真田行家 お見合い 忍神 忍
ついにお見合いが始まる。アリサもいつのまにか場に馴染んでいた。そして正座して忍神父の話に耳を傾ける。
「今日はこの様な素晴らしい席を設けていただき感謝でござる。御覧の様に当人は相当緊張しているでござるがよろしく頼むでござる」
「よろしく頼むでござる」
ペコリ
「うむ、よろしく頼むでござる。この度、やっと娘が重い腰を上げた事実に感動しているでござるよ。でも表情を見る限り相当緊張しておるようだが、いつも見ている顔でござろう? そろそろ慣れてほしい物でござる」
「忍神家は忍者の血を引いているとのことでござる。そして、忍さんも小さい頃から忍者として修業を続けていると聞くでござる。相当な腕と聞いたでござるが? でもその実力は拙者も知らないござるが」
「はい、能ある鷹は爪を探すというでござる。小学校は行かず、その時間を走り込みや短刀の素振り、手裏剣を使用し、出会ったイノシシを狩ったりした物でござる」
「成程でござる」
おいおい、登場人物が全員ござるでは誰が誰だか分からん状態になっておるぞ……難しい局面となってしまった……語尾はなるべく統一しないようお願いしているのであるが……忍びというものは頑固であるな……読者さん達はついてこれているのでござろうか? だが普通に喋るより3文字も多く喋ってくれているという事実を見逃せない。このメリットを利用しつつ、誰が喋っているかを判別する技術さえあればもっといいお話になるのだが……語りランク9にならねばそれは実現不可能である。もどかしいな……
「ああ、それで勉強できなかったんだwでも探しちゃ駄目よ? 同じ鷹の爪でも辛み調味料にして使うあの鷹の爪なのかしら? 鷹が鷹の爪をさがすってw四川料理でも料理中なのかしら? 爪は隠さなきゃwでもこれでなんとなく分かったわ、典型的の意味が分からなかった理由は、山でイノシシに典型的なんて言葉を使用しなくてもイノシシは刈れるもんねえ。力と技と素早さが高ければいいもん」
「なんと! 初耳でござるわ。忍……」
忍の母親が驚き涙がにじむ。
「すまんでござる。だが学校では忍術を一切教えてくれないのでござる。小学校教育は全然駄目でござる!! 拙者は忍びの道を究めたいがために勉学を捨てる決意をしたのでござる!」
まあ、義務教育に忍術は無いからなあ。でも相談せずに自分勝手に動いちゃ駄目じゃないか?
「それで給食があるのにお弁当を要求したでござるね?」
「そうでござる。それに関しては母上に無駄な労働を強いてしまい申し訳ないでござる……だが、拙者が自由なままに卒業するために仕方なしに修行したでござる」
「てかそんなに自由な生活でどうして卒業できたのでござる?」
アリサよ、更にややこしくなるのでござる参戦はいかんよ?
「代弁を田中邦夫殿にお願いしていたでござる」
「あいうえお順で、たの後が忍神になるんだ。結構飛ぶのね」
「少子高麗化でござろうなあ」
「高齢化でしょwどんな間違い方よw子供が少なくなったら高麗人参にでもなる現象ってかw」
「な? そ、そんな現象あるでござるか?」
「ないよw」
「す、すまぬでござる……で、田中君は声真似が達者で、拙者の声と瓜二つなのでござる」
「へえ、あんた良い田中を持ったのね……で、代弁のお礼は何かしているの?」
いい仲間と訂正を要求したいな。しかし代弁者が居たとて6年もの間、田中と同じクラスになれたのか? 彼は強運のスキルでもあるのだろうか?
「もちろん。イノシシの最高の部位を差し上げていたでござる。拙者は強くなった上で卒業出来る。そして田中君はイノシシの肉を手に入れられる。正にワインワインの関係でござる!」
ワインを交わす仲ということなのかあ?
「それを言うならwinwinの関係でしょ! まあボタン肉の鍋にワインは合いそうwでもあんたやっぱりちょこちょこ間違えるよね。ボロが出るから喋らなきゃいいのに」
酒はまだ早いよ?
