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DG6 100ex 誰もいない世界で
そこは夢よりも寂しい世界。
物は存在するが、生命は誰もが寝静まっているような静寂。
ひどく乾燥していて息苦しい。
その感覚が、自分が生きているんだと実感するのに十分なほど。
動いているものは機械か自分が動かした幻想。
人の姿を模した何か。話はするが突飛な行動は何もない。
想定内の活動、想定内の対応。自分が望んだ行動ということでもなく、求められることもない。
誰から愛されることもない。ありふれた会話と、生理的な欲望を満たす行為だけしか存在しない。
求めているような人、死にそうな人、死ぬ人はいるが、自分が直接関わることもない。
ただ動き続ける。
信号機が24時間動き続けるように。時計が1秒1秒を刻み続けるように。
いつから世界の色が変わったのだろう。明確な変化は実感するが、切り替わった日時はわからない。
いくらもがき続けても抜け出せない。変化を求めても変わらない。
あるのは永久の孤独。平和。時間の経過。老化。満ち足りない思い。
存在を失った神。翼をもがれた悪魔。力を失った死神。
剥奪された世界と記憶。
いいように操られた世界。それに合わせて付けた記憶。
記憶は作られた足かせ。
現実は意識の足止め。
偽物の世界。世界は自由の牢獄。
ふと気づいた。自分が死んだ世界がここなのだと。




