4 エルフ
「ふ……服は着替えられますか? その、一応勇者らしいのを用意したんですけど……」
額に大きくバッテンの絆創膏をしたアリストーマが、引きつった愛想笑いを浮かべながら3人に聞いてきた。
「いや、こんなひらひらのは動きにくそうだ」
面田がやたら仰々しいその白い服を見てそう言った。
「このひらひらが魔力を増幅……」
そう言いかかってアリストーマは、ガックリと首をうなだれた。
そうだった……。魔力なかったんだ、この人たち……。
「靴だけは借りたいな。スリッパで来ちゃってるから」
面田がそう言うと、事平も同じことを言った。
「私もスリッパのままなんで」
「俺ぁこのままの方が身動きはしやすい」
大工の大鋸はそうであろう。
「で? 戦闘魔法士さんとやらは?」
「す……すみません。人手が足りないそうで……」
まさか「討ち死にしてこい」とまで言われたとは、さすがに……。
「その代わり、千三百年ほど生きてるエルフを同行させてくれるそうで……」
千三百年?
面田はシワくちゃの魔女みたいな婆さんを思い浮かべた。頭に緑色のお団子を乗せた——。
「えるふって何だ? 千三百年も生きてるってなぁ、妖怪かなんかか?」
大鋸が怪訝な顔でそう言うと、孫のいる事平がニコニコ笑って知識を披露した。
「耳がこう尖った長命の種族ですよ。アニメやゲームに出てきます。たいていは見かけ若い女の子です。まあ、私らの世界では空想の産物ですが」
「俺ぁゲームもやったこたねぇし、アニメも見ねぇ」
「エ……エルフは年を経ているほど魔力が強いんです」
アリストーマがなんだか言い訳するみたいに説明する。大きな戦力なんだと言いたいのかもしれない。
「ジジイ3人の中に婆さん1人か。まあ、でも紅一点ってことでいいかもしれないな」
面田が肩をすくめて見せたところで、入口の方から子供のような声が聞こえた。
「誰が婆さんだって?」
3人が振り向くとすこぶるかわいい少女が腕組みして面田を睨んでいた。
緑色の髪の毛だが、お団子ではなく頭の後ろで一つに括っている。ほつれた鬢の後ろに露わになった耳は事平が言ったように尖っていた。
ぷっとむくれたような表情は、睨んでいてもかわいい。
「え……?」
面食らった顔の面田を無視するようにツカツカと近寄ってきて、小学生くらいの背丈のそのエルフは3人の老人の顔を見上げた。
「ふうん。こいつらが勇者か」
「いや……勇者というか……」
「そういうことにしてるんだろ? わたしが手助けしてやるから、大人しく勇者のフリしてろ」
な……生意気なガキだな。と面田が思った直後——。
「よろしくお願いします」
と、大工の大鋸が腰を屈めて頭を下げた。
「ふん。おまえは年長者を敬うことをちゃんと知ってるようだな」
エルフが腰に手を当てて大鋸を斜めに見下ろした。
そうか! そうだった!
こんな少女に見えてもこの人、千三百歳。僕らよりはるかに年上なんだ——!
そのことに気がついて、面田も事平も慌てて大鋸に習って腰を屈めて頭を下げた。
千三百年も生きてるエルフの魔力はとんでもないんだよな? そんなの怒らせたらどんな目にあわされるか……。
「あ……その……こちらは、王国最年長エルフのコロンさんです。齢千三百になられる最強のエルフです」
「1297歳だ!」
(あ……そこ、こだわるんだ)
と面田は思った。
それが表情に出たのだろうか、またエルフのコロンさんに睨まれてしまった。
「大台に乗ったかどうかは、大事な違いなんだ。乙女にとっては——」
乙女?
いやまあ、そりゃ見た目はそうですが……。ほぼほぼ千三百歳なんでしょ?
それでもやっぱ、そこ、こだわるんですね?
1290代と1300代の違いって……?
面田たち3人はまだ70代でしかない。
「わたしはまだ千二百代なんだから!」
またまたかわいい顔で、ぷっとむくれてみせる。こんな表情はまるで子供だ。
あ、十年単位じゃなくて百年単位なのね……。(^^;)
コロン様の快諾を受けて、重要な登場人物としてそのままの名前で出演していただけることになりました。
エルフのコロン。応援よろしくお願いいたします。(^^)v




