07-20.全力の決着
「それで逃がしてあげたの?」
「何よその言い草。どうせ全部見てたんでしょ」
屋敷に帰るとお姉ちゃんに質問攻めにされた。
白々しい。どうせいつも私の周囲を探っているくせに。ティグリスを介せば私の心の中だって覗けちゃうのに。
「どうするの? やるの? 殿下抜きで王様」
「……やっぱ辞めようかしら」
「いいの? 旅から帰ってきた殿下の居場所を用意しておいてあげるべきじゃない?」
「どのみち無いわよ。こんなタイミングで逃げたら」
どの面下げて戻ってくるつもりなんだか。
「だからこそクーちゃんが王様にならないと」
無茶を通すならって? 勘弁してよ。
「お姉ちゃん不貞腐れてる場合じゃないと思うなぁ~」
「うっさい」
もう! 少しくらい落ち込ませてよ!
「やることいっぱいだよ。レオン殿下無しで第四王子の派閥がそのまま従ってくれるとは限らないよ」
むしろその可能性は低いでしょうね。
「第一王子は既に動いてるよ。ガタ付いた第四王子の派閥を切り取ってるよ」
アルベール兄様もよくやるわね。任せておいて良いんじゃないかしら。そんなに王様やりたいなら。
「クーちゃん。一度はやるって決めたんでしょ。クーちゃんの人生はレオン殿下がいないとままならないものなの? これからもずっと頼り続けるの? そうじゃないんでしょ?」
も~~~~~~~!!!
「わかってるわよ~~~~~~!!!」
「なら動かないと。ほら。立って。陛下のとこ行こ。それから第四王子派閥の皆に頭を下げて回ろうよ。土壇場で兄が逃げましたって。バカ兄の代わりに頑張るので支えてくださいって。ここで派閥の皆にまで逃げられたら王様になんてなれないよ。そんなのやるやらない以前の話でしょ」
「もう!! もうもうもうもうもう!! お姉ちゃんの意地悪!! わかってるって言ってるでしょ!! 行くわよ!」
「うん♪ わたしも手伝うよ♪ クーちゃん♪」
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卒業から二年。
あの日からは本当に大変な毎日だった。
ううん。大変なんてもんじゃない。
レオンは本当に旅立ってしまったのだ。
まるでこうなるとわかっていたかのように、最低限の引き継ぎだけは済ませていたのが不幸中の幸いだった。
離反した者たちは決して少なくない。アルベール兄様ったら散々邪魔してくれた。一度は王太女の任命に口出しはしないと言っていたのにだ。
私は頑張った。私たちは頑張った。それはもう頑張った。
だから……。
「ああああああああああ!!!!!!」
「どうどう。クーちゃん。お疲れ様。クーちゃんは本当によく頑張ったよ。最後は負けちゃったけど。それでもさ」
「なんなのよなんなのよなんなのよなんなのよ!? なんで兄様が選ばれるのよ!? 陛下が王になれって言ったんじゃない! なんで私じゃなくてアルベール兄様選ぶのよ!? まったく!!! 意味がわからないわ!!!!」
「クーちゃんだってわかってるでしょ。本当はさ」
「もうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもうもう!!」
「そうだね~。悔しいね~」
「うわぁ~~~~~~~~~んん!!!!」
「あらま。よしよし。ナデナデ」
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政争に負けた私は、大人しく王都を去ることにした。
とはいえそう遠くにまで行けるわけでもない。なので住み慣れたお屋敷を丸ごと空間魔術で引っこ抜き、以前ティグリスが済んでいた森の奥へと移し替えた。
「ダイナミックな引っ越しだったね」
「いいわよ。もう自重も何もないでしょ」
「まだ不貞腐れてるの?」
「うるさい」
「これからどうするの?」
「どうもしないわ。自堕落に暮らすわよ」
なにせ今の私は地脈から直接魔力を得ているもの。結界の効果と合わせて飲まず食わずで生きていけるわ。
それにギルドの権利も手放してないし。不労所得も使い切れない程あるもの。
「たまに旅行に行って。普段はこの森で暮らすの。第二の人生。スローライフの始まりよ」
「第三の人生じゃないかな」
「お姉ちゃんうるさい」
もう。くだらないことばっかり。
「昼行灯の始まりだね」
「そうね~。決めていた通りよ~」
「これじゃあ影の英雄っていうより、呪いの森に住む魔女だけどね」
「いいわね。この森に結界を敷きましょう。誰も入ってこれない迷いの森に作り変えましょう」
ちちんぷいぷい~。
「うわすご。雑に張った割に力作じゃん」
お姉ちゃんたら早速結界の効力を調べてるわね。
「これで静かに暮らせるわ~」
「魔王城はいいの?」
「ノーラたちに任せるわ~」
「ヒマリはどうするの? 退屈しちゃうよ?」
「好きに旅でもさせてあげれば~」
「きっとクーちゃんと遊びたがると思うけど」
「もちろん来たら構うわよ。構い倒すわよ」
私だって暇だし。
「まいっか。少しくらいなら」
「なによ。嫌ならお姉ちゃんもどっか行けばいいじゃない」
「もう。思ってもないくせに」
ツーンだ。
「お疲れ様、クーちゃん。マッサージでもしてあげよっか」
「全身くまなくやって頂戴」
「がってん♪」
ありがとう。お姉ちゃん。




