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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
ティナ 過去編
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第3話 木漏れ日の下で

「ティナ!何をするか!!」


村長の枯れた声が、木漏れ日の下に響いた。


ティナはその声を聞いた瞬間、あからさまに不味そうな顔をした。



「げ、村長いるじゃん。」



一拍置いて。


「じゃあまたね〜。」


ニヤリと笑う。


「タイゾウおじさんw」


次の瞬間、ティナの身体が跳んだ。


地面を蹴り、木の枝へ。

そこからまた次の枝へ。


軽い。

速い。


少女とは思えない身体能力が、タイゾウの目に鮮明に映った。



「置いてかないで〜!!」



マルルが足をフラフラさせながら、ティナの後を必死に追いかけていく。


二人の姿は、あっという間に木々の奥へと消えた。




─────

タイゾウはゆっくりと立ち上がった。


ふくらはぎと胸がまだじんじんしている。


だが、そんなことより。


「村長。」


タイゾウは村長の目を見た。


「今の子は?」


村長は、少しだけ表情を曇らせた。


「タイゾウ様……申し訳ございません。」


深く頭を下げる。


「あの子は少々……問題がある子で……。」

「問題?」


タイゾウは首を傾げた。


村長はゆっくりと頷いた。


「ええ……。」


少し間を置いてから、続ける。


「あの子は赤子の頃から親がおらず……村の付近で捨てられておりました。」


「なっ……!」


タイゾウの目が、わずかに揺れた。


村長は俯いたまま話し続けた。


「私が見つけ、引き取っていますが……。」


「外部から拾ってきた子ということや、あの少し変わった見た目もあって……村の大人たちからは疎まれていました。」


タイゾウは目を細め、黙って聞いていた。


「それもあの子は分かっていたのでしょう。」


村長の声が、静かに落ちる。


「あえて大人達にいたずらをし、自分に興味を持ってもらうよう仕向けました。」


「ですがお察しの通り逆効果……。」


一拍。


「あの子はみんなから無視されるようになりました。」


タイゾウは何も言わなかった。


ただ、聞いていた。


「じゃあ……もう一人の、マルルって子は……。」


「あの子はティナに恩があるみたいです。」


村長はタイゾウの言葉を察して、静かに答えた。


「その恩というのは……私にも分かりません。」


少し間が空く。


「根はいい子なんです!!」


村長は顔を上げた。


涙が、その目に光っていた。


「どうか……どうかあの子の非礼をお許し下さい!!」


深く、頭を下げた。


「村長、頭を上げてください。」


タイゾウは慌てて両手を前に出した。


「俺は怒ってないですから!!」


村長はゆっくりと顔を上げ、涙を拭いながら頭を下げた。



「ありがとうございます……タイゾウ様。」



─────


タイゾウは少しの間、木々の奥を見つめていた。

ティナが消えていった方向。


あの身体能力。

あの踏み込みの速さ。

あの跳躍の高さ。


そして、あの目。



からかいながらも、確かにこちらを測っていた赤い瞳。


(この年齢で……あれか。)


じわりと、胸の奥が熱くなる感覚があった。


才能。


間違いなく、天性の才能だ。


(探してたのは……こいつじゃないか。)


「村長!」


タイゾウは村長に向き直った。


明るく、迷いなく。


「一つお願いがあります!」


「はい?」


「あの子……ティナを、俺の【弟子】にさせてください!!」



「で……し……?」

村長は首を傾げた。


言葉の意味は分かる。


だが、理解が追いつかない。


数秒の静寂。


そして。


「て、て、て、ティナを!?タイゾウ様の弟子!?ですとぉ!!?」


村長は腰を抜かして、その場に倒れ込んだ。


「村長!?大丈夫ですか!?」


タイゾウが慌てて駆け寄る。


村長は地面に手をつきながら、信じられないものを見る目でタイゾウを見上げていた。


─────


その頃。


遠くの木の上。


「はっくしょん!!」


枝の上でぼんやりと日向ぼっこをしていたティナが、大きなくしゃみをした。


「……んー。」


赤い瞳が、空を見上げる。


「誰か今ティナの噂した〜。」


木漏れ日が、白い髪をやわらかく照らしていた。

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