03-05.進まない会議
「いや~。本当に驚いたよ。まさか三人とも転生者なんて」
転生者のバーゲンセールかな?
私たちも転生者ツーとか、転生者ブルーとかなっちゃう?
「三人もいるということは、未曾有の危機が訪れる可能性を真剣に協議すべきだよね」
そりゃそうだけど……。
アヤメお姉様は最初に気になるのがそこなの?
「四人目、五人目もいるかもしれないね。探してみるべきなのかな」
うんうん。脅威に立ち向かう為の仲間集めは基本だよね。
「あなたたち仲良いのね」
「あ、ごめん。エレオノーラさんも王族だもんね。こんな話し方失礼だったよね」
「いいえ。どうかそのままで」
「そっか♪ ありがとう♪」
アヤメお姉様ったら。私以外の人にデレデレしちゃって。いくらエレオノーラ姉様が美人だからって。ぷんすか。
「クーちゃん? どうかした?」
「べっつに~」
「なんなのさ」
「なんでもありませんわ」
「ならどうして距離を取るのさ」
「気の所為ですわ~」
「む~……」
ちょっと虐めすぎたかしら?
「それよりもですわ。エレオノーラ姉様。もしや嫁ぎたくないとお考えだったのは前世の記憶とも関係が?」
「そりゃあね。前世の常識も捨てきれなくて、政略結婚そのものにだって抵抗はあったわよ」
いえ、そういうことではなくて。
もしかしてわざと惚けてる? この期に及んで?
「けれど王女として生まれたんだもの。務めは果たすわ」
「ダメでしょ。こうなった以上は」
だよね~。
「どういうこと?」
「姉様は大切な財産です。この国にとってなくてはならない存在です。陛下に直訴しましょう。今手放せばいずれ後悔することになると」
「前世の知識は劇薬だ。いくら友好国だからって、隣国に渡して良いものじゃないでしょ」
「……それもそうね。盲点だったわ」
姉様、あんまり異世界転生ものとか馴染みがないのかな?
でも魔術の種類については詳しそうだったよね。この世界のものに限らずさ。てことは単純に、知識チートをする気が無かっただけなのかな。
「姉様はこの国での二十年間、前世の知識を使って何かを変えようとはしなかったの? そうしていれば、自然と回りの方から嫁入りを阻止していたんじゃない?」
「私ダメなのよ。口が軽いから。英雄王女の件も口にしてしまったでしょ。だから前世の件は頑張って意識しないようにしていたの」
「じゃあ尚更ダメじゃん。二十年我慢できたからって、隣国ではその倍以上生きていかなきゃならないんだから。しかも自分で居場所を作る必要まであるんだよ。前世の知識に頼ろうとする筈でしょ。そうなればきっと隣国は大きく発展することになるよ。増々向こうには送れないよ」
アヤメお姉様はハッキリ言うわね~。
ところで英雄王女の件って結局なんなのかしら? 今の口ぶり的に、私は知らない方が良いってことだよね?
「そうね……否定はできないかも」
「ならこの国に残る方向性で計画を練ってみよう。クーちゃんもそれで良いでしょ?」
「え、うん。けど具体的にどうやって? まさか『三人とも転生者です。だから価値がわかるんです』なんて言うつもりじゃないんでしょ?」
「そこはクーちゃんが考えてよ。出来るでしょ。クーちゃんならさ」
無茶を言う。それが出来ないから鍛えるって言ってお茶を濁したんじゃんか。
「ノーラ姉もここで囲っちゃえばいいじゃん」
どういう意味やねん。というか何よ、その呼び方。
「まさかアヤメ、私が前世の記憶を持っているからって、恋心が冷めてしまったなんて言わないでしょうね?」
「なんでそうなるのさ。変わらずクーちゃんのことは大好きだよ」
くっ……なんか腹立つ~。
……こういうのなんて言うんだっけ? 唐変木? なんかカタカナであったよね。ノンデリ?
好きだと言っておいて、他の人が近づいてもニコニコしてる感じ。けどいざとなったら本心や熱意をぶつけてくるの。あれ酷いよね。こっちをヤキモキさせておいて、本人も何も感じてないわけでもなくて。私そういうのあんまり好きじゃないんだけど。好きなら好きって毎日素直に言ってほしい。応えられない私が言えたことじゃないけどさ。
そりゃあね。これが全てアヤメお姉様の策略だって言うなら、素直に感心するけどさ。絶対そんなことないよね。天然だよね。だからノンデリだって言いたくなるんだよ。デリカシーは大切だよ。好きだって言った相手の前ではもっと言動に気を遣って欲しいよね。ぷんぷん!
「クーちゃんがなんで膨れてるのかはよくわからないけど、とにかく作戦を考えよう」
はいはい。頑張りますよ~だ。
「ノーラ姉様は何か得意としていることはありますの?」
「得意……魔術は多少……けどクーフェリアには負けちゃったのよね……」
地味にショックを受けていらっしゃる。
「仕方ないよ。クーちゃんはチート使いだから」
失敬な。
「それ以上に努力もいっぱいしてるしね」
くっ……! 揺さぶりおって!!
「そういえばなんでクーちゃんには婚約者がいないの?」
急に話が飛んだわね。
「それが何かヒントになるんじゃない? 普通お姫様って子供の頃に婚約するんでしょ?」
……そうね。言われてみれば。確かに私の年齢で婚約者がいないのは不自然だよね。
英雄と称えられたママの唯一の娘だから色々難しいのかしら? もしかして国外に存在を悟られないようにしてる? バレたら取り合いになっちゃう? 以前にも学園長偽装事件なんかもあったわけだし。
けどそれなら、なんで護衛隊長として隣国に送り込むことにしたのかしら? 偉い人の考えることはようわからん。
「これ言って良いのかしら」
たぶん、いや絶対ダメだと思う。
「話しちゃってよ。この際だからさ」
「そうね。クーフェリアの婚約者はレオンよ」
「……うん? 今なんて?」
「レオン第四王子がクーフェリアの婚約者よ」
「なんでお兄ちゃん? 兄妹だよ?」
「クーちゃん。口調が戻ってる」
そりゃ戻りもするわな。
「腹違いの兄だもの。この国では認められているのよ」
え~……。
「どうしよう、アヤメ。お兄ちゃんなら別に悪くないかも」
「わたしだって怒るんだよ。そういう冗談はやめてよね」
どの口で! ……と言いたいところだけど、狙い通りムッとしてくれたから良しとしよう♪
「あなたたち、さっきから気になっていたのだけど」
「付き合ってないよ。クーちゃんにキープされてるの」
「ちゃんと断ったじゃん! 失礼なこと言わないでよ!」
「好きでいろとも言ったじゃん! だから事実でしょ!」
「言われないと好きでいてくれないの!?」
「そんなわけないじゃん! 嫌われたって好きに決まってるよ!」
「……えっと。まあ。うん。仲良くね」
こんな話してる場合だったっけ?




