14.魔物討伐にかこつけ、フラグをへし折る
公爵家にお邪魔して3日目、私とノエール様で昨年スタンピードが起こった森へ来ています。
スタンピード自体は終息したとのことですが、いまだに森の魔物の数が多いそうで、今まではゴブリンぐらいまでしかいなかった森の中は、ゴブリンキングどころか、オークキングまで湧くようになったとの事。
実は、ゲーム知識によって、私は原因を知っている。
森の奥のほうに未発見のダンジョンができたことが原因。
まぁその原因を作ったのが、現宰相のブラッドレイ侯爵家当主なのだ。
ラスボスである宰相は、王国転覆を目論んでおり、魔王の力を得るために、ブロッサム公爵領で封印されている魔王のダンジョンをまず再生したというわけ。
このダンジョン自体に魔王はいないが、魔王の力を封印している指輪が最下層にある。
その力を使って、ブラッドレイ宰相はラスボスとして君臨するわけだ。
なお、宰相の使いの冒険者がダンジョンを探索して、その指輪を見つけ出すのは3年後。
私が10歳になるころのはずなので、まだダンジョン内に指輪はあるはず。
今回、わざわざブロッサム領にノエール様のお手伝いとはいえ、わざわざ出向いた本当の目的は、この指輪を物理的に破壊してしまうためだ。
ちなみに、このフラグを叩き折っても、ラスボスがチェンジするだけの可能性があるので、安心はできないが。
「というわけで、ノエル。きっと森のどこかに魔物が増えた原因があると思うのです」
「それについては同意見だけど、今までもうちの騎士たちが、必死に捜索したけれど何も出てこなかったのよ?」
森の中に入る道の前で私たちは、光の戦士の衣装で話し合っている。
戦いに行くことがわかっているので、わざわざドレスなど着てこない。
「どのあたりまで捜索したかわかりますか?」
「ちょっと地図を開くから待ちなさい」
ノエール様が持ってきた地図を開く。
現在位置から扇形に探索を行ったようで、結構しらみつぶしに探索している。
が、どうも森が終わるところで捜索を打ち切っているようだ。
「これを見る限り、ここが盲点ですね」
公爵領の森の中には1個だけ山がある。
それほど高い山ではないが、上のほうは草木が生えない岩山になっており、かなりの急登だ。
騎士が探索とはいえ、ある程度の装備を身に着けた状態で、この山の登山はできまい。
「なるほど、確かにこの山は登れないし、岩山だから周囲から確認することで、ある程度様子がわかるからと、詳しく調査はしていないわね」
「私たちは軽装です。身体強化の魔法もありますから、登って調査もできるでしょう」
「エリカは、ここに何かあると踏んでいるのね?」
「はい、過去の調査結果から、魔物の量が、この山へ向けて増えているようですから、原因はここと考えるのが普通かと」
「うーん…そう言われれば。なんで本格的に調査しなかったのかしら」
「さっきノエルが言った通り、岩山には影になるところがなかったから、下からの確認だけで済ませていたのでしょう?」
「まぁそうね」
「ということは、この山に下から見えない影があり、何かができている可能性が0じゃないと思うのです」
「山頂に何かがあると?」
「そういうことです」
というわけで、私たちは山へ向けて移動する。
身体強化をかけて、駆け足で移動すれば、5分とかからずに山のふもとまでつく。
「確かにふもとから見ても何もわかりませんね」
まぁ私は山頂にダンジョンの入口ができていることを知っているが。
「岩山といえども、標高はそれほど高くない山だから、下からでも十分見渡せるでしょ?」
「いえ、山頂のてっぺんが平らになっていると、ここからこの角度では見渡せたとは言えませんよ?行きましょう」
二人で、山を登り始める。
もはや上るというよりは、ジャンプして取りつくという感じである。
標高は600mもない岩山。
ふもとだけはなだらかだが、途中から岩が飛び出ているような形をしており、一部には垂直なところもある。
また、少し山頂がとんがっているので、下からでも山頂が見えることが、盲点になっている。
この山、山頂の少し下に、登らないとわからないへこみがあるのだ。
