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隻腕の斧少女と、転生者の旅  作者: Ao114535
第4章 ブレイピア決戦
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第20話 奥義

「行くで。」



ユウトの目が、レッカとティナを捉えた。


言葉はない。


視線だけで、全てを伝える。


レッカは小さく頷いた。


ティナも静かに頷いた。


作戦は、シンプルだった。


レッカとユウトが前に出て、イデアの懐に入り込む。


そして、一瞬の隙を作る。


その隙に、ティナが雷神斬を叩き込む。


それだけだった。




「——行くぞ!!」


レッカが消えた。


瞬歩。


加速神域が展開される。


青白い魔法陣が廊下を染める。


ユウトも踏み込む。


二人が同時にイデアの懐へ潜り込む。


「……ほう。」


イデアの目が細まる。


レッカの剣が左から走る。


ユウトの魔空の剣が右から走る。


「——ッ!!」


ガキィンッ!!

ガキィィンッ!!


イデアは両腕を交差させて受け止めた。


だが、二人は止まらない。


弾かれながら、また踏み込む。


斬る。


また弾かれる。


また斬る。


幾重にも渡る剣戟が、廊下に炸裂する。


火花が散り、石畳が砕け、壁が抉れる。


「速い……!!」


イデアの爪が応戦する。


だが追いつかない。


「……面白い。」


笑みを浮かべながらも、その体から血が止まらない。


「——ッ!!」


二人を同時に弾き返そうと、イデアが両腕に魔力を込めた。


その瞬間だった。


「——風刃!!」


廊下の奥から。


掠れた声。


青白い風の刃が、一直線にイデアへ向かった。


壁にもたれながら。


ボロボロの身体で。


ユーリが剣を構えていた。


「——ッ!!」


直撃。


イデアの動きが、一瞬だけ止まる。


たった一瞬。


だが。


ティナには十分だった。


「……雷神斬。」


静かに。


呟いた。


地を蹴る。


空へ。


高く。


斧が、雷光を纏う。


蒼白い光が廊下を照らす。


そして。


落ちた。




轟音。


激しい爆発音と共に、床が砕ける。


イデアの背中から、鮮血が溢れた。


「——ッ!!!!」

初めて。


イデアの口から、声にならない叫びが漏れた。


床に叩きつけられる。


粉塵が舞う。


静寂。


数秒後。


ゆっくりと。


よろめきながら。


イデアが立ち上がる。


衣服は裂け、肉が露出し、再生が追いつかない傷が全身を覆っている。


「……まさか。」


低く。


呟く。


「アナタ達がここまでだとは……。」


裂けた口が、震えるように歪む。


「どうやらワタクシも本気を出すしかないみたいですねぇ……。」


その言葉が落ちた瞬間。


イデアの両手に。


膨大な魔力が集まり始めた。


空気が変質する。


廊下全体が、禍々しい黒に染まっていく。


「——まずい。」


ユウトの肌が粟立つ。


レッカも、ティナも、同時に息を呑んだ。


「みなさん!!こっちに!!」


アスミの声が廊下に響いた。


両手を広げ、魔法陣を展開する。


結界を展開しようとしていた。


「早く!!」


全員が動く。


ユウトが走る。


ユーリがアスミの肩を借りて走る。


国王が走る。


アスミが抱えたアルナも結界の中へ。


だが。


「——間に合わない!!」


レッカが叫ぶ。


彼女とティナが結界に辿り着く直前、イデアの魔力が解き放たれた。


「——ッ!!!!」

爆発。


黒い爪撃が、王城全体を包み込んだ。


イデアの究極魔術【魔爪死円陣】。


壁が砕ける。


天井が落ちる。


床が抉れる。


結界の中でも、衝撃が全身を叩く。


「——くっ!!」


ユウトは結界の壁に手をついて、踏みとどまった。

その外では。


王城が、轟音と共に崩れていった。





粉塵が、ゆっくりと晴れる。


静寂が、場を支配した。


どこかで、石が転がる音がした。


「……父上!!」


ユーリの声が響いた。


瓦礫の中から這い出すように、ユーリが動く。


その視線の先に。


国王がいた。


瓦礫の下から結界の外へ出ていた国王は、頭から血を流しながら、ユーリを庇うように覆いかぶさっていた。



「父上!!父上!!」



ユーリが抱き起こす。


王の息が、乱れている。


それでも。


震える手が。


ユーリへと伸びた。


「父上……なんで……なんで俺を……。」


涙が、ユーリの頬を伝う。


嗚咽が混じる。


王は、血に濡れた顔のまま。


目の前で泣きじゃくる息子を見つめた。


「馬鹿者。」


掠れた声。


だが、確かに。


「息子も守れぬ父親が……どこにいる。」


ユーリの肩が震える。


「父上……っ。」


言葉が続かない。


王の手が、ユーリの頬に触れた。



その光景を。


遠目で見ながら。


イデアは、両腕を広げた。


ボロボロだった。


衣服は焼け、傷が塞がりきらず、再生が追いつかない箇所まである。


それでも。


「どうでしたか?」


高らかに、叫ぶ。

「ワタクシの【魔爪死円陣】は?」


一拍置いて。


周りを見下ろし。


「……と、効果バツグンみたいですねぇ……。」


苦笑するように、笑みを浮かべた。


その瞬間だった。


ガキィンッ!!


激しい金属音。


「——ッ!?」


イデアは弾いていた。


気づいた時には。


ユウトが目の前に立っていた。


魔空の剣を振り抜いた姿勢で。


「ユウトさん。」


イデアは距離を取りながら、首を傾けた。


「何故アナタが怒る?」

静かな声。


だが。


ユウトは答えなかった。


ただ、剣を構え直す。


その目に。


怒りと。


悲しみと。


覚悟が。


全て混ざり合っていた。


イデアは。


その目を見て。


何かを確信したように。


ゆっくりと両手を掲げた。


黒い魔力が、再び膨れ上がる。


「国王は瀕死……そして役者も揃いました……。」


廊下の崩れた天井から、夜空が見える。


月が、白く輝いていた。


イデアの裂けた口が。


大きく開く。


「さあ!!!」


声が、夜に響き渡る。


「最終局面と行きましょうか!!!」

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