「すまぬでござる。でもお見合いでは喋らなければならんでござる……黙っていては何も進まぬでござる! 拙者、この学の無さは諦めているでござる……でも、何かを極めるということは、それ以外の何かを犠牲にしなくては出来ないのでござる……」
「古い考えね……」
「ほう? では何か方法があったと?」
「当たり前でしょ! まず地頭を鍛えれば、学校の勉強をしつつ、忍術も極められたと思うのよねえ」
「まさか……そんな帰巣天蓋な方法があるなんて……地頭とはそんなにもすごい頭なのでござるか?」
「そうね。例えば体育の授業の時にはパワーアンクルを付けて授業を受けるとか……でも帰巣天蓋じゃなくて奇想天外ね」
「パ、パワーアンクル?」
「そう」(兄の部屋にあったから咄嗟に出ちゃったけど)
「それはどんな効果が?」
「足に重りを付けるのよ。足に巻くことが出来る重りなの」
「何故でござる? そんな囚人の様な真似をする意味が分からんでござる!」
「それをつけて走ると、外した時、物凄く体が軽い気分になるのよ」
「そうか! 重りを付けて負荷をかけると、少ない時間で強くなれるということでござるか?」
「正解! あんた何もつけずに長い時間走り込みしているんでしょ? その退屈な部分を短縮出来るのよ。だから5時間くらいの授業を受けつつもしっかりと修業が出来るということになる。親にも迷惑かけることなくね」
「ぬう……母上……」
「……忍、こんな小さい子に教えられてるでござるよ?」
「お母さん! 小さいだけは余計でござるよ?」
「ああ、すまんでござる」
「これは地頭が良ければ思い付けるの。筋トレをする前に、それに有効なアイテムは無いのか? って考える力。それが地頭ってこと!」
「地頭地頭地頭じたばたじたばた」
じたばた じたばた
「混乱するな! それさえあれば、学校に行く時間を修業にするなんて馬鹿な考えは浮かんでこない筈よ? 我武者羅に鍛えることにフォーカスしていては勿体ないよ? 人生は有限なんだよ? 色々な情報があるのにそれを知らないまま大きくなっちゃったってことで、大幅に人生を損しているの。お兄さんの照男さんだってパワーアンクルを持っていたよ? その時点であなたは照男さんに負けているってことなのね? 同じ忍者なのにそれを知らずに年を取ってきちゃったってことよ」
「うう」
「あんたは速く走る技術と、短刀を上手く扱える技術と、イノシシを手裏剣で狩る技術しかないってことなのよ? 少ないと思わない?」
「少ないで……ござる」
「そうよ……流石にまだ入るでしょ? まだ覚えるスペースあるよね? 放り込めるはずだって。我流で思い付いた技術はそこまで有効ではないのよ? でも、今知ることが出来たね? 本当に大事なことを。効率よく生きる知識を。まだ25だし視野を広く持って生きて行ってよ?」
「はあああああああ」
大きくため息をつく忍。
「せ、拙者は……こんな、こんな単純なことすら今まで気づかずに生きてきたのでござるか……」
「ユーチューブ」
「え?」
「今からユーチューブを見なさい」
「何でござるか?」
「それを見続ければ今とは比べ物にならないほど賢くなれるわ。色々な分野のプロが、何年も培ってきた自分だけの技術を動画にまとめてくれている。早く走れる技術も勿論見ることが出来る」
「で、でも見方が分からな……」
まさか! そこまでなのか?
「甘えてんじゃねえ。それくらい自分で調べろ! 今、初めて使うわ。この言葉、今まであまりいい響きじゃなかったから使っていなかったけど、今ここで開放するわ」
「な?」
「ググレカス」
「は、はい」(はて、ググレカスとは? これも分からないでござる……だがこれを聞くのは絶対に怒られるでござる。と、いうことは……拙者がこれからすることはググレカスを調べ、その後、ユーチューブを調べる。これで良いはずでござる)
「頑張れば1分で見れるようになるから」
「はい! アリサ師匠!」
おお、またしても弟子を作ってしまったな。必要以上にカリスマ性高いなあ……
「あ、あの、忍神先生? アリサとばかり話していないでそろそろ私とお見合いしてくれでござる」
「そういえばそろそろ拙者達は退室するでござる。で、ではこれからは若い人だけに任せて」
「え? 心細いでござる」
「照代! 我慢するのでござる」
「うう」
「母上も出て行ってしまわれるのでござるか?」
「ええ、頑張るのでござるよ忍!」
「し、承知!」
4人は出て行ってしまった。
「ここからが本番ね」
「心細いけど何もしないわけにもいかないでござる。じゃあ始めようか」
「そうでござるね。では何から聞こう……で、では好きな野生動物は?」
「え? なにそれ? え、ええと、鷹とかかしら? なんか空中のスナイパーみたいでかっこいいよね。私は鷹になりたいなんちゃってw」
「むう……」
「あれ? どうしたの?」(瞬時に出した面白ネタだからすべったのかしら?)
