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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
ティナ 過去編
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第2話 村のメスガキ

タイゾウは途方に暮れていた。


シンに息巻いて宣言した手前、これほど情けない話はない。


数日間、ブレイビアの街を歩き回った。


声をかけた。

断られた。

また声をかけた。

また断られた。


「なんでだ……。」


タイゾウはとぼとぼと、王城へ向かう道を歩いていた。


頭を掻く。


ため息をつく。


見つからない理由は、タイゾウ以外には明白だった。



【伝説の戦士】タイゾウ。


数々の魔獣討伐。


国の防衛という偉業。


【竜剣のシン】と双璧をなすと称される存在。


わざわざその弟子になるなど、一般市民だけでなく、

どんな屈強な人間であっても「荷が重すぎる」話だった。


本人だけが、それに気づいていなかった。




─────

王城の訓練場が見えてきた頃。


剣を振る音が聞こえた。


「ユーリ、もっと腰を入れろ。」


「はい!!」


汗だくの青年が、必死に剣を振り続けている。


その隣でシンが腕を組み、鋭い目で指導していた。


「……!」


「タイゾウさん、おはようございます!!」


いち早く気づいたのは青年の方だった。


明るい声。

明るい笑顔。


「おう!……君は確か、王様のお孫さんだったか。」


タイゾウは顎をポリポリ掻きながら答えた。


「ユーリ君だっけな?」


「はい!あの、タイゾウさんに覚えてもらっていて嬉しいです!」


ユーリは汗を拭いながら、屈託なく笑った。


「……で。」


シンが目を細めながら割り込む。


「何の用だ?」


タイゾウは少し躊躇った。


「あー……実はよ……。」




「弟子が見つからない。」



シンが静かに遮った。


「……そんなとこだろ?」


「バレてたか。」


タイゾウは頭を掻きながら苦笑した。


「まあな。」


シンは呆れたように息を吐いた。


「そう言えば……。」


何かを思い出すように、視線を少し上げる。


「国からお前に依頼が来てたぞ。」


懐から一枚の紙を取り出し、タイゾウに渡した。


「【アラク村】の……護衛?」


タイゾウは首を傾げた。


「そうだ。王様の大事な領地に、魔獣が出没しまくってるから守ってくれだとよ。」


「むむむ……そうか。」


タイゾウは少し思考を巡らせた。


「アラク村か……名前だけは知っているが……。」


「王都からだいぶ距離がある、森林の中にある集落だ。」


シンは目を細めた。


「昔にも行ったはずだが?」


「あはは……そ、そうだったな……。」


タイゾウは焦った様子で返事をした。


その時だった。


「それならちょっと待ってください!!」


ユーリが急に声を上げた。


次の瞬間、駆け出していた。


二人が顔を見合わせる間もなく、数分後にはもう戻ってきた。


息を切らしながら、大きな紙をタイゾウに差し出す。


「これって……地図!?」


タイゾウの目が丸くなった。


「いいのか、青年!」


「はい!いつも先生が【タイゾウにはいつも世話になってる】と言ってるので……。」


「……っ!」


「おい、余計なことを……!!」


シンが慌ててユーリの口を塞いだ。


タイゾウは思わず吹き出した。


「ははっ……。」


二人の様子を見ながら、くつくつと笑いつつその場を後にする。


だが、数歩でふと振り返った。


「せっかくシンに教えてもらってるんだ。」


明るく、まっすぐに。


「強くなれよ!青年!!」


「はい!!」


清々しい返事が背中に届いた。

タイゾウはそれを受け取って、また歩き出した。




─────

数日後。



「おらぁ!!!!」


斧が唸る。


「これで……いっちょ上がり!!!!」


魔獣が、また一体崩れ落ちた。


アラク村の周辺林道。


タイゾウは依頼を受け、ここ数日で何体もの魔獣を討伐していた。


最後の一体が地面に倒れた瞬間、周囲に静寂が戻る。


タイゾウは斧を肩に担ぎ直し、大きく息を吐いた。


「ふぅ……。」


足元が、わずかに重かった。


だが、顔には出さない。


草を踏む音。


ゆっくりとした足音が近づいてくる。


「ありがとうございます……タイゾウ様。」


杖をつき、修繕の跡が残る服を着た老人が、タイゾウに頭を下げた。


「これだけしていただいても、我々は何もタイゾウ様に大したお礼は……。」


声が小さくなっていく。


「いいんですよ、村長!!」


タイゾウはにっこりと笑った。


「俺の好きでやってる事ですし!!」


村長は顔を上げた。


涙が、その目に浮かんでいた。


「タイゾウ様……なんとお寛大なお方。」


震える声で続ける。


「ぜひこの村を、自分の家と思って過ごしてくだされ!!」


両手を広げて、村の方向を示した。



「はい!ありがと──」



その瞬間だった。


「がっ!!」


ふくらはぎに、衝撃。


「──ッ!?」


反応する間もなく、今度は胸にも衝撃が走った。


タイゾウの身体が、前のめりに崩れ落ちる。


地面に膝をつく。


顔を上げた。


目の前に、一人の少女が立っていた。


白髪。

ツインテール。

赤い瞳。



その口に手を当てて、ケラケラと笑っていた。



「おじさん、ざっこぉ〜!w」


「ティナの蹴り、見えてないじゃ〜んw」




「ティナちゃ〜ん待ってぇ!!」




後ろから、別の声が飛んできた。


顎まで伸びた茶色い髪を揺らしながら、もう一人の女の子が走ってくる。


白髪の少女は振り返ることなく言った。


「マルルちゃん、このおじさん……見た目に反してよわよわだよ〜w」


「ティナちゃん!だめだよ!!」


マルルと呼ばれた少女が、焦った様子で首を横に振る。


「タイゾウさんにそんなことしちゃ……!」


ティナはタイゾウを見下ろした。


風と共にティナの純白のパンツがチラッと見える。


赤い瞳が、あざとく細まる。


「このおじさんがタイゾウ?」


首を傾けて。




「……ふ〜ん。」


「ティナの蹴り喰らうくせに、魔獣と戦ってるんだあ〜。」




「……この……ガキ……。」




タイゾウはうずくまりながら、目だけを細めた。


確かに、ティナを睨んでいた。


だが同時に。


その目の奥がほんのわずかに、輝いた。

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