DG6 099 元ミツマタ国王モガミ
-元ノーブル連邦オルデン商国首都 前線都市 京都-
アリス「将軍、どうか私を生涯仕えさせてください」
モガミ「何を言ってるんだ。今はもう国王じゃない。北条の命令には従わなければなるまい」
アリス「そうではありません。お慕いしていますということです」
モガミ「そういうことか。もう一緒に戦い始めて10年にもなるが、いつから思っていたんだ」
アリス「将として拾って頂いた初期からです」
モガミ「そんなに長くか。なぜずっと言わなかった」
アリス「私は子供ができない体でした。それに歳もあります。とても気持ちを伝えることなどできませんでした。魔界魔法のおかげで治療も済み、若返ることもできました。戦争も一息つき、ようやく告白できると思ったのです」
モガミ「俺がそんなことを気にする男だと思っていたわけではあるまい?」
アリス「はい。将軍の考えはお察しします。しかし私自身が、自分に対して納得できなかったのです」
モガミ「よく伝えてくれたな。今まで戦いの連続と王の責務で、まったく女としてみてやれなかったのはすまないと思う。アリスならば安心して背中を任せられる。俺からもよろしく頼む」
アリス「ありがとうございます!ありがとうございますッ!(涙」
モガミ「不慣れで悪いな」
アリス「お任せください。必ず立派な子供を産んでみせます」
モガミ「俺は無骨な男だと自覚している。皇帝のように優しい言葉はかけてやれないのに、なぜ求婚を断った?」
アリス「わかりませんか?将軍だけを愛しているからです。これまでも、これからも」
モガミ「なぜそこまで一途になれる。今や相手は世界を統一する皇帝だぞ。多くの妻がいるとはいえ、その一人になれば生涯も約束されるはずだ」
アリス「私は、子供のころからずっと多くの男に慰み物にされてきました。そのせいもあるのでしょうか、一人しか愛さないと強く誓っているのです。生涯で好きになった相手は、子供の頃に賊から私を救ってくれた方と将軍のみです」
モガミ「ああ、そのことは前にも聞いたな。今となっては感じ方もずいぶん違うもんだ」
アリス「妬いてくれるのですか?」
モガミ「死人に妬くことはない。だがアリスの生い立ちの不遇を想うとな、悔しくもなる。俺はそもそも、そんな不条理を許せないから国を興したわけだしな」
アリス「はい。私も救って頂きました。お仕えできたことも光栄に思います」
モガミ「結局、一部は救えても財政に負けて理想は実現できずじまいだ。無力だと思ったよ」
アリス「私も力になれず申し訳なく思います」
モガミ「いや、いい。北条に夢は託した。俺はそれで満足だが、アリスの望みは叶ったか?」
アリス「ありがとうございます。今こうしているだけで十分に幸せです」
モガミ「ひとつ、聞いてもいいか」
アリス「はい」
モガミ「北条との戦いのとき、なぜ裏切った?俺だけを想っているなら一緒に死ぬ覚悟でいても不思議じゃないだろう」
アリス「私は裏切ったつもりなど最初からありません。北条という3人を前にして読心呪を使った時に確信しました。驚愕すべきほど高位な文明を持つ世界の存在と、この世界を簡単に変えるほどの力にです。将軍も必ず説得できると思いました。抵抗して殺されるよりは、ずっと可能性が高いと判断したゆえにとった行動です」
モガミ「だが俺は抵抗した。両腕を切り落とされて死も覚悟したんだがな」
アリス「はい。あの時は胸を裂く思いでした。しかし蘇生呪の存在は王都に行くまでに聞いていました。もし死んでしまっても、いつか必ず私が生き返らせると踏みとどまったんです」
モガミ「蘇生に若返りか。今なら信じられるが、あの時に聞いても信じられなかっただろうな」
アリス「死の呪縛からの解放。人間という存在を本質から変えてしまうほど大きい内容だと思います」
モガミ「そうだな。それに合わせて、食う遊ぶに困らない文明に異世界への渡航。戦う意味さえかすれてしまう」
アリス「サトシは言っていました。必要があるから戦う時代は終わっても、人間から戦いを奪えば滅びるだけだ、と。私や将軍は戦い続けて生きてきました。今後もその生活は変わらないと思います」
モガミ「そうだな。戦争と平和は繰り返し、滅びる理由は戦争とは限らない。学んだ通りだ。世界統一するのも平和だけが目的じゃないんだったな」
アリス「将軍は戦うことが嫌いですか?」
モガミ「そんなわけがないだろ。俺の得意分野だからな。政治はお世辞にも有能といえなかったし、役に立つのは平和より戦いの中だ」
アリス「それでも、夢は平和なのですよね」
モガミ「そうだ。俺自身は戦いの中でしか生きられないが、誰もが不条理がなく平和に生きれればいいと思っている」
アリス「異世界の文明をもってすれば、いえ、北条ならば必ず両方同時に叶えてくれるはずです」
モガミ「アリスがそこまで買っているんだ。俺も素直に従うさ。安心してな」
アリス「ありがとうございます」