「そ、それはまだ捕らえられぬでござる。投擲の技術がまだ足りぬ故……」
「ああ、好きな動物ってそう言う……捕らえて食べてもらおうとしたんだ」
「そうでござる……はて?」
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも……その、どうしたの? と言っている本人でござるよ! 何故お嬢さんはまだ居るのでござる? この場に必要ないでござる! 今すぐに出て行くでござる!」
「あ、あの」
「あのあの言って困っていてもダメでござる! この場は照代お嬢さんと二人で話すことになっているのでござるよ!」
「え? えっと、えっと」
当然起こり得る問題だ。だが想定外のことを言われたようで困惑する照代。そして……
『ちょっと……めっちゃ怒ってるよ? その辺の事情は誰にも説明してなかったの?』
小声で照代に耳打ちする。
『もちろん私の独断で呼んだのでござる。誰も知らぬはずでござるよ。適当に説得してくれでござる』
小声で耳打ちを返す。
「もう!」
「お二人とも、何をしているのでござる? 内緒話は気になるでござる」
「ごめんごめん、えっとじゃあ……お見合いってのに興味があって、リアルで見てみたい系女子なのよ。はるばる海外から来たんだよ? 邪魔しないからいいでしょ?」
何ですぐバレる嘘つくの?
「うーむ海外から……確かに金髪でござるなあ。折角遠路はるばる参っていただいたのに申し訳ないでござるな! では照代お嬢さんがいいのであれば。どうでござる?」
騙されちゃった! だが参っては謙譲語であるな。ここはお越しいただいてが正解だが、彼は学が無いのでこのミスは仕方がないと言える。
「うーん、そこまで言うなら仕方ないと思う。私は別に構わないわ」
本来二つ返事で返したい所を抑えてしぶしぶ了承する形をとる照代。
「じゃあおとなしくしていて欲しいでござる。はあ、それにしても初のお見合いだと言うのに異物混入でのお見合いになってしまうとは」
「はいっ! って! 異物は余計よ!」
「おとなしく!」
「くう」
「で、田中君にイノシシをプレゼントしたみたいに鷹を私にプレゼントしてくれようと考えたのね? 悪いけど受け取れないわ。もちろん野生動物全般もらうつもりはないからね?」
「そうでござるか安心したでござる! では、好きな筋トレのメニューを聞きたいでござる」
「え?」(これから結婚する相手に聞く質問かしら?)
「ええと……腹筋は好きでござるね。腕を後頭部に回して起き上がるやつね。3回くらいしかできないけどw」
「危険でござる!」
「ええ?」
「いいでござるか? 腹筋で後頭部に手を回したら手で頭を引っ張ってしまう危険性があるでござる。
結果、首に強い負担がかかり、頸椎を痛め、腹筋ではなく首で起き上がるトレーニングに変わるでござる。
これは特に首、肩が凝りやすい場合要注意でござる」
「ちょ、そこまでいけないことだったの?」
「そうでござる!! 手は軽く添えるだけ、肘は開きすぎず、顎を引きすぎなく、視線はおへそ付近が理想でござる。
そして、頭を丸めるのではなくみぞおちを床から浮かせる意識が大事でござる。首は固定、腹筋で体幹を曲げる動きを意識するのが正解なのでござるよ!」
「結構詳しいのね」
「もしトラブルを避けたいなら胸の前で腕を組んだり耳の横に手を添えたり、腕を前に伸ばす。これだけで腹筋が正しく鍛えられるでござる!」
「うるせえ」
「ぬ!」
「こらアリサ! 折角忍神先生が正しい腹筋方法を無料で教えて下さっているっていうのにそんな言い方ないでしょ?」
「お見合いは知識を分け与える場所じゃねえだろ。広く浅く知ればいい……ったくおめえらだけでやらせないでよかったわ。私みたいなスンゲエ保護者が居ねえともこみち……横道ばっか逸れて話が一向に進まねえ」
なんでそこで怒るんだアリサよ……横道に逸れたほうが沢山稼げるからいいじゃん。あっ! 間違い間違えた……もう一度頼む……
『もこみち……しまった! 横道に逸れた方が沢山稼げるじゃん』
が正解だった……こうしないと
『もこみち……しまった!」
と、本来稼げるはずだった文字数をかさましせぬまま話を進めてしまったということになる。これは大打撃である。私としたことが稼げるタイミングをスルーして普通に進めてしまった……これじゃあ稼文字道正統後継者の名が廃る。私はここで誓おう。もう間違い間違いはしない……とな!
