表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
45/55

第21話 継ぐ者達・決着

ガキィンッ!!



青白い剣が、黒い爪と激突する。


火花が散る。


ユウトは弾かれながらも踏みとどまり、すぐに踏み込み直す。


魔空の剣が走る。


イデアは身を捻って躱し、カウンターの衝撃波を放つ。


「——ッ!!」


ユウトは横に跳んで回避した。


着地と同時に、また踏み込む。


斬る。


弾かれる。


また斬る。


終わりの見えない剣戟が、崩れた王城の廊下で続く。

その時だった。




ガキィンッ!!


背後から、金属音。


イデアの動きが、一瞬だけ止まる。


片腕が、横に伸びていた。


その先に、剣を押さえつけられながら。


ユーリが立っていた。


「——ユーリ!!」


ユウトが叫ぶ。


ユーリの全身は、もう原形を留めていない。


鎧は砕け、血が止まらない。


それでも。


剣を手放さなかった。


「……ユウト」


掠れた声。


ボロボロの顔で。


ユーリはユウトを見た。


「……僕は。」


一息。


「……【託された】んだ。」


そして。


口元だけ、わずかに緩んだ。


「君も……そうだろ?」


ユウトの目が、大きく見開かれる。


シンの声が蘇る。


ゼイトの笑顔が。


ライトの拳が。


全部が。


一瞬で。


胸の奥を貫いた。


「——ッ」


その瞬間だった。





ぐちゅ、と。

鈍い音。


イデアの腹部に。


短剣が、突き立てられていた。


「——ッ!?」


イデアが目を見開く。


振り返る。


そこに立っていたのは。


片腕が、あり得ない方向に曲がっていた。


全身が血まみれだった。


息が、今にも切れそうだった。


それでも。


短剣を握る手だけは。


離さなかった。


レッカだった。


「勝手に……カッコつけてんじゃ……ねぇぞ。」


肩を揺らしながら。


一言ずつ。


絞り出すように。


言葉を吐く。


「お前らだけで……終わらせてたまるか……。」


イデアの表情が固まる。


そこにあるのは、明確な驚愕。


「……貴様」


低く。


だが。


数秒後。


それは。


怒りに変わった。


「貴様らニンゲン風情がァ……!!」


魔力が爆ぜる。


「ワタクシの前でイキがるなよ!!!!」


衝撃波が周囲を吹き飛ばす。


全員が弾き飛ばされ、瓦礫の上を転がる。


イデアの身体が浮き上がる。


崩れた天井の向こう。


夜空へ。


上空へ。


「……終わりにしてやりますよ。」


両手に。


膨大な魔力が集まり始める。


黒い光が。


空を染める。


死の予感が。


全員の肌を刺した。




だが。


戦場において。


冷静さを失った者には。


必ず、隙が生まれる。



「……雷神斬。」



静かな声が。


上空から降りてきた。


「——ッ!!!!」


イデアの背中が。


深く。


断ち切られた。


「——なぜ。」


イデアが振り返る。


そこにいたのは。


白い髪。

赤い瞳。


「なぜアナタが……!!」


「……私は…まだ立てる。」


ティナはただ、斧を構え直す。


「ま……まさか……このワタクシが……。」


イデアの表情に。


初めて。


焦りが浮かんだ。


その顔が。


みるみる歪む。

生まれたのは明確な、


隙。






「——全員!!」


ユウトが叫ぶ。


瓦礫の上から立ち上がり、レッカとティナを見る。


「行くで!!」


レッカが立ち上がる。


折れた腕を庇いながら。


それでも。


剣を握る。


ティナが降りてくる。


着地。


二人の視線が交わった。


レッカが口を開く。


「ガキ。」


「……なに。」


「遅れんじゃねぇぞ。」


ティナは一拍置いた。


「……誰が?」


「お前だろうが。」


「……うるさい。」



「「行くぞ!!」」


二人の声が重なった。





地を蹴る。


同時に。


レッカは右から。


ティナは左から。


一直線に。


