28.魔王が復活しやがりましたわ!
研究発表から6ヶ月が経ちました。
卒業まで残り3ヶ月ほど。
着々と卒業単位数を稼いで、こないだの卒論で卒業資格をゲットしてしまった為、この半年学園生活をしていたはずなのに、ある意味で学園生活からほど遠い生活を送っていた。
ノエール様からの勧めもあり、裁縫部に入っていたのだが、私の生息域が、裁縫部部室か他属性魔法研究室のどちらかになった。
というのも、ノエール様のお世話があるものの、それも朝と夜だけ、たまのお茶会に駆り出される以外は、当初の目論見通りかなり自由時間ができたからだ。
気が付いたら部室の主と呼ばれるようになっている。
完全にダメな大学生気分だが、ちょっと心地よい。
新しいファッションを生み出すべく、ノエール様を着せ替え人形にして新しいドレスなんかを作りつつ、研究室では闇属性魔法を使えるように研究している。
なお、研究ははかどらず、寮のクローゼットばかりが埋まっていく現状だ。
闇属性魔法は人間が使っていいものじゃないのかもしれない。
幾らゲームで使えていたといっても、ここは一応現実。
なんでも思い通りになるわけじゃない。
その1、触媒のおかげでルクレール様は魔法の扱いがうまくなった。
関わりたくなかったが、彼魔力量だけは腐るほどあるので、モルモットにした結果、触媒を使うことで四大属性の上位魔法が全部使える化け物に進化してしまった。
ゲームでも何かのコツをつかんでから四属性を使っていたので、素養があったのか、触媒を経由しないと属性が安定しない障害でもあったのかもしれない。
その2、パトリック王太子が賢くなった。
ノエール様の影響だと思いたいが、男爵令嬢の私がやたらと成果を出しているのを見て、受け身じゃなくて自分から動こうと、勝手に改心されたらしい。
関わっていないのに、心を入れ替えてくれてよかった。
このままヘタレ王子になって傀儡になるぐらいなら、いっそ暗●してノエール様をと本気で考えていたほどだ。
その3、エイブラムス様が宰相を取り押さえてしまった。
王太子がしっかりしたことで、家での立ち位置が微妙になっていたエイブラムス様が、宰相の野望を暴いて、国王陛下へ突き出してしまった。
こちらも、波及効果的に改心出来たんだろう。
おかげで懸念していたラスボスが、国家反逆罪で獄中です。
エイブラムス様も今まで宰相が行っていた野望や暗躍の数々がわかると、正義感が勝ったらしい。
実の親でも、しっかりと突き出した。
で、国王様から功績をたたえられエイブラムス侯爵となって、まだ学校で王太子を支えている。
と、言う状態で、見事にメンヘラ男子達から逃げることができた私は、ノエール様のお世話をしながら友人も増やしつつ、平穏な生活を送っていたのだが、最近やたらと魔物の活動が活発だ。
スタンピードのようなことにはなっていないが、今まで出現しなかった王都内にまで魔物が現れたりしている。
もしかして、獄中の宰相が何かしているんじゃないだろうか?
「ノエール様、ただいま戻りました」
「おかえりエリーカ。今日も討伐?」
「はい、急に騎士団から呼ばれまして」
「最近はやたらと魔物の出現が多いわね」
「うーん、やっぱり魔王でも復活したんですかねぇ?」
「前にも聞いたけど、本当に魔王なんているのかしら」
「いろいろな文献を読みましたけど、魔王って過去倒されたことがないんですよ。封印されただけです」
ゲームの知識だけで人を説得するのは無理だと考えた私は、ブロッサム公爵家の図書館や学校の貸出禁止書庫などで、いろいろな文献を調べた結果、魔王という存在はやはりいることと、討伐されていないことがわかってきた。
最後に記録されている封印された場所が、なんとブロッサム王国のお城の下。
何となくそんな気はしていたが、少なくとも200年前の記録に残っている。
それと、この魔王と呼ばれる存在、魔物なのか疑問がある。
流石に1000年前から存在しているので、まっとうな状態の人間とは思えないが、もしかすると闇魔法が使える人間なんじゃないかということだ。
魔物自体に知能があるものがいない(ドラゴンを除く)ので、魔物を操れるという時点で何となくそんな気がしている。
そして、性別が定まらないのも気になる。
時代によって男だったり、女だったりする。
もしかして、魔王という名のシステムでもあるんじゃないか?と思っているぐらいだ。
宰相が魔王の力を借りた指輪があるように、魔王としての力を使えるアイテムが、その人を魔王にするのでは?と考えていたりする。
ただ、該当するようなアイテムの記憶もなければ記録もない。
割と八方ふさがりだったりする。
私はメイド服に着替えて、ノエール様へとりあえずお茶を出す準備を始めると、1羽のハトが訪れる。
白いハトなので、王城からだろう。
ノエール様に緊急の呼び出しかな?
「エリーカ、お茶はいいからすぐにドレスに着替えなさい!王城へ行くわよ」
「どうしたんです?」
「魔王が復活したから直ぐに来いってお父様が」
「まじすか?!」
ここにきて魔王復活???
どうやって分かったんだろう。
王城からわんさか魔物がわいたりしていないだろうな…
私は着替え途中のメイド服を放り投げ、慌ててドレスに着替える。
ノエール様と一緒に馬車で王城へ向かう道中の空は、重く鉛色から黒く染まりつつあった。