「もこみち……」
「人のもこみちを笑うんじゃねえ!!」
「笑ってないよ!」
「お嬢さん落ち着いて……時にアリサ師匠はなぜこんなに詳しいのでござる? 一見生まれたばかりの子羊程度の大きさなのに拙者よりもたくさんのことを知っていて……少々不気味でござる」
「こんなの教えてもらわなくても分かる。これに関しての勉強なんてしていないわ」
産まれたばかりの子羊に対してツッコミを入れないだと? 確かにその響きは可愛かった。だが遠回しに小さいって言われていることなんだけどなあ。アリサは小さいと言われるのは嫌うが、可愛い表現であれば許してくれるということなのだろうな。これは有力な情報ではないだろうか?
「そう、この子は刑事の娘らしいのよ。で、色々と……この私ですら知らないことまでを詳しく知っていてねえ。私が毒で苦しんだ事件の犯人も捕まえたのよ」
「なんと! 命の恩人でござったか。感謝いたす!」
「え、あの、毒から守った訳じゃないからねえ。生き延びたのはこの人の生命力の強さオンリーだったよ。私はそれに対して怒って、犯人探しただけよ」
「それでもそんな悪魔を牢に閉じ込めただけでも安心でござる」
「何が悪魔だ! 八郎さんを悪く言うな!」
「ぬ?」
「この子、犯人と友達なのよ。一緒にカラオケ行くって約束までしていたね。だから犯人のことを悪く言うと噛みついてくるからね」
「複雑なのでござるな。でもそれでも逮捕に至ったというのは……辛かったのでござろうな」
「そうよ。ってか私の話はいい! さっさと見合いを続けよ!」
「そうでござった。では腹筋が好きなのでござるね? 他には何を聞こう……何を聞けば……」
「筋トレしか話題なさそうだもんね。じゃあおばさんもなんか質問しなさい。なんでもいい」
「完全にアリサのラジコンでござるね。でもそれが心地いい。なんででござるか……まあいいでござる……じゃあ、好きな銅鑼衛門のキャラクターは?」
「何でもいいけどそれかあw」
「え? 銅鑼衛門でござろうか?」
「やっぱり主人公がいいか。どんなところが?」
「それしか知らんでござる」
「ああ、タイトルから判断して銅鑼衛門は登場人物にいると判断したわけねw」
「じゃ、じゃあええと? どうしよう……もう思いつかないでござる……あ、好きな忍具は?」
「忍具ってwww手裏剣って答えればいいの?」
「くそう……これでも必死で考えたのに……笑わないで欲しいでござる……照代お嬢さん……この娘、すごくジャマなのでござるが……」
「分かるよ。でもちょっとだけ我慢してね。好きな忍具かあ……あの竹筒かしら?」
「竹筒?」
「ほら、水の中に入って息が出来るようにする竹のやつよ」
「渋いでござる! 確かにあれは忍者たちの命を守る大切な忍具でござる! 拙者でござるか? 拙者は背に差している刀、忍刀桜頭突きでござ……あっ!」
頑張ってはいるようだ。だがまあ素人の稼ぎ師ではこの程度が関の山であろう。
「桜の木に頭突きしちゃったw」
「失敬……桜吹雪でござった……響きが似ている故仕方がないでござるね。今後はこんなことは無いようにするでござる」
「成程ね。自分の大切な刀が一番好きな忍具……いい感じじゃない? じゃあ好きな食べ物ってある?」
おお、照代も慣れてきたようで自分から積極的に質問を始めたぞ。
「うさぎの唐揚げでござる!」
「え……」
「あ、ウナギのかば焼きでござる」
「取り繕う必要ないよ。野生のうさぎを料理してるって感じか。でも気を付けてね? 細菌や寄生虫、まれに野生ウサギが持つ感染症とかがあるからね。生で食べたら寄生虫まみれよ?」
「流石に火を通すでござるよ」
「うさぎは愛でるものってイメージだけど食べれもするのね……なんか不快……気分も悪くなってきちゃった」
「あわわ……拙者もう何もしゃべれないでござる」
「玉切れ早すぎんよwでもこの人を私なりにレビューすると、筋トレをこよなく愛し、風邪とか最近の細菌にも負けないような健康体で、忍術しか知らない生粋の忍者ってことは分かったわ。で、性格も一途で、浮気とかすることも無さそうね。これは結婚相手としてはとってもいい物件かもしれないよ?」
「すごい!」
「すごい!」
照代と忍神が同時に驚く。
「そろそろ次行きましょう? いいよね?」
「はい、アリサ師匠」
「はい、アリサ姉さん」
「師匠はわかる。でも、おばさん? 何でわてがおばさんの姉さんになってしまうねん!」