上空のイデアへ向かって。


跳ぶ。


高く。


さらに高く。


夜空へ。


月を背に。


二人の身体が交差する。


赤い長髪と白い髪が。


風を裂いて。


螺旋を描く。


レッカの剣に。


赤い魔力が絡みつく。


ティナの斧に。


白い雷光が纏う。




「「——雷神斬・双龍!!!!」」




赤と白の斬撃が。


同時に。


イデアを。


十字に。


切り裂いた。


轟音。


爆発。


衝撃波が夜空を割る。


ただ、静寂のみがその場を支配していた。





イデアは。


落ちていた。


十字の傷から。


黒い血が溢れる。


肉体が。


ゆっくりと。


朽ちていく。


「魔王……さ……ま……。」


掠れた声。


それだけを残して。





全員が。


肩を揺らした。


荒い呼吸が重なる。


「……終わった、か。」


レッカが呟く。


「……終わった。」


ティナが答える。


ユウトは膝をつきながら。


深く息を吐いた。


「……終わっ——」


その時だった。





どす黒い光が。


イデアの肉体から溢れ出した。


「——ッ!?」


全員が息を呑む。


光は膨れ上がる。


脈動する。


「ならば…」


「……ワタクシごと。」


朽ちていくはずの口が。


動いた。


「滅ぼす……までだァ!!!!」


自爆。


その一言が全員の頭を貫いた。


「逃げろ!!」


レッカが叫ぶ。


だが。


遅かった。


どす黒い光が。


全員を包み込む。


逃げ場はない。


回避できない。


「——くそっ!!」


「——ッ!!」


「——あか……ん……」


爆発する。


そう思った。


その時。





ぐちゅ、と。


鈍い音が鳴った。


どす黒い光の中心に。


一本の剣が。


突き立てられていた。


「——ッ!!」


イデアの動きが止まる。


その影を見た瞬間。


ユウトの時間が止まった。


「……ユウジ。」


声が出なかった。


「ユウジ!!!」


叫ぶ。


ユウジは振り返らなかった。


どす黒い光の中心で。


剣を両手で握りしめながら。


ただ立っていた。


「ユウジ!なんでや!!なんでお前が——!!」


「バカな兄貴のケツを拭くのは。」


ユウジが口を開く。


血が滲む唇で。


「弟の仕事だろ?」


笑みを浮かべていた。


「な……ぜ……ユウジさん……裏切るの……です

か……。」


どす黒い光の中。


掠れた声が響く。


イデアだった。


「ハッ。」

ユウジは鼻で笑った。


「なあイデアぁ。」

剣をさらに深く押し込む。


「俺は最初からお前のことが嫌いだったんだよ!!」


「さあイデア!!」


叫ぶ。


「俺と一緒に地獄行きだなァ!?」


「やめ……ろ……」


イデアの声が震える。


「やめなさい……!!」


どす黒い光が、ユウジの剣へと吸い込まれていく。


だが。


止まらない。


「ユウジ!!」


ユウトは踵を返した。


ふらつく足で。


走る。


「やめろ!!やめてくれ!!!」


叫びながら。


手を伸ばしながら。


距離が縮まる。


あと少し。


あと少しで。


届く。


「——ユウジ!!」


その時。


ユウジが振り返った。


血まみれの顔で。


笑っていた。


あの日の拳と同じ。


あの病室の笑顔と同じ。




「じゃあな、兄貴。」




爆発した。



激しい轟音。


光が全てを飲み込む。



ただ、白。


そして。


静寂。




どれくらい経ったか。


粉塵が晴れる。


更地になったブレイビア王城に。


夜風が吹いた。


イデアの残骸が。


黒い塵となって散っていく。


そして。


その中心に、一本の黒い剣が。

静かに突き立てられていた。


ユウトは。


その剣を見ていた。


立ち上がれなかった。


立ち上がりたくなかった。


ただ


「……ユウジ。」


呟く。


返事は…なかった。


夜風だけが。

静かに吹き抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