03-06.交渉
「話を戻そうか」
今更だけど、なんでアヤメお姉様が仕切ってるんだろう。これはこれで面白いから構わないけどさ。
それになんだか楽しそうだもんね♪ アヤメお姉様はずっと前世の話をしたかったのね♪
「陛下はどうすればノーラ姉の嫁入りを取り消してくれるのかな。案外とクーちゃんが話せば一発なのかもね」
「無茶言わないで。第三王女の代わりがそう簡単に見つかる筈がないでしょ。だからって空白にも出来ないのよ。誰かが隣国へ嫁がなければならないの。わかるでしょ?」
「うん。理屈はね。けどさ。そこを悩むのはクーちゃんの役目じゃないと思うんだ。クーちゃんはただ陛下に奏上すればいいんだよ。確かに代案を持って臨むのは大切だね。けれど代案を出せないからって見えている問題を放置するのは違うよね。それはそれだよ。問題があるから伝えるんだよ。クーちゃんが考えるべきはこの部分だけなんだよ」
……なるほど。それはその通りだ。
「ただそもそも、本当に問題なのかはわからないけどね。皆黙っているだけで、転生者は意外と多いのかもしれないね」
「そんな筈ないわ。城の書庫では一度も記述を見かけなかったもの」
「なら心配は要らないよ。後はノーラ姉の有用性と危険性を証明するだけだ。何かないかな。前世の知識を活かして、パッと証明出来るやつ。他所の国に渡したら、そっちの方が問題になるって誰もが一目で理解出来るやつ」
そこを考えるのが私たちのなすべきことなのね。その後は陛下次第ってことなのね。
「ノーラ姉はどう? いっそ転生時に神様から何か聞いてたりしない?」
「いいえ。なにも。会ってすらいないわ。二人は?」
「「会ってない」」
一国に三人も転生させたなら、何かしらの因果関係があるとは思うのだけど。
「神様が転生させたのか、或いは召喚の儀式的な何かが行われていたのか。その辺もハッキリさせないとだよね」
やるべきことがどんどん増えていくわね。
「けれど一旦この件は脇に置こう」
そうね。話がとっ散らかるものね。活用出来ないとわかったなら次に移りましょう。
「三人で何か作ってみる? ノーラ姉の発案ってことにしてさ。この世界にまだ無いものを生み出して、わかりやすく価値を示してみようよ」
マヨネーズとか?
「わかっているでしょうけど、残りの一月全部使えるわけじゃないのよ」
「そうだね。だから先ずはクーちゃんが一人で説得してみるのはどうかなって」
そこに話が戻るわけね。
「どこまで話すかはクーちゃんに任せるよ。ノーラ姉もそれで良いでしょ? 何度かトライしてみるくらいのつもりで先ずは当たってみたらどうかな」
「そうね。今から行ってみるわ。ユキノと行ってくるから、アヤメとノーラ姉様はそのまま会議を続けてて。何か思いついたら先に始めててもらって構わないから」
「了解。そっちはよろしくね」
「ありがとう。クーフェリア」
「それでは行って参りますわ♪ どうぞ吉報にご期待くださいませ♪」
優雅に一礼して部屋を退室する。
ふふふ♪ 今のは華麗に決まったぜ♪ クーちゃんのお姫様スタイルも中々様になってるよね(自画自賛)♪
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「ね~ぇ~♪ ぱぁーぱぁ~♪」
「い、いかんぞ。クーフェリア。お前も幼子ではないのだ」
「ごほん」
あかん。側近さんの目が怖い。あとユキノも。ガクブル。
幼少期のように膝に乗るのは諦めて少し離れた。
「ノーラ姉様頂戴♪」
「無茶を言うな」
「姉様ったらすっごく優秀なの♪ 国外に出すなんて勿体ないわ♪」
「お前がそこまで言うならば一考の価値はある」
やったぜ♪
「だが弱い。結論は変わらぬだろう」
やっぱり言ってくるよね。相応の根拠を示せって。
「先ずは魔術の才能ね♪ 特定の分野においては間違いなくこの国一番よ♪」
これは別に盛っているわけじゃない。ノーラ姉様に言われて気付いたことでもあるけど、ノーラ姉様の魔術障壁が異様に固いのは明らかだ。あのアヤメが手も足も出ずに負けてしまっただけのことはある。
「パパは知ってる? 姉様ったら、常時魔力障壁を纏っているのよ♪ 他の誰にもあんなことは出来ないわ♪」
魔獣は出来るけどね。人間は基本的に意識しないと発動出来ないのだ。
「なに? それは本当か?」
よしよし♪ 食いついた♪
「ええ。誓って本当よ。私も驚いたわ」
「ふむ……」
「姉様は魔術を想像通りに扱えるの。細かな理屈を脇に置いてしまえるの。この技術が隣国で広まってしまえば、戦力差は圧倒的なものとなるでしょうね。いずれそう遠くない未来に滅ぼされてしまうかも」
「口には気を付けよ。クーフェリア」
「はい。申し訳ございません。陛下」
今のは流石に軽口が過ぎたわね。
けれど十分不安は煽れたことだろう。
「……よかろう。エレオノーラはクーフェリアに委ねよう。お前が責任を持つというなら信じて任せようではないか」
およ。意外とあっさり。
嫁入りキャンセルどころか、私にくれるんだ。
けど責任を持つってどういうことだろう。まさか代わりに結婚しろって話でもないだろうし。
「お前たちの働きに期待する」
……えっと。もしかして魔術開発を任された? 国家事業として? 責任ってそういうこと?
「わたくしで良いのですか? 姉様が責任者ではなく?」
「気を付けよ。エレオノーラは長らく病に臥せっていた。しかし我らの力及ばず天に召されたのだ。お前が抱えているのはノーラという名の平民だ。決して忘れるな」
あ~……そうなっちゃうのかぁ~……。
「隣国への補填についても心配は要らん。エレオノーラの代わりは第四王女が務めよう。母は公爵家の出であり、我が一人目の妻だ。格としては申し分なかろう。持参金に色を付ければ先ず以って問題視されることもない」
……まさか最初からこれが狙いだったとか言わないよね?
そう疑いたくなる程の余裕っぷりだ。
「……ちなみに護衛隊長の件は?」
「撤回はせんぞ。準備は済ませておけ」
……これは別件なのね。やっぱり私を取り立てるのが目的っぽい。とするなら、最初からエレオノーラ姉様は餌に使われたと見るべきかしら。
陛下がこんな回りくどいことをした理由は、ママとの約束を未だに覚えていてくれているが故なのだろう。




