13.二人目の残念イケメンはここにいたのかぁー
更生上おかしなところがあったので修正しました
翌朝、ノエール様と朝ご飯を食べたら、光の戦士の衣装に着替えて、公爵家の訓練場へ向かう。
そこのには、カナン様ともう一人、絶世の美男子がいた。
水色の髪のイケメン。
こんなところで残念イケメンの一人、フリート伯爵家の一人息子、ルードヴィヒ・フリート伯爵令息と会うことになるとは思わなかった。
「おはよう、二人とも。コイツはフリート伯爵家のルードヴィヒ。彼と手合わせできないだろうか?」
カナン様は申し訳なさそうにルードヴィヒ様を紹介してくれた。
「初めまして、フローレンス男爵の一人娘、エリーカと申します。今は光の戦士エリカですので、エリーカとは呼ばないでください」
「…なんなんだ、このめんどくさい女は」
「ルードヴィヒ様、私のことも光の戦士ノエルですので、ノエールとは呼ばないでくださいましね」
「え、どうしたのノエール…」
私に向かって明らかに面倒くさいというような顔をしていたルードヴィヒ様は、ノエール様の一言で固まっている。
根がまじめだからなぁコイツ。
こういうお遊びについていけないんだよな。
だからメンタルがやられちまうんだよ。
ルードヴィヒ・フリート。
父親が第一騎士団長で、将来は騎士団長に、と言う夢を持つ少年だ。
問題は、先にも述べた通り真面目過ぎたこと。
こやつ、カナン様の次に物理攻撃が強い男なのだが、メンタルがカナン様以下の豆腐なのだ。
不正が許せない性格なのだが、現状騎士団でも市民との間の賄賂など当たり前の世界。
しかも騎士団は結局、貴族社会。
派閥もあれば、コネもあるし、不正もある。
そういったことをパワーで打ち破れれば良いのだが、「力だけがすべてではない」とまっとうな考えを持っているルードヴィヒは、正義と不正の現実をみて、騎士とは何かと考えだし、ゲーム開始時には剣が握れない状態になっているのだ。
で、主人公たる私との交流を経て、最終的には剣を取り共に戦う。
自分の気持ちに正直に生きる主人公を見て、ルードヴィヒも自らの信念を突き通し、騎士団を改革するために、主人公と共に、騎士団入りをする。
というところでゲームは終わるんだけど、まぁメンタルが豆腐すぎる。
清濁併せ呑むことができないやつが、貴族なんてできるわけがないのだ。
綺麗ごとだけで世の中回るほど、みんなが仏様じゃない。
ましてや、この世界での騎士への賄賂なんかは、チップみたいなもんだ。
町を守ってくれてありがとう、なんかあって貴族が絡んできたら助けてねってやつだ。
騎士も基本は貴族なので、よほど格上じゃない限りは対処ができる。
仮に格上でも、騎士は騎士特権を持っているので、爵位が上だからとあまり傍若無人を働くと、切られても文句が言えない法律があるのだ。
そういう意味では、戦争でもない限り、知りもしない市民を守ろうと思ってくれない騎士が多いので、こういうのがまかり通っているというところがある。
さて、見たところ彼は、剣を握っているので、まだ騎士団の影の部分には触れていないようだ。
いっそこの場で、社会の厳しさを体に叩き込んでやって、いい年こいて清濁併せ呑めない馬鹿になる前に、更生したほうがいいかもしれない。
「しかし、最強の戦士と手合わせできるといわれたから来てみたが、女に手を挙げるのは…」
「ルードヴィヒ様が、カナン様より強いなら、そのお言葉も理解できます」
くだらないことを言い始めそうなので、私からジャブを撃つ。
彼は、間違いなくカナン様より弱い。
不意打ちでの戦いではないから秒殺とまではいかないだろうが、そこらのオークをミンチにする私を前に、そんな心配無用である。
「な、男爵令嬢の分際で」
「カナン様、無礼な言葉遣いをお許しください。公爵令息すら勝てない貴方が、私に勝てるとでも?御覚悟はよろしくて?」
すっと私は構えを取る。
身体強化や障壁は展開済み、一歩踏み込めば、その手に持っている剣を地面にたたき落とし、こいつを壁にめり込ませる自信がある。
「エリカ、まちなさい。せめてちゃんと試合形式にしてあげなさいよ」
ノエルが声をかけてきた。
それもそうか。
正々堂々が、彼の本位だからちょっとは譲歩してやろう。
まぁその考えすら甘いのだが。
「わかりました。ルードヴィヒ様、どちらへ行けば?」
「ふん、こっちへ来い。その自信が本物か見てやる」
お前のその強気も何処からくるんだか。
カナン様が私とルードヴィヒ様の間に立ち、試合開始の合図をしてくれるようだ。
「では!はじめ!!」
言われた瞬間、私はルードヴィヒに駆け寄り、左蹴りで剣を吹き飛ばし、その勢いのまま右足で踵落としを食らわせる。
目の前には、倒れた状態で、地面に半分めり込んだルードヴィヒだけが残される。
蹴り飛ばした剣は、場外の壁に刺さっている。半分ほど
「し、試合終了」
カナン様の声が震えているが、知ったこっちゃない。
あんた、この前見たでしょうが。
「ルードヴィヒ様~生きてますか~」
一応彼に回復魔法をかけながら、腕を引っ張って起こしてみる。
ヒッと男の子が出しちゃいけない、小さな悲鳴が聞こえた。
「お、おまえ…戦う前から魔法準備してやがったな?」
「あたりまえでしょう、戦うのが分かっているんですから、準備できるときに最大限バフかけましたよ」
「バフ?と、ともかく試合前に卑怯じゃないか!」
「戦争や魔物との戦いに、卑怯もくそもないですよ?いつの時代ですか、互いに名乗りをあげてから戦うとか」
「なっ」
「本来、いつ不意打ちにあっても対処するのが騎士でしょう?私はお父様にそう教わりました」
やっと足元がしっかりしたようなので、ルードヴィヒ様から手を離してあげる。
「不意打ちが卑怯なら、戦争に出る騎士はみんな卑怯者です。女の子が夢見るような、清廉潔白な騎士なんて、まがい物ですよ」
「…」
ルードヴィヒ様さまが黙ってしまった。
うーん、まぁ憧れている存在を否定しているからなぁ。
「ところで、カナン様。ついでに私と手合わせします?」
「いや、やめておくよ。今日の目的は、君にルードヴィヒ様の甘さを叩き直してもらおうと思ってたからなんだ」
「そうですか」
「どちらかと言えば、ノエールの実力を見たいかな」
「あら、お兄様と手合わせですか?いいですよ」
「やっちまいなノエル!」
「エリカ、それでは悪役みたいですよ」
私が仕切りをした、カナン様とノエール様の戦いは、結局秒で終わった。
パンチで模擬刀を叩き折り、顔面にパンチを寸止めして試合終了。
私との戦い方の違いを見せつけながらも、身体強化と速度増加魔法の強さを明確に示せた。
おかげで、魔物討伐に行くという件について、ブロッサム公爵家内では誰も心配しなくなった。
ルードヴィヒ様はしばらくお部屋にこもった後、突然剣の素振りを始めたらしい。
ちょっとは、目が覚めてくれたかな?




