「仕方ないか」

しぶしぶと照代の部屋に向かう。


「ここでござる」

照代の部屋は3階にある。


「いい部屋ね……ん? なにあれ?」

女性の部屋と言った感じ。ただ少し気になるのは部屋にロープが張り巡らされており、そこに新聞紙がいくつも引っかかっている。


「これは過去の栄光でござる」


「まさかおばさんが書いた記事? 女々しいわねえ」


「また言った……何度も言うけどそれ、女の子に使う言葉じゃないわよ? 男に使う言葉じゃない?」


「男勝りな性格だったからね。覚えてないと思うけど、虎ちゃんと白熱の口論を展開していたわ。それに圧倒されたもん。その時のおばさんのお尻は誰よりも大きく、偉大だったよ?」

アリサは照代と虎音の戦いを照代の背後から見ていたのだった。


「あったわね……もう何年も経ったみたい……てか虎ちゃんって? あの女のことを言ってるの?」


「ああ、ボケ人間コンテストでも五鳴館や地獄でもお世話になったからねえ。結構会ってるのよ」


「あ、そう言えば読んだでござる。どこにでも出てくるなこいつって思って読んでいたでござるよ」


「そうよ、結構レギュラー寄りのキャラなんだ」


「うらやましいでござる……拙者も2、3、4話も参加したかったでござ……ってかお尻は余計よ! 大きいのは器だけにしといて!」


「つっこみ遅すぎイ!」


「それは仕方がないでござる……でもそんなこともあったなあって……まだ一週間ちょいしか経っていないって言うのにね……もう私、そんな力はないと思うわ。急激に衰えた感じ」


「でも改めて思うけどそんなにひどい毒だったんだね」


「耐性はあったみたいで生き延びたわ。でも完全回復は出来なかったのよ。なんかとっても頭が悪くなった気がする」


「ござる語と普通の言葉をバラバラに話してるのもその影響か」


「そうでござる。まあ親がござるを言えとうるさいの。普通にしゃべっていると高確率で指摘してくるでござる」


「普通に面白くないし止めて欲しいと思ったけど、あの時受けた毒の副作用なのね? さらに親に言われてるのもあるんだ。ならしょうがないのね」


「別に笑わせる目的でやってるわけじゃないから……」

ぐーきゅるる♪


「あ、少しお腹が? 今なら少し食べられそう」

そう言うと部屋に運んだ肉を口に運ぶ。

もぐもぐ


「そうね。どんなにマリッジブルーになっていても腹は減るからね。どうだ? うまいか?」


「誰目線で言ってるでござる? う、これは美味しいわ! 辛いけど全然気にならない! 流石おすすめメニューねえ」

うるうる


「泣くほどうめえか。よしよし」


「何かになりきってるのね? もぐもぐ。辛さで涙とか汗が……あ、もしかして料理長のモノマネかな? そんなこと彼は言わないよ?」


「そうね」


「はあ、お腹いっぱいよ」


「この後どうするの?」


「私のお見合いのあれこれを話し合うでござるけど……いやだったら一人にして。お腹いっぱいになったら一人で出来そう。一人で考えてみる」


「どうしようかな?(もう一度あの部屋に行ってみたい……)うーん、じゃあ出て行く」


「そう、親身になってはくれないでござるね」


「そうでござる。自分の人生でござる」


「はああ……お見合いが終わって3日以内に決めた人ともう一度話をしろって言われてるから憂鬱だわ」


「じゃあね」


「ひどーい」

容赦なく閉まる扉。


「時には鬼にならなきゃね。じゃあもう一度あの部屋に。あの時は寝起きで空腹だったから倒れただけっしょ。今はエネルギー満タンだ!」

再び2階のmetamaterialと書かれた部屋へと向かう。だが気分が悪くなった理由は空腹だけとは限らないのだがな。また同じミスをしなければよいのだが……


「お邪魔します」

再びmetamaterialと書かれたふすまの前に立つ。そして、その引手に手を掛ける。

グッ


「え?」


ググッ 


「開かない? 鍵かけられた?」 

じー

ふすまの取っ手を見てみる。すると、そこには家紋らしきものが。


「なんか鍵穴がある……あら? これって家紋じゃない? それにしてもなんか嫌な感じな家紋ね。でもそれ以前にふすまって鍵かけられたっけ? ここだけ異様じゃない?」

ぐいぐい


「ダメだ……でも確か……食事前は開いていて、そこから話したり食べたりで1時間くらいでしょ? もう閉められちゃったのか……まさか……」

ドスッ


ふすまを殴ってみるが。力1の攻撃ではびくともしない。


「いてて、左手の指全て骨折したかも……もういい、おばさんのところに戻ろうっと」

すると


「ふう、食べた食べた。お腹いっぱいで汗だくだよ」


「確かに……でも辛いけどおいしかったね。ああいうの毎日食べたいよ」


「普通の食事だって美味しいわよ」


「確かに」

学生が教室に戻ろうとしている。イ組の生徒だ。なぜ分かるかと? それは簡単だ。彼らの装束の背中には大きくカタカナでイと書いてある。アリサは声をかけてみる。


「あの? この部屋ってなんなんですか?」


「え? そこは俺達もよく分からないんだ。立ち入り禁止だからね」


「そうなんですか? でも朝はカギが開いていて、なんかすごい嫌な気分になって吐きそうになったんですよ。何か変な見えない何かが揺らめている気がして。その正体が知りたくて。一番この家に長く来ているイ組の人なら知っているんじゃないかって思って」


「そんな部屋だったんだ。俺達も一度も入ったことはないんだ。ごめんよ」


「ありがとうございました」(あの部屋って開いていること自体奇跡だったのかな? 何で開いていたんだろう? また調べたくなっちゃうじゃない……)

彼女は好奇心旺盛。すると……?


「お、おい! だ、誰だこいつは? みんな来てくれー」

おや? 一階から声がする。何やら起こったみたいだな。


「何かしら? まあ暇だし行ってみよ」

とことこ


「あっ」

一階に行くと、何かを囲むように人だかりができている。それを自慢の小ささでくぐり抜けると……

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