物の10分で登り切った私たちの前に、くぼみから下へ続く階段が現れる。
「本当に、何かあったわ。ダンジョンよね?コレ」
「ですね。入りましょう!」
「待ちなさい、エリカ。私たちはダンジョン探索の準備なんてしてないわよ」
「ロープなら持ってきました。ほかは私たちの聖属性魔法があれば何とかなりますよ」
「え、なんでそんなことが」
「松明の代わりならライトの魔法が、トラップ解除は防御障壁のゴリ押しで何とかなります。垂直の高低差だけ何とかすれば、対応可能ですよ」
「な、なるほど」
「さぁ行きましょう」
最初からダンジョンへ入る気なのだからそれぐらい準備している。
途中モンスターの強さがどうにもならなければ、引き返せばいいが、オークキング程度ならノエール様でも張り倒せる。
最悪、二人なら何とかなるはずだ。
今ならドラゴンが出てきたって倒せる。
道中は、とても順調だった。
敵は多いが、思った通り罠はない。
出てくる敵もオークナイトぐらいなモノで、多少囲まれても肉弾戦で何とか出来きている。
まぁ奥の手であるエクスキューショナーも残っているし、ボスも何とかなるはず。
そもそも、エクスキューショナーはゲームで、レベルが50を超えないと使えない攻撃魔法。
レベル50と言えば魔王を数発で葬れるようになるレベルである。
この世界は、ちゃんと現実なので「レベル」という概念はないが、私が使えるんだから、すでに魔王なら数発で倒せるだろう。
というわけで順調に進んでいく。
「ここが、最下層ですかね。あそこにオークキングがいますね」
「私たちだけで、本当に何とかなるものなのね…」
「ノエル、私たちは光の戦士なんですから、これぐらいの試練なんてことありません」
「本当のところは?」
「今のノエール様なら、オークキングを素手で殴り殺せます」
「わたし、そんなに強くなってるの?」
「私との差なんて、エクスキューショナー使えるかどうかだけじゃないですか」
「そういえば、そうね…」
さて、部屋にいるオークキングを倒して、目的の指輪を叩き壊しましょうか
「ノエル、オークキングは任せてもいい?調べたいことがあるの」
「いいわよ、エリカが素手で殴り飛ばせるというんだから、やってみるわ」
そういうと、ノエール様が飛び出して、オークキングを殴りつけに行く。
私はサッと部屋の隅を駆け抜け、奥へ。
部屋の奥に祭壇のようなものがあり、そこに指輪があるはずなのだ。
後ろのほうでものすごい打撃音がする。
雰囲気的にノエール様が一方的に殴りつけていると思う。
「お、あった」
祭壇の一番上段に指輪がある。
黒光りした金属に、真っ赤な宝石。
間違いない、魔王の魔力を宿した指輪だ。
「プチエクスキューショナー」
プチと言いながらも、指輪のサイズに合わせて収束させただけのエクスキューショナーを叩き込む。
バキッといい音がして指輪が真っ二つになり、黒い靄があふれ出る。
私は浄化の魔法を唱えて、靄を消し飛ばす。
さて、これでこちらの仕事は終わった。
「ノエル、どうですか?」
「ちょうど終わったところよ。そっちは?」
「魔物の発生原因と思われる祭壇の指輪を浄化したので、このダンジョンは攻略できたかと」
「ということは、これで終りね」
「はい、みんなの元へ帰りましょう」
私たちは真っ二つにした指輪をもってダンジョンを出る。
朝から潜ったおかげか、日が傾く前に外に出られたようだ。
「ねぇエリカ、ダンジョンってこんな簡単に攻略できるものなのかしら?」
「光の戦士だからできる荒業ですね。ほかの人じゃできないと思いますよ」
「だよねぇ…」
本来であればもっと時間がかかることは間違いない。
なにせ、宰相が雇うであろう一流冒険者が、2年もかかって指輪をゲットしているのと、本来であればオーク1匹は騎士1人でやっと倒せるレベルの魔物なのに、私らはパンチ一発なのだから、比較してはいけない。
その日、魔物を倒すとゲットできる魔石と指輪を持ち帰ったことで、ダンジョン攻略と魔物討伐の実績を認められ、ブロッサム公爵様からかなりお褒め頂き、御夕飯が初日以上に豪華になったのは、ついでの話である。




